第388話 正体を知る者

 「な!?」


 「......クルッポー......」


 「どうした?ここに来たかったのだろう?もっと喜ぶといい」


 褐色の黒い波田に黒髪、スラッとした筋肉の上には以前ヒロユキと会ったときと違い黄金の鎧を着ていた。


 「貴様......どういう事だ?」


 「どう言う事?とは?貴様が我が国の魔法を解いてここへ来たのだろう?」


 「違う、貴様はさっき「招いたと言った」それはどう言うことだと聞いてるんだ!」


 魔王は手で自分の目を被い少し立って嗤う。


 「はっはっは、そこの勇者と比べお前は良く話を聞いている」


 「......クルッポー」


 「それに、話し合いをしようと言うのだ......まずは」 

 

 そして魔王が手を目から退けるとその眼には天秤の紋章が赤く輝いていた。 




 「武器を下ろせ」

  



 「!?」


 次々とキールとヒロユキの周りに浮いている【氷の剣】が地面に勢い良く叩きつけられ砕けていく。


 「くっ!」


 キールはまた作り出すが


 「無駄だ」


 作られている途中で砕けちる。


 「これが......魔眼の力......」


 「ほう、そしてある程度の知識はあるようだな、勇者から入れ知恵されたか?まぁ、いい......今貴様達の周りは私の力により通常より100倍程の重さがかかっている、解るか?貴様達の命は俺の気分次第だ」


 「............」


 キールは手を降ろし魔王を睨み付ける。


 「それと、返してもらうぞ、我が部下を......その背中に背負って居るのだろう」


 「......クルッポー」


 「......ヒロユキ殿、ここは従ってください」


 「......」


 ヒロユキはアオイの糸でカモフラージュしていた自分の体を地面にゆっくりおいて少し下がる。


 「ふむ......」


 魔王はそれをフワフワと浮かせて自分の所へ持ってきてアオイの糸を触る。


 「不思議な【糸』だな......我の力でも取れそうにない」


 「それで、話とはなんだ?」


 「それをする前にこれを飲め」


 「これは?」


 キールの前に血のように赤い液体の入ったカップがフワフワと浮いてきた。


 「我が国で取れる【ライズサボテン】と言うものを加工した液だ、飲めば30分間、嘘をつけなくなる」


 「......」


 「安心しろ、毒なぞ盛らなくともすぐに貴様達を我は殺せる、情報によっては貴様達にチャンスをやろう」


 魔王もそこまで言うと同じものが入ったカップをキールに向ける。


 「解った、だがこれを最初に飲むのはお前だ、当然だろ?」


 「いいだろう、我は王、寛大な心の持ち主であるからな......乾杯だ」


 魔王は一気にそれを飲んだ。

 キールもそれを見て飲む。


 「(この状況、奴から見たから本当に私達はすぐ殺せるのだろう、だがそれをせずに私達に話し合いを要求してると言うことはあちらも何かを聞き出したい様子だ......尋問などでは情報を出さない事も承知の上と言うことだろう、それとも本当に余興か?まぁいい、此方としてもチャンスだ)」


 お互いに空になったカップを横に放り投げカランカランと音をたてる。

 

 「......」


 「......」


 そして大きな砂時計が現れひっくり返る......開始の合図だ。


 「騎士よ、貴様からだ」


 「解った......魔王に問う、天秤があるピラミッドはどこだ?」


 「このピラミッドは空間操作の魔法で中をいつでも変えれる、よってどこにあるか?など言われても答えようがない」

  

 「......」


 「では、我からの質問だ、貴様達は何人でここへ来た?」


 「五人だ」


 「ふむ......そうか......」


 「天秤の場所へ行くにはどうしたらいい?」   


 「我が許可を出せばいつでも行ける、許可など出すわけがないがな、言っとくが貴様がここにこれたのもわざと我の所に繋がるようにしただけだ、あの程度気付けなくては我の前に立つことすら許されぬ」


 「......」


 「さて......我の番か......」


 魔王はゆっくりと口を開き、キールに良く聞こえるように問う。








 「貴様達の中に『女神』が居るか?」








 「!!」


 それはこの場でキールしか知らない情報。

 仮にヒロユキ達が知っていたとしてもこの場で『彼女』の事にもっとも詳しいのはキールだろう。


 「........................」


 「どうした?答えられぬか?」


 「......居る」


 「やはりか」


 「次は私の番だな。」


 キールは考える......『女神アオイ』の存在は誰にも秘密なのだ。

 理由は【神の使徒】であるキール達しか知らない。

 つまり今ここでアオイの正体をばらす訳にはいかないのだ。


 「(状況的に次で最後の質問になりそうだ......くそ!色々聞けるチャンスだったが仕方ない!)」


 キールはヒロユキにアイコンタクトをとり準備させておく。

 そして......最後の質問をする。


 「質問だ、お前の魔眼の効果範囲はどれくらいだ?」


 魔王は笑みを浮かべ答える。







 「我の魔眼はこの世界全てに反映できる」







 「そうか......この世界全て......どこに逃げても無駄、と......だがその答えは矛盾だ、世界が見えているならなぜ後ろのヒロユキ殿に気付かなかったんだ?」



 

 「なに!?」



 「......クルッポー」







 【気配遮断ローブ】を着たヒロユキが魔王に斬りかかり魔王との戦いが始まった。


 


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