第387話 ループ解放

 《ピラミッド内部 キールとヒロユキ》


 「暗いですね、【光源】」


 キールは冒険者の基本となる魔皮紙に魔力を流し光の玉を作って周りを照らす。


 「どうですか?ヒロユキ殿、一度来た事があると聞きましたが」


 「......クルッポー」


 ヒロユキは首を横に降って否定する。


 「ふむ......ハズレみたいですね、とりあえずピラミッドを探索しますか、何かあるかもしれませんし、ヒロユキ殿が見たときと同じような状況で構えてるとは考えにくい」


 「......クルッポー」


 「幸いにもこの中まではあの超級魔法は来てないみたいですし......そのおかげで兵達も入ってこれてない」


 キール達が入ってきた入り口にはまだ風を切り裂く音を立てながら超級魔法が塞いでいる。

 出ることも可能だが予定より早く【目撃護】を使ったので魔力を回復の意味も込めているのだろう。


 「......クルッポー」


 「では、行きましょう」


 キール達は警戒しながら奥に歩きだす。


 「......」


 「......」


 「ところでヒロユキ殿、この間アオイさんが少し話していましたがこの建物はヒロユキ殿達の居た世界に存在していたのですか?」

  

 「......クルッポー」


 キールの問いに対してヒロユキは肯定するように首をたてにふる。


 「......では、【アヌビス】と言う魔族はそちらの世界に居ましたか?」


 「......」


 「違いますか、では今回は初めて聞いた名前ですか?」


 「......」


 「それも違うと......つまりピラミッドと言う建物は存在していて、アヌビスという種族は聞いたことあるが見たことはない。と言うことですね?」


 「......クルッポー」


 「ふむ......やはり、私達はそちらの世界の事を知る必要がありそうですね」


 「......?」


 「【勇者】について、私は色々と考えていました、魔王を倒せる存在を似ている世界から召喚する......これは力だけの話では無いと私は思いました」


 「......クルッポー」


 「あなた方の世界に何かヒントがあると思っています、私達はあまりにも自分の世界の事を知らなさすぎる」


 「......クルッポー......」


 「......ここから私の予想ですが、今まで人類は何百年も存在してました、それでも知らないことが多いと言う事は何者かが......」


 そこまで言ってキールは何か違和感を感じて止まった。


 「......?」

 

 「話の途中ですいません、あれを見てください」


 壁に赤い線が少し入っている箇所を指さす。


 「あの印はここに来て私が付けました、それがあると言う事はループしてますね」


 「......クルッポー」


 「やり方的にはアバレーの世界樹内で発動する【迷走宮】という魔法に似てます......しかしあちらの場合、世界樹事態が入ってくる者を判断して道を塞いだりしているのですが、私達はここに入って真っ直ぐ道なりを歩いてました、途中で曲がることなく......真っ直ぐ歩いているのにループするのは物理的におかしいです」

  

 「......クルッポー?」


 「要するに、あの超級魔法と一緒で私達の知ってる魔法の上位互換って事ですね」


 「......クルッポー」


 「少し、時間をください」


 そういって壁に手を当て目を閉じる。


 「......【マジックシーリング】」


 【マジックシーリング】はキールの装備に備え付けてある魔法で対象に触れると魔力の流れが見える。


 「......そこか」


 キールが手のひらサイズの小さな氷の剣を作りそれを暗闇に投げる......するとしばらくしてバリバリと空間に亀裂が入り鏡が砕けるように崩壊していき。


 「......クルッポー」

 

 周りの景色が変わった......暗闇だった道は両脇の松明に照らされ一本道の先には重たそうな黄金の扉が構えている。


 「さぁ。行きましょう。」


 「......クルッポー」


 キールがその扉を開けるとそこには


 「ようこそ、罪深き勇者と人間の騎士よ」


 【魔王】が待っていた。










 「せっかく招いてやったのだ、少し酒でも飲みながら話そうではないか」

 



























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 《別のピラミッド内部 アオイ》


 「いつまで続くんだー!この道は!」


 アオイがループしてることに気付くのはまだかかりそうだ......


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