第403話 病室のヒロユキ

 《ミクラル王国 ナルノ町》


 「以前とは逆ですね」


 「......あぁ」


 ナルノ町の大きな病院の一室。

 かつてユキがお世話になった病院のベッドに次はヒロユキが横になっていた。


 「それにしても、全身筋肉痛、全身骨折、内蔵が何個か傷つきさらに魔力酔いからの脳出血って【限界突破】の反動にしては多すぎませんか?キールさんの【目撃護】を使いながらここに運ばれなかったらとっくに死んでますよ」


 「......あれは【限界突破】じゃない」


 「え?じゃぁ何なんですか?」


 「......【ナオミスペシャル】だ」


 「ナオミスペシャルってあのミクラル代表騎士さんの使う魔法ですよね?」


 「......あぁ」


 「使えるんですか?」


 「......もう一度使えるか解らない」


 「とっさに出たのがってやつですか......それほどの相手だったとはやはり魔王と言われるだけありますね」


 「......」


 「失礼しますよ~?」


 「あ、たまこさん」


 「......たまこ」


 のほほーんとした声を出しながら病室に入ってきたのは狐色の髪に耳、そして魔法で隠してるがもふもふの尻尾を持っているユキ達のサポート役のたまこだ。

 全身が死にそうなくらいボロボロなヒロユキを治療した張本人でもある。


 「それにしても~、今回はごめんなさいね~」


 「いえ、此方も時間が無かったので、すいません......そちらはどうでしたか?ありましたよね?」


 「えぇ、ありましたよ~」


 「......?」


 ヒロユキは何を話してるか解らないみたいだが、二人は気にせずに話を進める。


 「それなら良かったです、私達はヒロユキさんが治るまでミクラルで休憩するつもりなのでしばらくは別行動しても問題ありません」


 「元々そのつもりよ~、ヒロユキくんの内側は治したけど筋肉痛と魔力は薬を飲みながらゆっくり治していってね~」


 「......解った」


 「じゃぁねぇ~」


 小さな手をフリフリさせながらたまこは出ていくと外で騒がしそうに他の医者がたまこに寄ってきて声をかけているのがヒロユキ達に聞こえる。


 「たまこさん、この患者を」


 「言ったでしょ~、私は魔法医者じゃぬいのよ~」

 

 「しかし、この患者は急に倒れて意識不明......なんの前兆もなくですよ!」


 「意識不明~?隠しても真実は変わらないわよ~」


 「はい?」


 「意識不明じゃなくその人はもう死んでるの~あなただけじゃなく私に訪ねてきた医者は全員この患者と同じ......つまり死んでるのよ~」


 「ですが!」


 「私は生きている生命を治す事はできても死者は治せないの、これ以上あなたと話す気はないわ~」


 「くっ!」


 会話の内容は明白だ。

 前兆もなく倒れ死んだ患者......それはメイトによって魂が入れ換えられていた人達だ。

 

 「............」


 「............」


 ユキもヒロユキも下を向いて黙る。

 どうしようもないのだ、魂を元に戻したはいいが片方がなければ身体だけ残る。


 「......ユキ、アオイは?」


 重たい空気を変えるためにヒロユキから会話を出した。


 「アオイさんならあの日ルカさんと行方不明になったままです、あの状態のアオイさんなら敵にどうこうって訳でもなく、自分の意思でどこかへ行ったんだと思います」


 「......そうか」


 「心配ですね」


 「......いや」


 「?」


 「......約束をしたからな」


 「約束ですか?」


 「......あぁ」


 「それって何の約そ......」


 その瞬間扉がいきなり開かれる。


 「ヒロユキさーーーん、んぅ、大丈夫?」


 「な!?あーたん!」


 部屋に入ってきたのは子供の姿より進化し成長した大人の人間の身体のあーたんだった。


 「......」


 「大丈夫ぅ?大丈夫ぅ?」


 ベッドに横になって動けないヒロユキの上に乗り顔にまぁまぁ大きなオッパイをおしつけて抱きしめるあーたん。


 「どきなさい!」


 「んぅ、ユキ姉らんぼー」


 「ヒロユキさんが窒息死するじゃないですか!」


 「んぅ?ちっそくー?」


 ぎゃーぎゃーとユキが言ってるのを見ながらヒロユキは約束の事を思い返すのだった。







 「......あいつに連絡取らないとな」





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