第399話 生きている

 《地下シェルター》


 「ん......」


 目を覚ますと暗いシェルターの中に一人、頭を悩ませながら少女が忙しそうに魔皮紙を広げて何かを書いていた。


 「これでここにルカおばさんに行ってもらってその内にユキナに植物を操り......いやダメです物理的に干渉するとあの魔眼に......」

 

 何枚も何枚も大きなバツマークが書かれたり破られたりしている。


 「あ、あの......」


 「!?、アオイさん!起きたんですね!」


 「うん、ちょっと記憶が曖昧で......どうなったのかな?」


 「アオイさんは過度なストレスにより呼吸困難になって倒れました、そういうのに詳しいキールさんが居て対処したので大丈夫だと思うんですが」


 「ごめん......迷惑かけたね」


 「いえ......ざっくり言うと現在、キールさんが一人で魔王に挑み時間を稼いでくれてます、ルカさんとユキナは少しでも魔王の魔力を削るためにその援護を、あーたんにはシェルターで待機してもらってる状況です」


 「う、うん」


 「これを見てください」


 少女......ユキさんは広げていた魔皮紙に魔力を通して浮かし見やすくする。


 「魔王メイトの魔眼は自身の魔力をどれだけ使うかによって強弱と範囲が決まります、さらに言うと範囲が狭ければ狭いほど少ない魔力で高い重力をかけれるのでしょう」


 「うん......」


 「そして、キーさんの【目撃護】も同じような性質で対象が増えれば増えるほど魔力を持っていくみたいです、そして魔物の成分で作られた魔皮紙は対象外......今まで魔皮紙は鎧の内ポケットにありましたのでキーさんも気付かなかったみたいです、なので現在キーさんは魔皮紙などを持たずにただ一点、メイトの魔力を消費させる事を考え戦っています」


 「つまり、今キールさんが一人で戦ってるのはお互いの我慢比べをしてるってこと?」


 「そうです、メイトも隙が出来ればキーさんを殺したいはず......そうなると魔眼の力をキーさんにかけ続けなければならない」


 「なるほど」


 「そして、もっとメイトの魔力を減らすためにルカおばさんやユキナには隠れながら援護をしてもらっています、メイトも狙いがわかっているのでしょう、周り全てを重力をかけたりして魔力を消費せず援護が来た瞬間にその攻撃を圧縮して無効化しています」

 

 「うん」


 「私とあーたんはそこまでの遠距離からの攻撃手段を持っていません......正直、何もできないのが悔しいです......」


 「......」


 ユキさんはぐしゃぐしゃにした魔皮紙を力強く握りしめる。

 何かしたいのに何もできないのが悔しいのだろう......


 「キーさんは時間の問題です、私達がメイトを見つける前からキーさんは戦っていて魔力を消費してるので、このまま行けば負けるでしょう」


 ユキさんはこっちを見てくる。


 「アオイさん......行けますか?」


 行けますか?......そう聞かれるのは当然だ、俺はヒロユキが死んだ事に対しどうにか隠していた【恐怖』が沸き上がり抑えられなくなり倒れ......あれ......?


 「ちょっと待って」


 何か引っ掛かる......例えるなら「お前初夢何見た?」と聞かれてその日の朝まで覚えていたのに答えられないようなそんな感覚......初夢......夢?


 「あ!」


 「?」


 思い出せ!夢でヒロユキに会ったんだ!夢だけど......夢だけどあれは何か違う!そういう気がする。


 「ぐぬぬ......」


 「アオイさん?大丈夫ですか?」


 頭が痛い、無理矢理扉をこじ開けているみたいだ、だけどここでこの何かを諦めたらその扉は一生閉じたまま。


 「ぐ。が。」


 「やはり、ダメですか......」


 違う、ユキさんちょっと......

 

 「黙ってて」


 「!?、は、はい」


 「あぁ。ぐ」


 いけ!いけ!いけイけ!イけいけ!


 【くぁらっしゃーい!ゴラァ!......はぁはぁ......』


 全部思い出した......

 ヒロユキは......ヒロは!
















 【ユキさん......ヒロは生きてる!』




  














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る