第371話 家の主

 《クローバー村》


 「よし、着いたね!」


 「くぁ!」


 「......クルッポー」


 「着いたぁ!」


 《ようこそ!クローバー村へ!》って書いてある看板の前でギルドの馬車から降りる。

 あの後、俺が【SOS魔皮紙】を使ってギルドに迎えに来て貰い、「本当は魔物は乗せれないが嬢ちゃん可愛いから今回は特別だ」と嬉しいような微妙な気持ちになりながらもお言葉に甘えて乗せてもらってきた......ちなみにだが【糸』の転移は自らが意識しても出せなくて本当に時々でるのだ、だから某国民的アニメの青いタヌキが出す○でもドアみたいには行かない。


 そして馬車の中で大体の話を聞いた......まぁ、ヒロユキ本人もこうなった原因は良くわかって無いみたいだが、【メイト】と言う魔王の仕業なのは間違いないみたいだ。

 またちなみにだがヒロユキの身体はぐるぐる巻きにしたのをヒロユキ自身が背中にくくりつけてる。


 「蟻がなんかの幼虫運ぶときこんな感じだよな......」


 「くぁ?」


 「何でもないよ、気にしないでー」


 俺がボソッと呟くと近くに居たピンクのベルドリのユキちゃんが鳴いた。


 いやほんとこれにはビックリした......その......なんだ、「強くなって迎えに行く」って言って何年も経ってるわけでしょ?それと俺の中の【女性恐怖症』がユキちゃんに発動したらどうしよって気持ちも相まって会いに行く勇気が出てなかったがこんなところで再開なんて......


 「くぁ!」


 「フフッ、そんなにくっついたら歩きにくいよ?」


 「くぁーくぁ!」


 まぁ、相手がベルドリだから発動してないのかな?それが不幸中の幸いだ。

 ユキちゃんについては謎だ、気がついたらヒロユキと同じ所に居て迷っていたと言ってたが、あーたんが言うには何か隠してそうと言っていた......追求はやめとこう、言ってくれるまで待つ。

 

 「さて、と、まず宿を探さないと」


 取り敢えずヒロユキが回復できる宿を探すことにした、もしもヒロユキの言ってることが本当ならミクラルでウロウロするのは危険と判断したのだ......聞いた話によるとヒロユキとこのベルドリは魂が入れ換わっているらしいのでもしかしたらミクラルの人間も何人か魔族で......そこから先は考えるのはやめとこう......


 クローバー村は山の中にある大きな村で、一つ一つの建物はコテージだ、今は気温も暖かい時期なのでそこまでだが冬はかなり雪が積もっているらしい。


 クローバー村の中をみんなで歩き進める......端から見るとベルドリ二匹とアールラビッツ一匹を連れて歩いてる仮面つけた変な人だ......濃いなぁ。


 20分くらい歩いたところにギルドマークの看板がある建物を見つけた。


 「三人とも、ちょっと宿がないか聞いてくるから待っててね」


 「くぁ!」


 「......クルッポー」


 「はーい」


 俺は三人を待たせてギルドへ入る........................あるかな?ペットOKな宿............


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「あってよかったぁ!」


 ギルドで宿の情報を聞いて歩くこと30分......ようやくついた宿のベッドに横になる。

 宿、と言っても小さなバンガローで例えるならあれだあれ、キャンプ場とかの木の家。


 「くぁー!」


 ピンクのベルドリが俺の横に来る。

 

 「疲れたね、よしよし」


 「くぁ!くぁー!」

 

 ピンクのベルドリ......ユキちゃんは撫でるとすごく嬉しがる。

 

 「......クルッポー」


 「あ、ヒロユキ君はそこのベッドに?」


 「......クルッポー」


 「?」


 「「お前はいいのか?」だってー?」


 あーたんがヒロユキが言うことを通訳してくれた。

 ふむ......いいのか?、いいのか?とは?


 「何が?」


 「......クルッポー」


 「「俺だけ男だから毛布だけあれば外で寝る」だってー」


 あぁ、なるほど、よくよく考えたら俺とユキちゃんとあーたんは女でヒロユキだけ男だったからそれを気にしてるのか。

 うーん、俺は男なんだけどなぁ......と言うかお前の兄だぞ、実の弟に気を使わせるのもなんか気持ち悪いし......


 「いや、僕は気にしないよ?他のみんなは?」


 「くぁーくぁー」


 「あーたんも気にしないよー」


 「てことで、病人は中でゆっくり休んでなよ?むしろこの一日で治してもらって、明日にはミクラルにいこうと思うんだけど......そこら辺の話し合いも取り敢えず夜だね」


 俺はベッドから立ち上がり部屋の中を見る。

 この宿は必要最低限の物はあるがそれ以外が全くないのだ、冷蔵庫も無いところを見ると食べ物も買いに行くしかない。

 それこそ、怪我をしてる人?魔物?が居るから揃えるものは揃えとかないと......


 「うーん、取り敢えず僕は買い物いってくるね?みんなはここに」

 

 「くぁ!くぁ!」


 「ん?ユキちゃん?」


 「くぁー!くぁ!」


 「一緒に行きたいの?」


 「くぁ!」


 「うーん、解った、じゃぁついてきてもらおうかな?」


 「くぁー!」


 「あーちゃんはここでヒロユキ君を見ていて欲しいんだけどいいかな?」

 

 「うん!わかりましたー!」


 「......クルッポー」


 「じゃ、行ってきます」


 「くぁーぁ」


 二人で宿のドアを閉めて市場がないか歩き回る。


 「くぁー」


 「無いねぇ、お買い物するとこ」


 歩いても歩いても宿しか見えない。

 これはまた30分かけてギルドの近くに戻った方がいいかな?ギルドでは冒険者が依頼を受けてそのまま買い物をする人が多い、なので必然的にギルドの周りには多種多様の店が多いのだ。


 「仕方ない、じゃぁ引き返して......ユキちゃん?」


 「......」


 ユキちゃんに声をかけようと振り向くとユキちゃんはその場で止まって真っ直ぐと、一個の家を見ていた。

 外見は他のコテージと同じで特にこれと言って特徴もないのだが......


 「どうしたの?」


 「くぁ......」


 「あの家が何か気になる?」


 「くぁ」


 「行ってみよっか」


 別に急ぐ用事もないし、ユキちゃんと一緒にその家の前まで歩いていく......家の持ち主は出かけてるみたいで特に人の気配はないのだが。


 「......」


 「?」


 ユキちゃんはそのまま家の中を窓から覗きに行った。


 「どうしたんだろ......」


 ユキちゃんを見てると後ろから聞き覚えのある男の人の声がした


 「誰だ?私の家に何か用か?」


 「?、あ!」


 「?」


 振り返るとそこに居たのは銀髪の長い髪でリュウト君のカラーと違う全体的が黒で黄色のラインの服を着た。









 「キールさん!」












 

 グリード代表騎士の【キール】が居た。


 

 

 


 

 

 

 


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る