第370話 ギリギリ間に合った
一緒に来たアールラビッツのあーたんことあーちゃんが蹴り飛ばした冒険者が宙を舞う......あれ?なんかこれデジャブ?
「着地は任せて!○ーチャー!」
某アニメの名言をいじりながら俺は【糸』を出して空中にネットのイメージをするとその通りに糸がなって蹴り飛ばされた冒険者がそのネットで衝撃が吸収された後糸が消えて地面に着地した......大切なのはイメージだってね!
「な、何が起こったんだ!?」
「ごめんなさい、こうしないともう止まらなさそうだったから......」
「てめぇの仕業か!この仮面女が!殺してやる!」
やべ!めっちゃ怒ってる!
「あーちゃん!」
「はいー!」
「ぐへっ!」
俺にかかってきた冒険者はあーちゃんから横に蹴り飛ばされて転がっていった......すまん、俺が悪いんだろうけど本当に殺してきそうだったから正当防衛ってことで!
「くぁ!くぁくぁ!くぁ!」
「......」
ベルドリの二人がこっちを向いて鳴いている。
「うん!事情は解ってるよ!」
「くぁ!?」
「......クルッポー」
あれ?ヒロユキ以外にももう一人?一匹?まぁいいか、俺は黒いベルドリを治療しようと近付くが、やはり警戒心がない。
野生のベルドリなら人間を怖がって逃げたり抵抗するはずだ、例えるなら田舎の鳩くらい警戒心が強い。
「ちょっと我慢してね」
俺が回復系魔皮紙をとりだして矢を引き抜こうとするとめんどくさいことに冒険者二人がやんややんや言ってきた......あぁもう、うるさい!
俺が【例のアレ』をするために仮面を取って素顔を晒すと
「お、おぅ......」
あれ?まだ魔法をかけてないが見るからに男性冒険者のさっきまでの勢いが無くなって......しおれたと言うか腑抜けたと言うか......
「ちょっとアンタ!?どうしたのよ!?」
「理由を聞こうか、お嬢さん」
「アンタ!?」
お?何か解らんが話しても解らないって感じじゃなさそうだな。
「このベルドリ達は僕の小さい頃からのペットなんです、昨日はぐれてしまって夜も眠れずやっと見つけたら......」
俺は何となく思い付いた嘘で演技を挟みながら誤魔化すと
「そうだったのか......それは......すまなかったな」
手応えあり!よっしゃぁ!あのクソ気持ち悪い魔法を使わなくてすむ。
そういえば、冒険者が居るってことはここから近くに町か村があるのだろうか?
「いえ、私も目を離したのが原因、それよりあなた達は何かの依頼を受けてたんですよね?ここからだとどこが一番近いんですか?」
「?、俺達はこの近くの《クローバー村》の依頼をしてたんだが......そこ出身じゃないのか?」
あ、やべ、変な嘘ついたからバレそうってかそれどころじゃないって!
「......クルッポー......」
「そ、その話は後でお願いします!早くこの子を治療しないと!」
「お、おう」
「ちょっとアンタ!それは言いとして私達も早くしないと」
「そ、そうだな俺達はここで」
「はい、またどこかで」
何となく男冒険者の連れの女冒険者も分かってくれたみたいだ、と言うかお互い話す時間が惜しいのだろう......矢を刺してしまった罪悪感もあるのか冒険者の二人はそそくさと森の中に消えていった。
「ごめんね、待たせたね」
「......」
奥まで刺さってるな......矢の先にはつっかえがついてるから絶対に抜くとき痛いだろうな......あれでしょ?手に魚釣りの針が刺さったときみたいな面倒ささ。
「ふぅ......頼みました先生」
先生こと【糸』を出すと傷口から黒ベルドリの身体の中に入っていきゆっくり矢が出てきてカランカランと地面に落ちた。
「あとはここに......これをこう」
矢が抜けたことで血が出てきた箇所に魔皮紙を被せて魔力を通すと血が止まって次第に黒ベルドリの顔も少し良くなってきた......こんなときのために緊急用に高級な治癒魔皮紙一枚買っててよかったぁ......
「くぁ......」
あーたんから掘ってもらって罠を脱出した土まみれのピンクベルドリが心配そうに黒ベルドリにスリスリしてる、今にも泣き出しそうだ......きっとこの子も元は人間だったのだろう。
こいつが女の子なら罪な奴だな我が弟は......
「くぁ!くぁー!くぁー!」
「ん?」
なんかピンクベルドリが必死に俺に何か言ってくる。
フフッ、だがこんなときのために連れてきてたのだ......最強の助っ人を!
「あーたん、何て言ってるの?」
リュウト君に聞いた話ではあーたんは魔物の言葉が解るらしいのでな!
「えとねー!お兄さんは大丈夫なのか?って」
お兄さん?こいつが?アイツこの世界で妹でも作ったのかな?
「うん、大丈夫だよ、危なかったけどどこかでゆっくり休めば元気になるよ!安心して?」
「くぁ!くぁ~♪」
「ありがとうだってー!」
スリスリと俺にすり寄ってくるピンクベルドリ......ふふ、可愛いな、この感触......ヒロスケを思い出すな。
「どういたしまして♪」
「くぁ!くぁ♪」
「んー?♪」
しかし、俺は次の言葉に驚愕した......まさかこんな形で再開することになるとは......
「流石おかぁさん!だって!」
「え?」
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