第433話 今回の敵
《魔王城前》
『……』
「す、すいませんでしたですぞ、どうか……どうかご許しを我が君!」
神殿から出てきた『アオイ』の前で土下座をしながら謝るムラサメ、無くなった手の断面から緑の血が出て地面に色をつけている。
『顔をあげて』
声は優しい、そして可愛く美しい。
「は、はいですぞ」
『痛そうね、手を』
「え?」
『手を出しなさい?』
言われた通りムラサメは右腕を出す。
『そのままあっちを向いててね』
「はいですぞ」
ムラサメはアオイを見ないようにしていると無くなった手の断面に生暖かいトロッとした液体が少しかけられた感覚がした後、痛みが引いていき
『もういいよ』
「おおおおぉ、我が君」
ムラサメの手が復活していた。
『……』
そのまま黙って『アオイ』は神殿の方に歩いていき壁を確認する。
『魔法の弾丸の跡……忌まわしい【神の使徒】の仕業ね、私も気付かない程遠くだし明確に狙ったのなら撃つ前に私が助けれたけどこれは本人も解ってなくて指示通り撃ってるのね』
「っ……」
『アオイ』の言葉はムラサメの心に深く刺ささった。
つまりこう言ってるのだ“部下の技量で負けた”と、死んでも良いほど崇拝しているムラサメにはそれこそ死ぬまで一生その言葉が脳から再生されるだろう、『アオイ』からなら痛みでも喜ぶムラサメにとってはこれほどのお仕置きはない。
『キャハッ、悔やんでる時間はないよ、感じる……数多の負の感情、至急エスとルカを呼びなさい念のためトミーもよ、私は緊急で出てきて力を使いすぎたからこれから先ほとんど表に出れなくなる、だから』
「分かりましたですぞ!」
『頼んだよ♪キャハッ♪』
何事も無かったかのように明るく言った後、ゆっくりと神殿の階段に座り眠るように目を閉じた。
「やめろおおぉ!……はっ!?」
「我が君、おかえりなさいませですぞ」
「もしかしてもう1人の方が出てた?」
「はい、ですぞ」
「……ロビンは?」
「…………」
「そう……もしかしてもう1人の僕が」
「それは違うみたいですぞ、ボスが言っていたのは【神】の仕業だと」
「神が!?」
アオイは困惑する。
今まで味方をしていた神がここに来てアオイに干渉してきたのだ。
「どう言う事……どうして神が」
「!、危ないですぞ!」
「っ!」
考える間もなく突然“槍”がアオイに向かって飛んできたのをもう少しの所でムラサメが止めた。
アオイの目の1センチ前では槍の先が見えている。
「あ、ありがとう」
アオイがお礼を言った後、ムラサメはそのまま槍を投げ返す。
投げ返された先、つまり、村の出口には1人の獣人が立っていた。
獣人はムラサメから投げられた槍の威力を殺して取り返す。
その正体は
「アイさん?」
距離があるのでアオイの言葉は相手に聞こえていないが立っていたのは黒い着物の様な鎧を着たアイだった。
アイはその場からアオイ達に対して殺気を放ちながら叫ぶ。
「私達の幸せを壊した不届者達よ!貴様達は大罪を犯した悪人だ!よって我ら元アバレー騎士10番隊が正義を執行する!」
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