第380話 消去法囮役
《町外れ レストラン前》
「じゃぁ、言ってくるね」
「はい、気を付けてください」
時刻は15時。
レストランもランチの時間が終わるギリギリで俺は一人でレストランのドアをくぐった。
「いらっしゃいませ」
「ごめんなさい、まだ開いてますか?」
「問題ありませんよ、どうぞお好きな席へ」
町外れ+ランチエンドと言うこともあってお客さんは俺以外誰もいない。
俺は一番窓際を選んだ......外では隠れてユキさん達が此方を見ている。
「メニューは此方になります」
「はい」
メニューを渡してくる店員は見た目や仕草は本当に普通で本当にこの人が魔族なのか怪しくなる。
「えーっと......」
え!?何気無しにメニュー見たけど《トライク》系統に《シアクエ》系統......さらにあの《タオツー》まで!品揃えやば!
うぅ、魔族の人じゃなければこんな穴場行きつけになるのに......って今はそんなときじゃない。
「じゃぁ《メルピグのブリンナー》と《タオツー》をください」
「おや?」
店員さんが何か反応した!もしかしてユキさん達のこと気付かれた!?
「なななな、なんでしょう?」
「いえ、少し前に同じものを頼んで飲んでいた方が居ましたからね」
「そ、そうですか奇遇ですねハハハ」
「そうですね、では少々お待ちください」
そういって店員は奥の部屋に入っていく......ふぅ、とりあえずバレては無さそうだ。
どこのおじさんか知らないが誰だ!まったく.....
ん?今ユキさんがくしゃみした?風邪かな?
一応顔を覚えられると嫌なので仮面は付けたままだ、このまま食事を行う。
来るまでに何か仕掛けを探さないと......
周りを見渡すと特に怪しいところはない。
机の下も特に......
イスのしたもない......うーん、やっぱり見えるところにはないな。
とりあえずユキさん達に首をふって特に外見異常が無いことをお知らせして伝えて座り直す。
後は食べ物や飲み物。
今回の作戦として俺は囮役だ。
前回ヒロユキが酔って眠っているところを狙われた、つまるところ食べ物に何か仕掛けがある可能性も捨てきれない......だけどここで問題が......
ヒロユキはともかく、キールさんもお酒が弱かった!
と言うか、唯一のユキさんはお酒のめるみたいだけど前回この店で飲んでるため顔を見せている。
なので、必然的に俺がこの役になったのだ。
と言うことで作戦その1、ここからライブラグスに行く所をみんなに見せるのが俺の役目。
相手から見れば周りに人は居なく、俺だけ。
絶好のカモだが、まだ追い討ちをかける。
「お待たせしました」
「わぁ、美味しそうですね」
「当店の料理はどれも一級品、高貴なお方も満足していただけますから、ではごゆっくりと」
「いただきます」
鉄板の上でまだジュウジュウといってるブリンナーが3つだけ......一見見ると色味がないが肉の焼ける香ばしい匂いとキラキラしてる油が俺の食欲をそそり唾液を出す。
フォークで刺すと皮をプツッと通してその穴をつたって肉汁がジュワワと溢れ出す......
「............あむっ」
それを口に持っていき噛むとパリッと音を立ててお手頃サイズのブリンナーが口の中で転がり味を出す......そのブリンナーを噛めば噛むほどたっぷり包まれていた肉汁ふきだし、スパイシーな味とボリューム満点な肉の味が舌を襲ってくる。
「......うま......」
そして飲み込み、まだ肉汁が残っている口の中にお酒を流し込む!
「くわぁぁ......」
効くぅ!
..................って!一人飲みを楽しんでる場合じゃなかった!
危ない危ない。
えーっと、食べ物は特に問題なさそうだしお酒も大丈夫みたい......これはもしかして警戒されて普通の料理を出されたかな?
仕方ない......作戦その2だ!いっちょ俺の芝居見せてやるぜ!
「ん!......ん......ぷはぁ!すみませーん」
俺は一気に酒を飲んで1杯あけて店員を呼ぶと奥から店員が此方にきた。
「はい」
「《タオツー》もう1杯ください」
「かしこまりました」
程なくしてお酒が来る。
「あ、ちょっとまっててくださいね!ん、ん......ん!おかわりください」
「......はい」
次はわざと店員の前で一気に飲み干してもう一杯持ってこさせる。
「どうぞ」
「ありがとう♪あ、また待っててください......ん......ん......おかわり!」
「..................はい」
さーって、もう三杯目でホロ酔いくらいになってきたぞ、そろそろかな?
「どうぞ」
「ありがとうございます♪」
よし!狙い通り、他にお客がいないから俺がまたおかわりすると思って近くにいるままだ!
「はぁ......冒険者になると決めたら家からは追い出され......それから冒険者でずっと頑張ってるけどなぁ」
作戦その2!俺を誘拐してもリスクが少ないと思わせる!酔ったふりで。
「ん......こうやってお酒を呑んでる時が一番だ、お酒が俺の恋人だなぁ、お前しかいない~本当に、友達もいないし親も失ったし、僕が死んでも誰も気付かないんだろうなぁ、ん......ん、おかわりお願いします~」
あれ?やべ、今一人称間違えたかな?まぁいいか。
「どうぞ。」
「どうも♪」
よし!ここだ!作戦その3酔いつぶれたフリ!
俺は一気に飲みほし。
「..................」
机につっぷした......例えるなら授業中に寝るあの体勢!さぁ、どうでる?
「お客様?」
「............」
「お客様、起きてください」
「............」
「お客様、大丈夫ですか?」
「............」
うーん、普通に何もないな、店員さんも俺を揺らして反応が無くて慌てて離れていったから店長でも出てくるのかな?
どうやら今回は失敗したか......あれ?眠くなって......き......た......
............
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます