第443話 お疲れ様!乾杯!
《アバレー王国 アオイ家》
「お疲れ様のかんぱーい」
「カンパイなのじゃー」
「ですぞー」
「……」
よく分からないモノリスみたいな宝石の数々とアイさんを運んだ後、ムラサメさんに任せてアバレーの騎士達に渡した。
いやー、ほんとにすごいよね、時間が経てば騎士の姿に戻るって俺が言っても絶対信じないだろうけどムラサメさんが言うと1発で信じるんだもの、代表騎士の信頼ってやっぱりすげぇ。
「それにしても何だかんだ時間かかっちゃったね」
あれから帰るのに一ヶ月かかってしまった。
と言うのも、もともとここまでの距離がかなりある上に
「仕方ないですぞ、行きは私達だけですぞが帰りは荷物を乗せて、しかもルカ殿が手負いで休み休み帰る事になったですぞから」
「うぐ、油断したのじゃ」
「まさかアイさんが【ドラゴンスレイヤー】なんて伝説の武器を持ってたなんて」
「ルカ殿には効果は的面ですぞな、しかも回復の魔皮紙を無効にするなぞ、初めて見たですぞ」
「おかげで痛い思いしたのじゃ……」
「やっぱり歴戦のクリスタルドラゴンもあれは痛いの?」
「そりゃそうなのじゃ、じゃないと鱗を硬くする必要もないのじゃ」
今は服で隠れてるがルカのお腹と背中には生々しい縫い跡がある。
もちろん裁縫セットなんて持ってきて無いので俺の着ていたユニタードの素材の【糸』を操作して縫合してもらった。
もらったと言うのは俺に知識がないからでそう言うフワッとした所も汲み取ってくれる優秀な武器だ。
「外はともかく中はもう大丈夫なの?内臓とか」
「一応中もお主の糸に縫ってもらったのじゃ、時間が経てばひっつくじゃろう」
「ふーーーん……」
そんな話をしながら俺はジョッキに入ったお酒を飲む。
そう、今回俺の家で開催されているこの飲み会は会議だ。
前にも言ったが俺はその場で整理できないからこんな感じでセーブ地点が必要になる……まぁお酒もそこそこにしとかないと次の日に忘れちゃうのだが、そこそこに飲むだけなら逆に頭が回る……はず!
「ところでエスどうしたの?ずっと黙ってるけど」
「……いや、考え事だ」
「考え事?言ってみなよ、僕たちはパーティーなんだから、3本の矢だよ」
「3本の矢?」
「なんか3本の矢だと折れにくいみたいなニュアンスのことわざ」
「よく分からないが、この槍の事で気になってな」
エスはすぐそこの壁に立てかけてあるドラゴンスレイヤーを指を差す。
「これがどうかしたの?」
「いや、これは確かに伝説の武器だ……だがなぜアイツが持ってたんだ?少なくともアバレーでは手に入らないだろう」
「そりゃ、魔王が居る世界だから伝説の武器の1つや2つあるでしょ」
「そんなものか……?もしもだが、これを意図的にアイツに渡した奴がいるとしたら」
「まさか〜ハハ、ルカの正体が分かっててそれの対策として渡したとか?そんなの未来がわかってないと無理でしょ〜考えすぎだよ、たまたまあってタマタマそれを使ってたんだよ〜」
まぁ今の俺にタマタマないんだけどね!タマタマ!
「酔っているのか?」
「いや、ほろ酔いかな?リミットが外れてるだけ」
「それは酔ってるんじゃないか?」
「ノーノー!ほろ酔いはまだ記憶があるから大丈夫なの」
「……」
「我が君!そんな事より本題に入るのですぞー!」
「あ、うん!そだねー、じゃ、ちょーっと、長くなるから……うーん、気をつけて?」
「はいですぞ!」
「気をつけてってお主らしいのじゃ」
「フン……」
「うん、とりあえず魔王との事と今回僕の身体に起こった異常について話すね、そして……もう1人の『僕』が出た時の事もムラサメさん、教えてね」
こうして、俺は今回の事を話し、ムラサメさんからもう1人の『私』の事を聞いた。
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