第402話 アオイ離脱

 《アバレー王国 アオイ家》


 「しっかし、良くこんな所に住んでたものじゃ、しかもこんな山奥に建てる必要ないと思うのじゃが」


 「仕方ないでしょ、家作りとかしたことないし、むしろ素人の発想で小さな部屋と外に100人乗っても大丈夫な倉庫を作ったんだからすごい方だよ、場所に関しては......うん、まぁ色々ある」

  

 時刻は夜の22時頃、アオイとルカはアバレーにあるアオイの家に戻っていた。

 家の中は簡単で床はどこかで買ってきたであろうベニヤ板を敷いただけ、壁は木の丸太を隙間なく杭のように建てており、屋根は床と同じものをくっつけているだけだ。

 こんなもので雨風や虫を防げるのは部屋の至るところに貼られている魔皮紙のおかげだろう。

 ひとしきり家具なども揃っている。

  

 「それに、なぜ仮面をつけておるのじゃ?」


 「これ?これは......」


 アオイは自分の付けている白い狐の仮面を指でなぞる。

 

 「いや、僕の話よりルカの話が先でしょ?」


 アオイは木のイスに座っているルカにお茶を出す。


 「僕の中にいる『女神』についての情報って?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 《数時間前 ライブラグス砂丘》


 【流石だね』


 「えぇ、確かに」


 圧倒的な力でヒロユキは魔王をねじ伏せていくのをアオイとキールは遠くから見守っている。


 【キールさん、ヒロユキ君への援護はまだ出来そうですか?』


 「大丈夫だ、後は私が目を離さなければヒロユキ殿がやられる事はない」


 【うん、頼みました』


 不意にアオイの胸ポケットに入っている通信用魔皮紙が反応してバイブしだす。


 【ん?』


 {アオイ、何してるのじゃ}


 【え?何って......見てる?だけだけど』


 {それなら近くにワシが地下シェルターを作ってるのじゃ}


 【うん、ん?』


 {お前はバカかなのじゃ、そこの騎士は今一応安全をかねてお前を通して見ておる、無駄な魔力を消費させるよりワシ達は隠れていた方が良いのじゃ}


 【あぁ!確かに!』


 {解ったなら早くくるのじゃ}


 【うん』

  

 「私なら構いませんが」


 【ありがとうございます、でももしもがあると恐いので行きますね』


 「はい、魔力の消費量からしてこちらには魔眼の力は使っていないみたいです、今なら私の魔法の範囲を出ても問題ないでしょう」


 アオイはキールから離れルカの魔皮紙を展開させたまま誘導してもらい簡易シェルターに入っていった。

 中は何もなく暗いただの部屋だ。


 「来たか、アオイのじゃ」

 

 【うん、あの様子だと大丈夫みたいだね』


 「うむ、では行くのじゃ」


 【行くって?』


 「ここはもうあの勇者に任せて良いのじゃ、ワシ達はこれで帰るぞなのじゃ」


 【いやいやいや、帰るならみんなでじゃない?普通』


 「............」

  

 ルカは黙る。

 

 【ルカ?』


 「選べ、なのじゃ」


 【?』


 「このままワシについてくればアオイの中にいる『女神』の事について情報を与えるのじゃ」


 【!?、どうしてその事を!』


 本来、アオイからするとルカは奴隷のマスター。

 ここに来てるの事態おかしな事だが、ルカの口から出たのは'アオイの中にいる『女神』'

 今のアオイからしたら喉から手が出るほど欲しい情報だ。




 「時間はないのじゃ」


 



 アオイはその誘いを断らずにはいられなかった。






 

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