第377話 予想してなかった来人
《ナルノ町、とある宿の一室》
「さぁ、そろそろ吐く気になりましたか?」
ナルノ町にある普通の宿の部屋の中で魔法で拘束した金髪のスレンダー女性に話しかける少女、ユキ。
「本当にしつこいわね、何も知らないし私はあそこで男の人とお酒を飲んでただけよ」
「普通の人は騙せても私は騙せませんよ」
「騙す?なんのこと?」
「はぁ......まぁいいです、えーっと、確かあれとあれとあれはいないから後は」
「?」
ユキは何かを思い出すように指をフリフリさせて
「【アリエス】【バルゴ】【レオ】【アクエリアス】」
「何を言って......」
「【リブラ】」
「っ!?」
「なるほど」
スレンダーな金髪の大人の女性は先ほどまでの余裕を無くしユキを睨み付ける。
「あなた、何者なの」
「私ですか?あなたの事を教えてくれれば答えてあげますよ、といっても、今ので大体解りましたが」
「......」
「その身体の持ち主は本来その姿じゃないんです」
「本来?」
「こっちの話です、それにしても上手く狙いましたね、まさか私が酔いつぶれてるヒロユキさんを置いて追いかけてるときにジュンパクの目を盗んで転移、そしてあの地域は時間の流れが確か違いましたよね、あちらでは時が経っていても此方では少ししか経っていない」
拘束されている女性......ユキちゃんの大人になった姿の身体を手にいれた魔族は息を飲む。
先ほどから話していることが一つも間違っていないのだ。
「。そこまで解ってるのに随分と気づくのが遅かったじゃない、あれから何日か経ってるけど?」
「私を舐めないでください、あなたとヒロユキさんが違うことなんて一目見たときから気づいてましたよ、ジュンパクは少し違和感を覚えながらも気付いてないみたいでしたが......あの子にももう少しヒロユキさんの素晴らしさを教え込まなきゃいけませんね」
最後の方は少し声を小さくして言った後、身体を乗っ取っている魔族に対して手の杖を向けて言う。
「私が気にしてたのはあなたとは違うもっと強い他の魔族の可能性があったからです、だから慎重に入念に準備をしてここで拘束してるんじゃないですか」
「私たち高貴なアヌビス族以上の魔族など存在しない!」
「残念ながら世界は広いんです、あなたみたいな下の下には解らない世界ですけどね」
「きさまぁぁあ!」
「相変わらずアヌビス族はこの手のちょうはつに弱いですね」
身体を乗っ取ってるアヌビス族の一人は血管が浮き出るほど激怒し腹をたて、そして
「その顔でそんな顔しないでください、シワが増えちゃうじゃないですが」
ユキが杖を使って魔法をかけるとそのまま相手は一瞬で眠った。
「それにしても【リブラ】......この魔皮紙は効きますね」
ユキはピンクの液が入ったガラスの小瓶に蓋をする。
液の中には小さく折り畳ませた魔皮紙が入ってる。
「人間の私たちが使うとリラックス効果があるのですがアヌビス族には逆効果......緊張感を高めてしまう......流石ですね、私の親友は......」
ユキはそう呟いて部屋に設置してあった魔皮紙や道具を次々と回収していく。
「でも今回がリブラで良かったです、もしも他のなら今ごろヒロユキさんは......」
ユキが最悪の場合を考えていたその時
「ふぁっ!?」
後ろからジリリリリリリと黒い魔電話が激しい音が鳴り出しユキは猫の様に驚く。
「もう!なんでまだ通信魔皮紙は軍事目的しか使われてないんですか!びっくりしますです!」
ガチャっと魔電話をとって出る。
「035室のユキさんでしょうか?」
「はい、なんでしょうか、チェックアウトは後一日残ってるはずですが」
「お連れ様がお見えですが」
「(連れ?ふむ......たまこさんやユキナですかね?それともジュンパク......)」
「名前は何と言っていますか?」
名前を聞くのは当たり前、いつかのヒロユキは名前を聞かずにユキをいれたがあれは今後しないようにユキは注意したが今回は名前を聞いたのがユキにとってこれ以上になく冷静さを失う結果になってしまった。
「はい、アオイさんと申しております」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます