第376話 久しぶりの《ナルノ町》
《ナルノ町》
「久しぶりに来たなぁ、ナルノ町......」
朝早くからギルドで手続きをして時間はまだ朝の7時だというのにミクラルの大きなギルドの建物の中は人がいっぱいいて喧騒が響いてる。
ちなみにミクラルのギルドの建物はどれも元居た世界の空港に似ている......あの金属探知機とかも魔法でチェックされて飛行機に乗るゲートをくぐると大型の転移魔法陣があってそこから順番に入っていく......後ろがつっかえないようにスムーディーに動かないとダメってやつ、例えるなら都会の電車の改札。
「アオイさん、私の近くを離れないでくださいね、ヒロユキ殿たちと合流します」
「はい。ってこっちの声もあんまり聞こえないのか」
俺はクローバー村から転移してきてすぐに気配遮断ローブを被っている。
これは元々キールさん達に山亀から救いだしてもらった際、ひょんなことから貸して貰っていたものでそれを思い出して返そうとしたがどうやら今回もこれにお世話になるみたいだ。
と言うのも。
「(本当にまったく金髪の人がいなくなってる)」
キールさんの後を付いていきながらチラチラと通りすぎていく人を見るが赤や青、黒、茶髪や紫などの髪色の人は居てもただ一人も金髪がいない。
俺も冒険者だから他の冒険者から噂には聞いてたけどどうやら『あの事件』以来、この町では金髪や青い目はものすごく疎まれるというか何というか......上手く言い表せないけどなんか悪いらしい......最悪の場合そこら辺の見ず知らずの人に石投げられたりとか......
「(目は仮面つけてるから何とかなるけどこの髪がどうにもこうにもならなかったんだよなぁ)」
髪に関しては魔法で染めてもすぐにもどるしカツラを被っても魔法で固定できないのですぐに落ちる......カツラに関してはこの世界は禿げても魔法治療でなんとかなるのでそんなに技術が進んでない、あることにはあるけど骨董品というか絶滅器具というか......探すのにも苦労したのに......
この気配遮断ローブ......仲間にも解らなくなるのが欠点で周りに人が居ればいるほど効力を増すのだ。
先ほどの了解の返答も魔法が働いて喧騒の一部として捉えられてるはずだ。
「確かヒロユキ殿たちはAー1コンテナに......」
ちなみに何故いま二人だけかと言うと単純にこの町に転移するのに魔物は家畜として別ルートで転移されるからだ。
ヒロユキの身体、ヌルスもヒロユキに巻き付かせて羽毛と擬態させそちらのルートで送ってもらってる......え?どうやって擬態させたか?うーん、どうしようか困ってたら出来た!本当に優秀な【糸』だよこれ!
「ここか」
そう言うことでそのコンテナまで転移出来る部屋の前まで来てキールさんがギルドカードをドアの横についてる認識装置にかざすとドアが開いて転移魔法陣の部屋に入っていった。
「じゃ、俺も失礼してっと」
気配遮断ローブを一瞬脱いですぐにギルドカードをかざして俺も転移する。
その一瞬で俺の姿を確認した近くにいた人たちが居たがもうそこに俺はいないし、どうせ赤の他人だからこれから先会うこともないから気にしナーい。
そのままコンテナの場所まで転移した。
転移した先は文字通り大きなコンテナがおいてある場所で中に様々な家畜の魔物が転移させられてるのだろう、人もこの時間だからいないので気配遮断ローブは無くて良さそうだ。
「はぐれてなくて良かった、アオイさん此方です」
「はい!」
待っててくれたキールさんについていって目的のコンテナの前まで来る。
「私は例の準備をするので先に出ときますね」
「了解です」
そういってキールさんはコンテナ置き場から出ていった。
Aー1と書かれてるコンテナのドアを開けると中は藁がしかれて水のみ場があるだけで、そこにアールラビッツのあーたん、ベルドリのヒロユキとユキちゃんがいた。
「みんな待たせたね」
「くぁ!」
「......クルッポー」
「はーい!」
「みんな大丈夫みたいだね?さ、みんなこっちだよ」
「くぁ!くぁ♪」
「フフッ、ユキちゃんも元気だねぇ」
くっついてくるユキちゃんと一緒にコンテナ置き場を出るとキールさんがちょうど来た、どうやら目的のものがあったみたいだ。
「あちらにレンタルした馬車が約束通り置いてました、それを使って行こう」
「はい、でも本当に大丈夫?二人とも」
「......クルッポー」
「はい!だいじょーぶー!」
このナルノ町の一般歩行道路で魔物を連れてる人はいない、居るとして小さなペットなどの魔物の散歩くらいだ、なのでこの馬車で俺たちはこれから移動することになる。
馬車を引くのはヒロユキとあーたんだ。
「じゃぁお願いするね」
「くぁ!」
「ヒロユキ殿、あーたん何かあったらすぐに合図を」
「......クルッポー」
馬車に三人乗った事を確認するとヒロユキ達は発進して馬車が動き出す。
「くぁー♪くぁくぁー」
相変わらずユキちゃんは俺にべったりだがキールさんに見向きもしない。
「よしよし、いいこいいこ」
「くぁ!」
「ところでアオイさん、少し相談があるのですが」
「?、なんでしょうか?」
「昨日話し合った予定には無かったことですが一つやりたいことがありまして」
「いいですよ、此方も無理やり頼んだ身ですから、やりたいことってちなみになんですか?」
「ミクラルの友人にこの【手紙』を出したいんですよ」
キールさんは何の変哲もない魔皮紙の紙を取り出す。
「あれ?ギルドで渡せばよかったんじゃ......」
「いえ、急用でして、もちろんその時にその人が居たらそのまま話すつもりですがもしも居なかったらと思い置き手紙を書きました」
なるほど、確かに昨日俺が無理にパーティーに来るように頼んだ、キールさんからしたら予定があったのを全部キャンセルしないといけないから色々あるのだろう。
「はい、大丈夫です、途中で降りますか?」
「取り敢えず目的の所まで行ってそれから少し時間をもらいます、なるべくすぐに終わらせるのでそこで待っててください」
「了解です」
「ではそろそろ人も多いところになるので私は御者のフリをしますので二人でゆっくりと」
「解りました」
そういってキールさんは後ろの小さなドアをあけて馬車の操縦者のフリをしにいった。
「ほんとだ、もうこんなに......」
「くぁー」
そんな話をしていたら馬車の外はいつの間にか歩行者がいっぱいで町中に来ていた。
「......」
そして俺が目につくのは歩行者に混じってる奴隷達......
ここミクラルは人が多いのもあるだろうが奴隷が多い気がする。
「思い出しちゃうな......あの時を」
いつの間にか消えている奴隷番号があった場所を触ると自分の胸とは思えない不快な柔らかい感覚が指先から伝わってくる。
「くぁ?」
「うん、大丈夫!いま思えばそう言うことがあったからユキちゃん達に出会えた訳だしね!」
「く?」
「なんでもないよ♪ほれほれほれ」
「くぁくー♪」
心配そうなユキちゃんを手で撫でまくると気持ち良さそうに鳴く。
「さて、じゃぁ会いに行こうか」
「くぁ!」
「もう一人、君と同じ名前のユキさんにね♪」
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