第338話 【魔神】
国王が三人、土下座をする形で一人の男にひれ伏している。
これはあり得るのか、人間としての最上位の地位の持ち主が......
そしてその男はあろうことかそのうちの一人。
愛染の女王の赤く長い髪の毛を鷲掴む......そして
「......‘貴様の国を管理していた’【ジェミニ】が死んだ、これはどういう意味か貴様には分かるだろう?」
「な、なんと!?」
男は愛染の女王の口に指を入れる。
「俺は二度は言わん、それ以上俺が求める言葉以外を吐くなら貴様のこの口、俺が直々に引き裂いてやってもいいんだぞ?」
「ひゅ、ひゅいまへん......」
愛染の女王は普段とはまるで別人のように涙を流し謝る。
サクラ女王は何が起こっているのか解らなかった。
《王国会議》、国の今後の為、各国で話し合い、新しい法律や新種の魔物の情報共有ではなかったのか......
そして何より
「(管理?......まさか)」
今男は「国を管理」と言ったのだ、それは【ジェミニ】という何かが管理していたということになる。
そしてそれはアバレーだけではないのだろう。
「そして、【スコーピオ】は連絡が途絶えた、貴様はそれを知っているか?小僧」
「は、はい!私も連絡を試みたのですが連絡が出来ず、何が起こっているか分かりません」
「......そうか、素直にそう言えばわかりやすい、肝心なのは行動したかどうかだ、猫の小娘よ、出し抜かれたなぁ」
「......」
その男は立ち上がり球体の回りをくるくるとゆっくりと歩きながら話す。
「人間というのは実に愚かな生物だ、お前たちの遠い遠い祖先がやっとの思いで手に入れた自由を自らの手で壊す程の愚かさ」
「「「......」」」
「そこの出来損ない、立て」
サクラ女王は命令されるが立たない、いや、立てないのだ。
「どうした?立て」
「......私は病で立てません......」
「そんなことは理由にならない」
「......」
サクラ女王は頑張って立とうとするがやはり下半身の感覚がなく立てずにもがいていた。
それを見て
「いいか?貴様らの祖先はそういうどうしようもない滅び行く所をなんとかしたのだ、仮に今お前が立ったとしても俺がその瞬間に貴様の足を切り落とす。お前たちの作った状況とはそう言うものだ小僧ども」
「......」
「出来損ないの小娘よ、根本を理解していないようだな......クククハハハハ!それもそうだ、自らの父を殺し、何も知らずに人間の王になったのだからな!」
「どうしてそれを!?」
「......」
「なんだと!?サクラ女王それはどういうことかね!」
「ほーう?どうやら、知らなかったのはミクラルの小僧......お前だけのようだな」
「!!!」
「猫の小娘、なぜお前は知っている?」
「......妾はそこのグリード女王と影で情報を共有し、クーデターの手伝いをした」
「な!?」
アレン国王は今、カバルト王が死んだ理由を知った......世間ではその死は隠されていたが隠されていた意味もこれだったのだ。
「猫の小娘よ、ではお前は何を話して何をしたのだ?ことと次第によってはこの場で死刑だ」
男はガラスの玉を足で蹴って土下座しながら話している愛染の女王の頭に当てる。
「それに魔力を流しながら話せ」
「はい......」
愛染の女王は頭にあたったガラス玉を隣へ持ってきて手を添えてまた土下座しながら話す。
まだ、三人が頭をあげることは許されていない。
「王国会議で、妙な質問をしてきたのでそれに答えただけで以前の会議の内容にはまったく当てはまりません。」
「なんと質問をしてきた?」
「......「魔王が動き出したのは本当か?」と......」
「ハッ!クククハハハハハハハハ!」
男は大笑いする。
「傑作だな!......いや、そこはお前たちを褒めるべきか、身内にもまったく真実を話していないみたいだな、褒める!」
男はサクラ女王の前に行き足を背中にのせて踏みつけた。
「っ!」
「出来損ないの人間よ、無知とは恐ろしいものだな?何も知らないが故に間違っている行動をしてもそれが正しいと思い死んでいく、猫の小娘よ、それからどうした?他のことは答えたのか?」
「会議の内容を聞かれたので妾は適当に新種のアヤカシの名前や国民がどうなっているかなど適当に答えていました」
ガラス玉は光っていない。
「よろしい、それで、この出来損ないで無知の愚か者の何を手伝った?」
「......国の代表騎士を手玉に取るため、その娘を妾の国で確保していて欲しいと」
「愚かさも極まっているなんとゲスな奴よ、本人に敵わないからとその身内を狙う......人間の愚かさは本当に度しがたい......さて、では本題だ......他にこの出来損ないは何を言っていた」
「..........................................................................................................................................................................................................................................カ、カバルト国王が..........................................【勇者召喚】の準備をしていると............」
「!!!!!!、何をしているのだ!グリードぉ!」
その言葉を聞いてアレン国王は耐えきれずに土下座を解いて隣の土下座しているサクラ女王を起こし胸ぐらを掴む。
「何をしたかわかっているのか!!!」
「落ち着いてください、アレン国王、私はそれを止めるために愛染の女王様と手を組んでクーデターを起こしたのです」
「っ!」
「どうでもいいが、俺はまだ頭をあげていいと......言っていないが?」
「し、失礼しました!」
「......」
「フン......出来損ないと、小娘小僧よ、まずは貴様達の情報を合わせるとする」
男は歩いてイスに座る。
「貴様達をしばし、見物するとしよう」
男が指を鳴らすと土下座している三人の下に転移魔法陣が浮かび上がり転移する。
誰も居なくなったその部屋で魔神の男は呟く......
「ついにこの日が来てしまいました......【 】さん......」
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