第400話 復活のヒロユキ

 《ライブラグス砂丘》


 「良い魔力量だ、キール」


 「褒めてもらって光栄だ......はぁ......はぁ」


 メイトの力により森の木々は無くなり8割がまた砂漠と化している中。

 メイトに蹴られ斬られ押し潰され殴られ吹き飛ばされ締め付けられ......様々な攻撃を受けながらもビクともしないキールだったが流石に魔力の限界が来ていた。


 「もう無理をするな、息があがっているぞ」


 「はぁ......はぁ......」


 「チッ!鬱陶しい!」


 メイトに向かって遠くからクリスタルの破片が飛んでくるのを魔眼の力で粉砕し、砂の中から鞭のようにしならせて攻撃してくる木の根も粉砕する。


 「キールが終わったらお前たちだ!その力......女神の作り出した『四聖獣』と関係あるか!ゆっくりと聞かせてもらうから覚えておけ」


 「......」


 キールはその内に息を整える。

 ルカとユキナが稼いだ時間は、ほんの数秒......だがその数秒を使ってキールは魔力回復の高まる呼吸法で少しでも多く回復していた。


 「くだらん悪あがきを......」


 「どう......かな、こういう悪足掻きは、弱いものの特権だ......」


 「ほう?」


 「俺達は【勇者】の様に強くない......勇者が一撃で倒すドラゴンを何人もの命の犠牲を払って討伐出来なくても......」


 キールは魔王を睨み付ける。


 「みんな、必死に足掻いて勝利を掴もうとしていた!」


 「......」


 「結果はダメだったが足掻いていた、必死に!弱いが何とかしようと!」


 キールがメイトに唾を飛ばしながら必死に答える。

 反対にメイトは冷めたように言葉を紡ぐ。


 「そうか......人間の代表騎士キールよ、お前は良く頑張った......だが勝利は来ない、その理論では結果は見えているだろう?......諦めろ」


 メイトはより一層、魔眼の力を強化してキールに重力をかける。


 「(クそッ!魔力消費がさっきより激しく!)」


 キールは立っていられなくなり砂に膝をつく。


 「(こ、これ以上は......)」


 キールの魔力が尽きようとしていた








 その時!


























 






 





 



 【エマンドゴラァ!』


















 「お前は......っ!!」







 また同じ様に不意をついた美女がキールの目の前でメイトを殴り飛ばした!


 殴り飛ばされたメイトは遠くに飛んでいき砂丘に背中からダイブして埋まる。



 「アオイさん!」


 【あれ?これって二回目かな?さっきもこんな感じだった気がするけど』


 先程までメイトが居た場所には金髪で青い綺麗な目に美女の最強の身体を持った【アオイ』が立っていた。


 「大丈夫なんですか?」


 【うん!心配要らないよ!』


 アオイは迷いなくキールの問いに答えながら細く綺麗で柔らかく白い肌よ手を差しのべるのでそれをキールは掴むと。


 「......!」


 【?』


 アオイの手から膨大な魔力がキールに流れ込む......その量は無限大......まさに魔力の人間貯蔵庫だ。

 

 「アオイさん、一体何を......」


 【え?俺何かした?』


 アオイはその事に気付いていない、本人からしたら膝をついているので起こしたくらいの感覚なのだ。


 「(これも勇者の力なのか?)」


 「何でもありません、アオイさんに【目撃護】を発動しました」


 【ありがとうございます』


 「メイトは今の攻撃で倒せたとは思いませんすぐに私達で追撃を」


 【いや、ここから先はあそこに居るおバカさんに任せましょう』


 そう言いながらアオイが指差した先はここから少し離れた所にあるピラミッドの頂上......そこには


 曇天の中に鏡のような綺麗な刃の日本刀を持ち。

 黒い軍服の鎧を身に纏った寡黙なる【勇者】



 身体を取り戻したヒロユキが立っていた。



 「!!!、ヒロユキ殿!!」


 【ミラーワールド』


 「?」


 【ヒロユキ君は前にアバレーを管理していた魔王【ミラ】と【カエデ】と戦った時、鏡の世界があることを知ったみたい』


 「確かに、その報告は受けていましたがそれとどういう」


 【うん、実際に俺もヒロユキ君も何でか解らないけど死ぬ直前にその鏡の世界に自分の魂を一時的に保管したみたい、後は隠されていた本当の身体を近付けたらヒロユキ君は復活したよ』


 「鏡......しかし、その様なものが......あ!」


 キールは思い出す......首を切ったメイトの身体には黄金の鎧が付いていたことを。


 【おっと、出てきたみたいですよ、キールさん』


 アオイがヒロユキから目を離してキールの後ろを見ると。

 まるで海からクジラが海面に出てくるように砂を巻き上げながらメイトが空高く出てきた。


 「チッ!一度ならず二度までも!一体何者だ!」


 メイトが下を見て自分を殴りとばした人物を探し見つける。


 「あれは!報告にあった『女が......!」


 メイトがその言葉を最後までいい終える事は無かった......何故なら空中に居るにも関わらず'真横から殺気を感じ'咄嗟に持っていた黄金の長槍を出した!


 その瞬間


 「貴様は!」


 「......久しぶりだな、魔王」


 黄金の長槍は音もなく三つに斬れて、バラバラになりメイトの持ち手だけ残し砂に消えていく。















 【俺が言えないけどあんだけみんなに心配かけて迷惑かけたんだ、最後くらいお前が頑張れ、ヒロユキ!』
















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