第416話 小瓶の中身
《アイ家》
「ふぅ……」
俺1人戻ってきてアイさんの家のドアの前に立ち深呼吸する……あんな出かたしちゃったからなぁ、気まずい。
「だけど言ってられないよね、よし!トントンっと」
ドアをノックするとアイさんが出てきた。
「いきなり出て行っちゃってごめんなさい、ただいま戻りました」
「あぁ、大丈夫だ、それよりキング様は2階に移動させた、ゆっくりとあの顔に慣れるといい」
ん?どう言う事だろ?
「顔?」
「私も初めてはあの威圧感のある顔が怖かった、下手したら魔物より怖いからな」
……あ〜!なるほど、俺が出て行ったのはキング偽物の顔が怖かったから逃げたと思ってるのか。
どうしよ、それだとキング偽物から情報が聞き出せなくなるな。
現在解ってるのはキングが絶対に偽物だと言う事だ。
ならば確実に話していればボロが出るので今離されるわけにはいけない。
「あ、はは、違いますよ……あのあれです」
「?」
なんか適当に理由つけるか。
「長旅で過酷な環境でずっと居たから……なんというか、平和な日常を見て懐かしくて……つい」
「解る!解るぞぉ!」
「キング様!?」
「うえぇ!?」
俺が適当な理由を付けると聞き耳を立てていたのか2階から大声が聞こえた後、ドタドタと派手に音をたてて降りてきて俺の方に来て
「よくここまで辿り着いた!我々家族は誠心誠意おもてなしをするぞ!」
思いっきりハグされた……ちょっと力強くて痛い。
「は、はは……お手柔らかに……」
「キング様、苦しそうですよ離してあげてください?」
「おっと失礼した、つい周りが見えなくなってしまうタイプでな、名前は何と言うのだ?」
「アオイと言います、今後よろしくお願いしますね」
本当なら本物のキングさんに名前を教えてあげたかったな。
「そう言えば他の方は?」
まぁそうなるよね、ルカとムラサメさんには別行動を取ってもらって情報を集めてもらっている、一つのところに集まるよりバラバラで情報を集めた方がいいだろうという事なのだが、上手くここは誤魔化さないと。
「あー、えと、2人ともここの珍しい物に興味があるみたいでしばらく村を見て回るって言ってました」
「確かにここに来た時は見たこともない物ばかりで私も圧倒されたな、分かった」
ふぅ、なんとか誤魔化せたみたいだ。
「だが夜の9時には帰って来ないとダメだぞ?それから仕事だからな?」
「仕事?」
「あぁ、今から説明する、キング様は2階で子供達を見ていてください」
「分かった、俺も夜が楽しみだガーハッハッハッハ」
そう言ってキング偽物は低い声で高笑いしながら2階へ上がって行った。
「とりあえず、上がるといい」
「お邪魔します」
靴を脱いで魔皮紙にしまい、リビングに行ってお馴染みの木のイスに座る。
「とりあえずこれを飲むといい」
「これは?」
すっごいピンクのドロドロした液体が出てきた……なにこれスライム?
「ここ周辺の木の実から取れる甘いジュースだ」
「そ、そうですか」
ま、まぁ住めば都って言うし抵抗無くなっていくんだろうな……の、飲まなきゃだめなのか?これ。
「頂きます……ん、く」
ドロっとした舌触りがした後喉に詰まりそうでつまらない液体が体内に入っていく。
なんだろ、例えるなら○んにゃくゼリーを少しとろみをつけた感じ。
「さて、仕事の件だが、先ほど見せたコレ」
そう言ってまた白い液体の入った小瓶を見せてきた。
「はい」
「この村ではこれを取引として使う、大体この小瓶一つで魔物の肉二キロ程の価値だ」
「へぇ、この液体がねぇ」
破格なのかどうか分からないが、これだけの液体で肉二キロ貰えるのなら相当入手が難しいのだろう。
ちなみに瓶の大きさは俺の片手サイズなのでだいたい50ccくらいだろう。
「ところで、君は経験人数はどれくらいだ?その容姿だ、初めてって事はないだろう」
………………ん?
「え?」
「経験人数だ」
あーなるほどハイハイ経験人数ね……ってバカか!
こっちにきて女になったんだぞ!記憶が無くなって来たならともかく男の時の記憶がある状態でヤれるか!てかヤられるか!処女舐めんな!
てか、今聞いて何が関係あるんだ!
「0です!」
「な、なんと!そ、そうなのか……」
「それで、それがどしたんです?」
「この小瓶の中に入ってるのは【精子】なんだ。」
…………………………………はい?
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