第409話 第二回【勇者会議】
時刻は深夜の一時頃。
店ののれんはもう撤去され、店内には誰もお客が居ない中、アオイ、リュウト、そしてまだ包帯をしているヒロユキの三人が座敷席に座っている。
「はいよ、最後に当店自慢の《ベルドリの唐揚げ》だ」
「ありがとうございますー」
机には様々な作りたての料理が並びアオイ達の食欲をそそる匂いを放っている。
そして、アオイの前にはお酒、リュウトの前にはジュース、ヒロユキの前にはお茶が置かれている。
「ところで店長、本当にいいんですか?こんなに料理してもらってしかも今日の分全部無料って」
「構わしない、今日一日いつもより少し働いてお前のあのメニューが貰えるなら安すぎるくらいだ」
「なるほど、じゃぁお言葉に甘えます」
「はいよ、俺は片付けとか明日の仕込みをしているから用があれば呼んでくれ」
それだけ言うと店長は厨房に戻った。
「さて、じゃぁ......リュウトくん」
「おう」
「ヒロユキくん」
「......」
アオイは高々と美しくかわいい声をあげて言う。
「かんぱーい!」
「乾杯!」
「......乾杯」
それぞれのジョッキやコップがぶつかり音を鳴らしリュウトとヒロユキは一口。
アオイは一気にお酒を飲んだ。
「ぷはぁ!店長おかわり!」
店長は手だけで挨拶しすぐにお酒を持ってきて置いて戻る。
「相変わらずすごいな」
「......すぐ酔うぞ」
「平気平気♪良いことがあった日は飲みまくるのだよ」
「良いこと?何かあったのか?」
「フフッ、こうやって五体満足......とまではいかないけどみんなに会えたことかな?ヒロユキくんに場所を教えてなかったけど良く解ったね?」
「......リュウトに連絡した」
「ユキさん達は?」
「......知らん、勝手に病室を出てきた」
「うわ、またそんなことして」
「......もしも言えば一緒に来てしまう、リュウトから聞く限り今日は三人で話すと聞いた」
「うん、そうだけど」
「ま、俺も今回はアカネ達は置いてきたがちゃんと言ったぞ?そのせいで「私も妹ちゃんと会いたいー!」ってめちゃくちゃ泣きついてきて大変だった、今度良ければアカネ達にも会ってくれアオイ」
「うん!アカ姉さんに僕もゆっくり会って話したいしね」
「......今度ユキにも言っとく」
「うん!僕もあの時途中で抜けてしまったから今度謝りにいくよ」
「......その事も今日聞くつもりだ」
「うん、そのために今日は一人で来てもらったんだよね」
アオイはお酒をジョッキの半分飲む。
「それで、【第二回勇者会議】の本題に入ろうか、まずはこの場を用意してくれた開いたアオイからだ」
「うん、解った」
アオイは次は一口お酒を飲んで話し出す。
「まず、僕がみんなに会ったときの記憶はあの《山亀討伐》の時から消えてるんだ」
「数年前のあの事件か」
「そう、でも起きたときはそんなにビックリ仰天!くらいはインパクトなかったかな?僕は元々奴隷で用があるまで魔法の睡眠カプセルに入れられられていて、起こすのは外の人たちだから」
「......それで?」
「しかもちょうど記憶に残ってるのはみんなが山亀に敷かれた後で周りには誰もいなかった所までは覚えてた」
「?」
「......?」
二人は頭にクエッションマークを浮かんでいるような顔をする。
それもそうだ、何故ならあの時の記憶はアオイの中にいる【アオイ』に変えられているのだから。
「うん、みんなそうだよね......実はみんなの記憶は僕の中に居る『女神』に変えられてるんだ」
「女神に!?しかもアオイの中に居るのか!?」
「うん、だけどこの世界の『女神』とはちょっと違うみたい、何と言うか......僕の中で産まれて育ったみたいで」
「......どういうことだ?」
「説明が難しくなるんだけど『女神』だけどそうじゃない存在、まぁ【もう一人の僕』と僕は呼んでるよ、人呼んでそれを【闇アオイ』という」
「なんかそれ、前の世界で少し聞いたことあるような」
「あ、バレた?そこからオマージュしたというか実際に自分が体験するとは思わないでしょ?こんなこと」
「ま、まぁ、この世界に来てからアニメや漫画の世界みたいな事が次々と起こってるから麻痺してたけど、元の世界じゃありえないもんな」
「......山亀、本当はどうなったんだ」
「うん、僕が武器召喚で出した糸の形を変えた特別な矢をエスに渡した所までは覚えてるからたぶんエスが最後の一撃を」
「アイツか!くそ!だからあの時あんなこと言ってやがったんだ!くそくそくそ!」
リュウトが恥ずかしくそして悔しそうに頭を掻きみだす。
「お、落ち着いて、どうしたの?」
「アイツが前に「何も知らない奴は笑えるな」って言ってたんだ!これのことだったのか!」
「な、何があったか解らないけど続けるね..............................それとリュウトくん」
「ん?」
「その........................」
「?」
アオイは少し顔を赤くしてモジモジする。
端から見ると中身がおっさんとは思えないほど可愛い仕草だ。
普段のアオイならそういう行動はあまりしないのだが、今回はそれなりの理由があった。
「山亀で僕を助けてくれたときの事とか覚えてる?」
「ん?あぁ、あの時は俺は調子が悪くて良く覚えてないんだ、詳細については俺の番になれば話すよ」
「ホントに覚えてない?」
「うーん、本当に覚えてないな」
「そ、そっか」
「なんだ?」
「い、いや」
アオイは顔が真っ赤になる、まるでファーストキスを取られた乙女のようだ。
「(なんであそこの記憶だけ鮮明に思い出させるかな!恨むぞもう一人の『俺』!)」
「?」
「ご、ごほん、えと、どこまでだっけ。あ、そうだ、エスが倒してそこから次に起きたらミクラルでまた奴隷になってて、モルノスクールっていう学校に行ってたんだ」
「おぉ、異世界で学校か、俺も少しだけ行った」
「ほぇーそうなんだ?えと、そこで吸血鬼に会ってそれから」
「それからは聞いているよ、魔王を倒したんだろ?」
「うん、まぁそんなとこかな?」
「......よくやった」
「お、褒めてくれてる?」
「......少しな」
「ま、僕はそんなとこかな、そして重要な事をいいまふ」
「まふ?」
「......まふ?」
アオイは身体が暑いのか、手をパタパタさせながらスカートを少しめくったりしている。
「なんか、僕【勇者】の力無くなっちゃったんだよね」
「!?」
「......!?」
その事実は残りの勇者二人に衝撃を走らせた。
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