第343話 獣のウワサ 六
《うまかっちん二号店》
「うぃーっす、大将あいてる?」
「らっしゃい、あいてるよ、好きなとこ座んな」
「お、いいね、じゃぁいつものアレと《ルグランサ》で!」
「あいよ、《べるどりの唐揚げ》ね」
「それそれ~そういや、大将の師匠まだあんな小さな小屋の居酒屋で?」
「あぁ、古き良きって奴だ」
「大将の料理がこんなにうめーのにその師匠はどんだけ化け物なんだろうな!ガッハッハッハ、行ってみてーけど毎日毎日行列が出来てて朝早くから並んでても朝飯が昼飯になっちまうって噂だ、でもみんなやっぱり食いてーんだろうな!《元祖ベルドリの唐揚げ》を!」
「あぁ、師匠の唐揚げは俺よりめちゃくちゃ旨い、だけどまだ師匠は「あの味にならない」って言って研究をしてるみたいだ」
「すっげぇな、てーとあれか?その師匠はそれ以上のもん食ったってことか?上には上がいるもんだねぇ」
「その下の下が作った《ベルドリの唐揚げ》と《ルグランサ》お待ち」
「なにへそ曲げてんだよ、俺は大将の作った唐揚げが一番旨いとおもって来てんだ、師匠のも食ってみてーけどこれがお袋?いや!大将の味ってやつだ!いただきます!」
「泣けること言ってくれんじゃねーか、で?どうだ?あんちゃんの一番の味は?」
「さいっこぅだぜ!カリッと行くと中からフワッと肉汁が出て舌に染み込んで来やがる!そしてこれよ!《ルグランサ》!ん......ぷはぁ!うめぇ!これってあれだろ?《グリード王国》で作られてる酒だろ?」
「あぁ、なんでもグリードの《クローバー村》ってとこの名物らしい、
「解ってる解ってるって!ん......ん......ふはぁ~さいっこうだねぇ、それもこれも
「そうだな、時代は進化するもんだ」
「そういや大将、最近のなんか噂とかないのか?」
「噂?噂か......そう言えば最近そういうのが好きな客が二人来てな小耳に挟んだんだが、最近じゃ【人魚】が出るらしいぞ?」
「ほー?そういうアヤカシじゃなくて?」
「あぁ、足がないらしくてな身体の半分がヒレと鱗がついてて上半身は人間らしい、それがアバレーの【水があるところ】に突然現れて獣人も人間を引きずりこんでどっかに消えるらしい」
「おーこわこわ、水があるところってどこでもか?風呂とかも?」
「らしいぞ?流石に入ってるときは出てこないらしいが夜寝ていたら水をためていた風呂から音がして気になって見に行くと居たらしい」
「はー......こわいねぇ、もう水場には近寄れねぇなぁ」
「ま、噂だからな、ほらあんちゃん、唐揚げ一個サービスだ」
「お!やったぜ!大将気前がいいね!」
「何しろ、あんちゃんにとっての一番だからな」
「流石だぜぇ、そういや、思い出した、俺も一個とっておきの噂があるんだその名も「謎の仮面冒険者」」
「なんだそれは?」
「最近冒険者の間で噂なんだよ、安い魔法使いのローブ装備をした金髪で変な仮面をつけた女の獣人冒険者なんだけどな」
「ほう?」
「そいつはギルドに来て毎回どっかの男だけのパーティーに付いていくんだよ、噂じゃアヤカシを倒せないらしい」
「アヤカシを倒せないのに冒険者なったら足手まといだろ」
「そうなんだよ、最初はみんな当然いれなかったんだが、一人が「素顔を見せなくて使えない奴を連れていく奴がいるか?」って言ったらそいつは仮面をとって顔を見せたのさ、そしたらそのパーティーはすぐに意見を変えてつれていった」
「素顔がどうなんだろうな?」
「それが見た奴は見たはずなのによく思い出せないって言うんだ、んでここからよ......そいつが来てから何回かみんな連れていって気づいたことがあってな?」
「気づいたこと?」
「そう......そいつを連れていくと絶対にどんな依頼でもクリア出来ちゃうんだ、それもほとんど無傷で」
「ほー、そりゃすごいな」
「ま、そいつはゴールドの冒険者だからもっと難しいのではどうなるか解んないけどな、ただ、今やそれが噂に噂を呼んでそいつは引っ張りだこ、仮面をとらなくても是非来てくれって人が後をたたないみたいだ」
「色んな噂もあるもんだ、おっとあんちゃんそろそろ悪いな、他の客も来てくれだしたみたいだ、らっしゃーい」
「あいよ、俺もゆっくり飲むぜ」
「そういや、最後に聞いていいか?」
「ん?大将から俺に聞くなんて珍しい、なんだい?」
「その仮面女はどこのギルドに来るんだ?」
「お、気になんのか大将、確か人間嫌いが多い《二突き》のギルドにくるらしいぜ」
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