第411話 アオイ帰宅

 《アオイ家》


 「ただいま~」


 「遅いのじゃ、もう朝なのじゃ」


 「ごめんごめん、お酒飲んで話ししてたら気がついたら寝ちゃってた」


 朝になってアオイが帰ると、まるで年頃の娘を待っていたお母さんのようにイライラしながら話すルカに、これまた此方も新社会人なったばかりの年頃の女の子みたいな理由を説明するアオイ。


 「お待ちしておりました我が君......ですぞ」


 「あ、はは、そんな我が君だなんて珍しい言葉を使うね?普段から?」


 ルカとは正反対にアオイをまるで扉から入ってきた神のように扱うアバレーの代表騎士のムラサメ。


 「そんなことないですぞ、普段の私ならば例え相手がアバレーの女王でも言わない言葉ですぞ」


 アオイはその言葉の意味が分からないわけではなかった。

 つまり、正真正銘その言葉が本当なら事と次第では国を裏切ると言っているのだ。

 

 「えーっと、うん、解った」


 アオイはどう言えば良いかわからないのでとりあえず肯定した。


 「それにしてもアイツを手放して良かったのじゃ?」

 

 「あぁ、みやちゃんの事?」


 「そうなのじゃ、アイツもアイツで戦闘力はあるのじゃ、それを裂いてまで......」


 「ルカはさ、チームに暴言厨が居たらどう思う?」


 「暴言......なんなのじゃ?」


 「チームの和を乱す奴がいてってこと」


 「ふむ、そんな奴がいれば殺すのじゃ」


 「うはぁ......サラッと怖いこと言うね、まぁでも一人でもそんな人がいればチームの実力の8割もでにゃいって知ってた?」


 ちなみにアオイのその知識はうろ覚えで元の世界の○イッターで得た知識であるが。


 「そうなのじゃ!?なんと!?」


 「まさかそこまでお考えだったとはですぞ!?」


 「(あれ?なんかこんなアニメあったな?)」


 「と、とにかく、邪魔になるくらいなら環境を整えてあげて外から援護してもらうってことよ」


 「(まぁ、本当は違うけど)」


 アオイは勇者会議でリュウトとヒロユキの魔王の戦いを聞いた。

 

 そして、リュウトは魔王を倒すとき、激戦の末、みやを失いながらも勝った話をしていたのだ。

 話の途中で「俺がもっと強ければ」など「アイツには謝っても謝りきれない」など泣きながら愚痴をこぼしていた。


 「(そんな状況で実は生きてて俺の下僕としてぼろ雑巾の様にみんなで使ってました!なんて死んでも言えるわけないっしょ!)」


 と言うのがアオイの本音である。


 「それはそうと、次の準備は出来てるのか?」


 今まで黙っていたエスが先に進みそうにないので口を開く。


 「あー......えと、次の魔王の町へ行くんだっけ」


 「そうだ」


 「後三日はかかるかも」


 「そうか」


 それだけ言うとエスは外に出ていこうとする。


 「ち、ちょっと」


 「ん?」

 

 「いや自分で言っててあれだけど、なんで三日かかるのか?とか聞かないの?」


 「ふん、アオイが三日かかると言えば俺は待つだけだ」


 そのまま外に出てエスは飛んでいってしまった。


 「行っちゃった」


 「あやつの様にワシらは強制はしないのじゃ三日と言うことは何かあるのじゃろ?何をするのじゃ?」


 「うん、今の僕は力がないでしょ?だから充分準備だけはしとかないとって思ってね、例えるならRPGよボス戦前でアイテムバッグぎゅうぎゅうに詰め込んでいくみたいな」


 「流石ですぞ!我が君」


 「なるほどなのじゃ」


 「(本当は魔王退治とか行きたくなかったんだけど......)」


 アオイは勇者会議を思い出す。

 ヒロユキもリュウトもお酒を飲んでも尚、二人とも弱音は吐かなかった。


 「(俺も負けてられない!)」


 アオイは再度気を引き閉めるのだった。










 「ところで、我が君、道具を買うのにも先に出るものが必要ですぞ、なので私のこのギルドカードを」



 そういってムラサメはアオイにギルドカードを名刺のように差し出す。



 「そんな悪いよ、僕は僕で............ってぎょええええぇ!?」



 ムラサメの残高に目が飛び出そうになるアオイだった。





 

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