第337話 どういうこと?

 「まったく......この建物......バリアフリーがなってないわね」


 長く続いた螺旋階段......休憩や文字通り血反吐吐きながら車イスでやっとのぼりきった先には普通の小さなドアがあった。


 「......」


 そのドアノブを少し前屈みになってあけ中に入ると


 「......なに、これ」


 中には青い大きな球体が浮いていてそれを囲うように机があり、イスが......


 「12個?」


 まるで私たちの他に誰かがくるような......


 「遅かったですな、サクラ女王」


 「アレン国王?」


 入った扉の横にミクラルの国王、アレンが居た。

 今回は白い髭を生やしてしわくちゃの老人になっている、そしてその横にはアバレーの女王がいた。


 「此方で妾達は待つんじゃ」


 「愛染の女王様......お初にお目にかかります」


 「ぬかせ、何が初じゃ、妾とお主は......」


 「私が《女王》になってからはお初です」


 「ふん」


 私もお二方の国王が立っている隣に車イスを移動させる。


 「......」


 「......」

 

 「......」


 ?、おかしい、本来なら私達が揃えばそれで充分のはずだ......だけどみんな黙っている。

 【まるで誰かを待つように】


 「あの......」


 私が話を切り出そうとしたがそれはアバレーの女王。愛染の女王に止められた。


 「黙っておれ、妾達は必要最低限の会話しか出来ぬ、もっとも、お主は何も知らないじゃろうが」


 「サクラ女王、あなたはカバルト国王から何も聞いていないのですか?」


 「......はい」


 「ふむ、おかしいですな、この事は継ぐときには絶対に話しておくことだが......」


 あんな最後にしてしまったから何も聞き出せていない......私はそのまま黙って時を待った。


 そして......

 

 「!?」


 「貴様らがどれだけ待っても他の奴は来ないぞ、人間ども」


 いつのまに!?

 

 12個あるうちの一番手前......私達がさっきから見ていた場所に突然、まるでさっきから居たかのように黄金と紫の鎧に金髪で色白の男がつまらなさそうに此方を見ていた。


 「......」


 「貴様、俺を前にして良く頭をあげていられるな」


 「っ!?」


 気がつくと隣にいた二人は土下座するように......神にすがる様に頭を下げている!?

 私達は【国王】、これ以上の上の役職などない......なのにこの男には頭を下げている!?

 ど、どういうこと!?


 「し、失礼しました、なんせ今日から」


 「俺が話していいと言うまで話すな出来損ない、それと、この場にそんな不敬なものを持ってくるな」


 「っ!」


 謝ろうとしたら思いっきり車イスが何かに持ち上げられ私は落とされる。

 そして車イスは目の前でバキバキと音をたてて圧縮されていき小さな玉になって転がっていった。


 「......」


 必死に私は言葉を出さないように耐える。

 だれ?この人は、何が起こってるの!?

 なんで?どうして?

 様々な疑問が頭のなかで渦巻く。

 しかし、一つ解ることは私達国の最高責任者は今この人物よりも下であること。

 

 私は他の二人と同じように土下座をする。


 「ふん、ようやく解ったか、今回はそこの出来損ないが初と言うことで殺すのは許してやろう」


 「......」


 「さて、俺がわざわざこんな所にまで出向いた意味、わかるか?そこのお前、答えてみろ」


 愛染の女王が当てられそのままの状態で口を動かしだすが、その声は震えていて隣を少し見ると尋常じゃないほど嫌な汗をかいている女王の姿が見えた。


 「わ、妾には分かりません」


 「ほう?」


 頭ごしにあの男がゆっくり近付いてくるのが解る、そしてその男は愛染の女王の赤い髪を片手で無造作に掴み引き上げ、次の言葉は私にとって無視できない言葉だった。








 「......‘貴様の国を管理していた’【ジェミニ】が死んだ、これはどういう意味か貴様には分かるだろう?」












 

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