第389話 圧倒的力

 「貴様!」

  

 「......クルッポー」


 ヒロユキの足の爪で魔王を斬りつけようとするが間一髪魔王は避けヒロユキから距離をとった。


 「(どういう事だ、なぜ我に近づけた)」


 魔王は困惑する。

 キール達が入ってきて魔眼の力は常に発動しているのだ、それは魔王自信に近づくと強くなるようになっていた。

 さらに言うとたった今、キールとヒロユキには身体の形が保てないほどの重力をかけている......それは、人質に銃を突き付けていたのを躊躇無く撃っている行為である。


 だが、ヒロユキ達はぐちゃぐちゃに潰されるどころか近づいて魔王に攻撃までしようとした。


 「なぜだ!」


 「............」


 キールは喋らない、あの液体の効果はまだ続いているのだ、強制的に話すようになるものでもなかったのが幸いだ、それも含めて余裕であるのかそれとも相手に敬意を払ってしていたのか......


 「見えなければ我が魔眼から逃れられると?否!」


 「......!?」


 ヒロユキのローブが一気に重くなる。

 布一枚......そのハズなのにヒロユキにとっては分厚い鉄板を着ている様に感じヒロユキは気配遮断ローブを脱ぎ捨てた。


 「......クルッポー」


 「どういう魔法か知らないが我の魔眼を全て防げる訳ではないみたいだな」


 「......」


 「良いだろう」


 「っ!?」


 一瞬。

 本当に一瞬である......魔王は魔法も使うこと無く、持っている身体能力だけでキールの目の前に移動しキールを殴り飛ばす。


 そして殴り飛ばされたキールは石の壁に激突しその衝撃で壁がボロボロと崩れ落ちる......【目撃護】が発動してなければ今ので脳震盪か内蔵が潰れていただろう。


 「貴様達は我が能力を封じることで勝てると思ってるみたいだが貴様達と我では根本的に違うのだ、解りやすく身体能力で表してやったが......ふむ、鎧に傷はあっても身体は五体満足......我の能力が効いていないのと関係がありそうだな」


 「......」


 キールは国の代表になるまでの実力の持ち主だ。

 魔法を使わなくとも身体能力も高く反射神経も並外れている......にも関わらず反応できなかった......それは魔王の言うとおり絶望的なまでの力の差......


 「(くっ......反応できなかった......私が!?)」


 キールはもう一度【武器召喚】で氷の剣を出そうとするが圧縮され無くなる。


 「無駄だ」


 「......クルッポー」


 「それも、無駄だ」


 また後ろから奇襲をかけたヒロユキが攻撃をしかけたが魔王の回し蹴りによりヒロユキも吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。

 此方も【目撃護】がなければ首が折れていただろう。


 「ふむ、騎士だけではなく勇者もか......貴様達が少人数で攻め込んできた理由はこれか?大方、ダメージを受けぬ魔法であるが、そう多くの人間にはかけれない......だからこそ、厳選された戦闘力の高い人間を見つけ出し、我らに戦争を仕掛けてきた。」


 30分過ぎてないせいか魔王はペラペラと話している。

 それほど余裕なのだろう、だがそれがキールにとって幸運であった。


 「......」


 キールは余計なことを言わないように口を閉じて体勢を立て直す......キールが今一番警戒してるのは'他のメンバー達に魔王が攻撃すること'なのだ。

 なので魔王が勘違いしてくれているこの状況はキールにとってありがたい状況なのだが......


 「はぁぁあ!」


 「......クルッポー」


 「無駄だと言っているだろう」


 キールが距離を詰め顔面を殴ろうとするが魔王横に避けそのまま蹴りあげキールが天井まで吹き飛ぶ。

 その隙にヒロユキが魔王の片足を狙ったが魔王の方が反応早くかかとおとしでヒロユキの方が衝撃に耐えきれず地面に顔から激突した。


 「まだだ!」


 「ほう?」


 キールが魔法で脚力を強化し天井を蹴って勢いよく魔王に突進をしようとしたが


 「っ!」


 「この程度か?」


 むしろ魔王の方がキールに向かってその場で脚力だけで飛び、向かってきているキールを掴んで空中で弧を描きながら投げ飛ばす。


 「貴様のその力は強力だ、認めよう......だがそれだけの力は永遠に続くことはないのだろう?」


 「っ!!」


 「そして貴様達は我を殺したいのだろう?そこの勇者は知っているだろうが改めて言おう」


 魔王は両手を広げる。


 





 「我は【リブラ】の称号を持つ魔王メイト......冥土の土産に覚えて逝くがいい」







 




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