第445話 武神と珍神

《?????》


 「あーおい、ここに来るのは何百年ぶりだ」


 オレンジ髪を頭の後ろでまとめ中華服を着た30代半ばの男性はとある山の頂上にある小さなボロボロの小屋に来ていた。


 「失礼するぞーっと」


 もはやその小屋は何十年も人が使っていないのかドアに鍵もかかっていなかった、それどころか。


 「おいおい、ボロっちぃな」


 ドアは開けた後ちょうつがいが壊れて閉まらなくなってしまった。

 

 そのままボロボロな小屋の中心に立ち。


 「あーおい、めんどくせぇな…………ひらけーごま」


 顔や歳に似合わないセリフを言うと魔法陣が光だし男を何処かへ転移させた。



 ………

 ……………

 …………………

 ………………………


 「さて、と」


 男が転移した先はどこかの洞窟の中だった。

 だが、ただの洞窟ではない。

 

 「相変わらずごちゃごちゃしてんなーおい」


 壁にはキラキラ光る剣や槍や弓様々な武器に足元には見たこともないような金や銀の小さな山に黄金や金塊。

 

 宝の洞窟……そう例えるのが1番適正だろう。


 「おい!居るんだろ!マーク!」


 しかし、誰も返事はない……自分の声が響くだけだ。


 「ちっ、だがよぉ、おい、テメーがこの宝を盗っていく奴を見逃すわけねぇよな」


 適当に地面に落ちていた金貨を一枚拾ったその時だった。


 「よく分かってらっしゃいますね、《六英雄》武神と恐れられたトミーさん」


 声は後ろから聞こえてきた、だが、トミーは振り向かない。


 「あーおい、居るんならさっさと出てこいや、それに俺相手にそんなおちょくってる行動してると」


 トミーの手にあった金貨が形を変え金の剣になり、後ろを振り向きながら斬りつける……が剣はそのまま空を斬った。


 「それは申し訳ない、なに分そう言う癖がついてるものでしてね、姿を見られると“怪盗”の名が廃るので」


 次はトミーの先程まで見ていた正面から声が聞こえてきて、そちらを見ると


 一際大きな金貨の山上に黄金で宝石が装飾されたイスに座る紳士的な白いスーツに白いシルクハットそして黄金のモノクルを付けた黒い髪の青年が居た。


 「あーおい、てめぇ俺の知ってるマークの子孫か」


 「えぇ、しかし、先祖代々六英雄の事は受け継がれてますよ」


 「そうか、まぁおい、俺は特にお前に興味はねぇがよ、ここに来たのは“ある事を聞きにきた”」


 「そうですね、俺も宝の話以外興味はありませんさっさと話を終わらせましょう」


 「だったら話は早ーなーおい……てめーだろ、サキュバスの封印を解いてドラゴンスレイヤーを預けたの」


 マークは少し考えた後、ニヤリと笑い答えた。


 「えぇ、そうですよ、私です、よく分かりましたね」


 「そうか、昔のよしみで今回は見逃してやる」

 

 そう言って持っていた剣を地面に刺すと剣はまた金貨に戻って転がっていった。


 「……」


 「だが、覚えとけ、また俺の……俺達の邪魔をする様なら殺す、例えそれがお前達でもだ」


 「覚えておきましょう」


 トミーはそれだけ言うと黙って洞窟から出ていった。


 「トミーさん、あなたの所にも来ているでしょう」


 誰もいない宝の山で呟くマークは一つの魔皮紙を取り出す。

 

 「このメッセージを読んでも敵になると言ったんだ、それ相応の覚悟でしょうね」










 マークは白い煙幕とともに消える。









 2人の居なくなった洞窟はただ虚しく静かに光り続けていた……。

 


 

 


 

         第6章  完

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