第378話 ?年ぶりの再開
「スーハースーハースーハーなななななんなんですか!これ!本当に効いてるんですか!」
ユキは再びリラックス効果がある小瓶の蓋を開けて直で吸ってるが一向に落ち着く様子がない。
「どどどどどうしましょ、と、とりあえずお部屋を片付けて......あ!私の顔!大丈夫かな?」
すぐに洗面所に向かって鏡に写っている自分を見ると
「へ、へへ......」
自分ではどうしようもないくらい口元がニヤついていた。
「どうしよ、こんな顔で会えない!いーいーいーいぃぃぃたぁぁあい!」
置いてあった魔法使い帽子を顔まで深くかぶって勢いよく洗面所からでようとすると小指をドアの縁に当てて激痛が走りその場で転がる。
しかし逆にそれが少し冷静になれたみたいだ。
「しっかりしなさい自分!」
仰向けに転がって天井を見ながらパシパシと両頬を叩いて気付けをする。
「よひ!」
再び立ち上がり鏡を見ると口元のニヤけ具合は無くなっていた。
「こう言うときは落ち着いて一つずつです」
ユキは洗面所を出て部屋を見渡す。
部屋は少しだけ高いホテルの部屋でベッドが二つ置いてある。
「たまたまですが、この宿にして良かったです、安い宿だと話すスペースもないですからね」
ベッドの一つは先程眠らせた魔族が拘束されてるので状況も説明しないといけないだろう。
「一、この状況の説明。これは定まりました次は」
ユキは小瓶を机の上に置いて近くにあったイスに座り考える。
「次はヒロユキさんの事ですね、もしもジュンパクがあの人を連れてきたならあの日の事は話してると思いますが、きっとアヌビス族の事は知らないはずです」
ユキは一人言をぶつぶついいながら復唱する。
「一、この状況の説明。二、ヒロユキさんの説明、次は......」
ある程度頭も回転してきた所でタイムアップのベルがなった。
「き、きました......」
ユキの心臓の鼓動が早くなる。
「は、はいですー」
扉の前までゆっくりくる。
「すーはー......すーはー......」
ユキはゆっくりと鍵をあけ、ドアノブをひねりドアを開けた。
そして......
「すいません、ちょっとしたトラブルで遅くなっちゃって」
「っ!」
「?」
一本一本傷付いてないさらさらの綺麗な金髪の髪。
豊満な胸とは逆にスリムなお腹に肉つきのいいお尻と太もも。
シミや汚れもない白い肌に透き通るような青い目。
ユキは蛇ににらまれた蛙のように動かなくなってしまった。
「どうしました?ユキさん......だよね?」
「あ、ぅ......」
ユキはアオイを見て目頭が熱くなるのを感じてすぐさま帽子を深くかぶって顔を見せないようにしてドアから少し下がった。
「え!?あ!そう言うことか!すいません」
アオイは一枚の魔皮紙に魔力を通すと魔皮紙が形を変えて白い狐の仮面になりそれを顔に装着する。
「すいません、一応前に少し会ったことがあるから解りやすいようにここに来たときに仮面をしまってたんですけどやっぱり金髪に青い目はダメでしたね......は、はは......」
どことなくアオイは少し残念そうに苦笑いをする。
「ち、ちが......うぐ......ひっく......」
違うと否定したかったがユキはもう自分の感情が抑えられなくなっていて喋ろうとすると口元震えまともに言葉が出せなくなるくらいになっていた。
「本当に大丈夫ですか?」
流石に外の人に見られたらどうしたのかと言われかねないのでアオイは勝手に中に入ってドアを閉めた。
鍵を閉めていないのはアオイが逃げるためだろう、アオイは閉めただけでユキに近付こうとはしない。
「す......すすすこし...ま...待っててください......」
「は、はい」
ユキはそのままアオイに背を向けて部屋の奥に入ってアオイの見えない位置に行き座り込んだ。
「......うぐ......しっかり......私......まだ......ダメなのに......」
こぼれる涙を声を殺していっぱい出す。
「..................」
......
...
「よし......」
ユキはまた心を落ち着かせてアオイの所へ行く。
「すいません、少し取り乱してしまいました」
「いえいえ、僕も不注意でした」
不思議と仮面をつけてくれているおかげがアオイをまた見たときは落ち着いて話せるようになっていた。
「それでは部屋でゆっくり話しましょう」
「あ、えーっと......ですねぇ......」
「?」
「いえ、部屋より来てもらった方が早いかもしれません、馬車置き場に行けますか?」
「え、えぇ、大丈夫ですよ、それと」
「はい?」
「アオイさんは私より歳上なので敬語はやめてください」
「え?あ、はい、わかりま......わかった」
その声を聞いてユキは笑顔になる。
「はい!では行きましょう!」
ユキは距離をとって前を歩くアオイの後ろ姿を見ながら嬉嬉と付いていく。
「(これくらいのご褒美はいいですよね♪)」
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