第339話 魔王の存在

 転移!?

 しかもあの魔法陣......元々用意されたものじゃなくて個人の魔力で発動させたと言うの!?


 転移した先は壁も床も天井も白く光っていてドアもイスも机もないただの空間!そして......


 「お主は!?」


 「どういうことだ!?」


 「!....................................お父......様?」


 「久しぶりだな......サクラよ」


 どうして!?どうしてカバルト国王......お父様がここに居るの!?私の頭はさっきからフル回転していて知恵熱さえでている。


 「カバルトおおぉ!」

  

 「アレン国王!」


 アレン国王はカバルトを見ると筋肉質の若い男に変身して私にしたように胸ぐらを掴む。

 変身したからと筋肉量などが変わるわけではないが、元がどれくらいか謎なのでこれが本当の姿かもしれない。


 「貴様!わかっているのか!【勇者召喚】!を行う意味を!」


 「......」


 お父様は喋らない。

 アレン国王はその儀式を行って勇者が召喚されたかもしらない、だが、その儀式事態が私がした『女神降臨』と同じく禁止されている儀式なのだ。


 「貴様まさか自分の娘の命大事に勇者を!?」


 ......え?


 「......」


 「どういうことですか!お父様!」


 「......」


 「答えて!」


 「落ち着くんじゃ、そやつには後でたっぷりと吐いてもらう......じゃが、妾達の情報をまずは合わせないと話にならん、隣を失礼するぞよ小娘、よいしょっと」


 愛染の女王は立てない私の横に座って二人を見上げる。


 「どうした?ソナタ達も座るとどうじゃ?国王で地べたに座ることなどここでしか味わえぬぞ?もっとも、グリードではこの小娘が今の国王じゃが」


 「......チッ」


 アレン国王もお父様を離してその場で座る。


 「貴様も座れ」


 「......」


 お父様も座り、これで国王三人と元国王が地べたに座ると言うなんともおかしな状況になった......まぁ、私は立てないのだけど。


 「さて、まずは小娘に引き継ぎじゃ、カバルトよ......お前が話せ、妾達は嘘がないか聞いておるし後で何を聞かれても正直にこたえい」


 「......娘よ......」


 奇妙なものだ、私の手で殺したお父様は怒りも何もなくいつものお父様の顔で普通に話してくる。

 これは本物なのか?


 「はい、お父様」


 「今から言うことは真実じゃ」


 「はい。」


 「まず、お前は魔王と言うのはどう思っている?」


 「魔王......いくつかの説がありますが、決まってどれも【勇者】や【神】が封印して今もどこかで封印されてるとか......それと確か魔物の王で全ての魔物を操ることが出来る、そして魔王の魔力は個人で私達の国を一つ消し飛ばせるほどの魔力を持っていると言われているとかですね?」


 「そうだ。そしてそれは我ら国王が先祖代々情報操作をして隠していた嘘の情報がひとつある。」


 「う、嘘の?」


 次のお父様の言葉は私の人生の価値観を変えるような一言だった。


 「魔王は大昔から封印されてなどおらん、魔王......いや、魔王様達は大昔から我々人間を管理してくださってるのだ」


 「っ!!??!!??」


 管理......確かあの時......あの男は国を管理していた【ジェミニ】というものが死んだと......まさかそれが魔王!?

 ま、待って......「達」!?お父様は複数系で言った、つまり......


 「ま、魔王は一人じゃ、ない?」


 「そうだ」


 !!!!!!!!!!!!

 身体に電が落ちてきたように電撃が走る感覚がする。

 脳が一瞬停電した様に真っ白になる。


 「ヒュッ......ヒュッ......」 


 「ほう?こやつ息の仕方を忘れるくらいの衝撃だったらしいのぅ」


 「落ち着け娘よ......」


 落ち着いて、落ち着いて......私の身体......

 さっきの男の言ってた事......「根本を理解していない」とはこの事だったのだ。 


 「だ、大丈夫ですお父様......続けてください」

 

 「あの部屋の青い球体は見たな?」


 青い球体、先程の部屋で見た大きな球体だろう。


 「はい」


 「あれはこの世界の形だ」


 「世界の......?」


 どういうこと?世界の?


 「あの球体はな、この世界の土地、海、森......そして領土、全てが書かれてある世界地図だ」


 「え!?」


 「そしてこの世界にはもう我ら人間の領土などない」


 「ど、どういうことですか!それじゃぁ冒険者の《開拓》などは!」


 「どうしてランクが上の冒険者が少ないと思う?《開拓》などで真実を知った冒険者はな、魔王様や魔王様の民に餌にされていたのだ」


 「そ、そんな......」


 「人間の力なぞ魔王様達にとっては小さなもの、だからこそ魔王様に逆らってはいけない」


 「............」


 絶望で言葉を失う。

 つまり、私達はどこまで行っても魔王に支配され続ける......いや、今も支配され続けてるのだ。


 「え、餌とは?」


 「それは......」


 お父様は言うのをためらったので愛染の女王が口を開く。

 

 「魔王様達の民......魔族の話になるんじゃ」


 「魔族?」


 「そう......魔族じゃ」


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