第396話 砂漠に森

 《再び 魔王ピラミッド内部》


 「キールさん!援護に来たよ!」


 「アオイ......さん?どうしてここが」


 「アオイさんだけじゃありませんよ!」


 「肯定、二人」


 「ユキさん!......と?」


 「名前、ユキナ」


 アオイが魔王をぶっ飛ばした後にユキとユキナがピラミッドに入ってくる。


 「キールさん、今なら立てるはずです」


 その言葉を聞き、キールは力一杯腕に力をいれて立ち上がろうとすると先程までの抵抗が無くなっていた。


 「どうして......」


 不思議そうにしてるキールにユキは説明をする。


 「アオイさんの放った【零式拳砕】は相手を殴り魔力バランスを崩す事が出来ます、ですが魔王もそれにすぐ気付く事でしょう、なので今のうちに外へ!」


 「了解した」


 「ヒロユキさんも気配遮断ローブを着て近くに居るんですよね?出てこなくていいですよ、今悟られる訳にはいきませんから」


 「っ......」


 キールは言葉に少し詰まる......ヒロユキが気配遮断ローブを使うことはアオイもユキも承知している、つまり今来たユキ達は真実を知らないのだ。


 「キールさん?」


 「いや、何でもない......ヒロユキ殿も聞いていると思います」


 なのでキールは嘘を付いた......今この場で話みんなの動きに支障が出ることを避けたのだろう。

 

 「アオイさんも行きますよ!」


 「うん!」


 首の切れた黄金の鎧を纏った死体と魔王を置いてみんなでピラミッドを出るとキールは周りの景色に驚愕して止まった。


 「こ、これは......どういうことだ」


 かんかん照りになっていた太陽は今は雨雲に遮られていて曇り空に......そして見渡す限り砂しか無かった砂漠はそのサラサラの砂から木や草をはやしてピラミッドを中心に森が広がっていたのだ。


 「驚くのも後です、此方へ」


 ユキはピラミッドの入り口のすぐ横の地面に魔皮紙を使って地下シェルター簡易拠点を作り扉を開ける。


 「灯台もと暗しって奴です、一旦ここに隠れましょう」


 ユキが開けた扉にみんな入っていった後、ユキは誰もいないところへ声をかける。


 「ヒロユキさんも入りましたね?閉めますよ?入ってなかったら知りませんからね!」


 扉を閉め、その上から砂が被さる......ユキのその言葉はヒロユキに届くことは無かった。


 

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