第336話 恋する三人

 目の前が真っ白になった後、海のさざなみが聞こえる中、だんだん景色が見えてきた。


 「どうやら、あれが本当の目的地みたいね」


 「その様ですね......方位磁石もあの建物を指してます。」


 見えたのは崖の上に立っている大きな灯台......いや、灯台に見せたカモフラージュなのだろう。

 なぜそこが集合場所と確信したのかと言うと、その灯台の扉の前には有名な騎士が二人立っていたからである。


 「急ぎましょう、私達は一番最後に着いたみたい」


 車イスをタソガレが押してくれて私が灯台に近付いていくと、二人の騎士はなにも言わずにその場で跪く。

 それが正しい騎士の礼儀だ、あちらからすれば私は他の国の王さま......失礼がないようにしてるのだろう。

 そして、ここにこの二人......国の代表騎士が居ると言う事は


 「ここから先は私一人で行かないとダメみたいね......」


 「しかし、女王様にもしもの事があったとしたら」


 「それは他の二つの国も同じ考えよ、でもこれ以上は王しか進めない、そうですよね?アバレーの代表騎士さん」


 アバレーの代表騎士の仮面をつけて全身をローブで隠した人物は淡々と答える。


 「そうでございますですぞ。我々騎士はここより先は行けませぬですぞ」

 

 「そう言うことよ、タソガレ、あなたはここで待ってなさい、これは命令よ」


 「......解りました」


 そして跪く騎士たちの横を通り、タソガレに扉を開けてもらって中へ入った。


 「お気をつけて」


 後ろの扉がしまり、中が明るく照らされる......あら、これは......


 「私の魔力が持つかしら......」


 私は天まで続いてそうな螺旋階段を車イスに魔力を通してのぼっていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 《扉の前》

 

 二人の有名な騎士が扉が閉まるのを確認すると何事も無かったかのように立ち上がり警備をする。


 タソガレもそのまま扉の前で警備をしようと立って周りを警戒するが、ミクラル代表がタソガレに話しかけてきた。


 「あの小僧はどうしたんだい」


 あの小僧とは恐らくキールの事だろう、現在タソガレは代表騎士の代行であり、その事は他の国には知られていない。

 つまりミクラル代表から見ると代表騎士が変わったと思ってるのだ。

 

 「キール様は現在手が放せないので私が代わりに来ています」


 「はーん?《王国会議》よりも大事な仕事?そんなものあたしゃ聞いたことないけどねぇ?」


 「......」


 「あら、無視かい?」


 「......」


 タソガレは無視をし続けていたが次のミクラル代表の言動でつい口を滑らせてしまった。


 「まぁ、《王国会議》についてこれないくらい仕事をためてるあのヒヨッ子はやっぱりヒヨッ子のままでろくに仕事も処理できない役立たずだつたって事か、代表騎士の器ではないみたいだね」


 「キール様は決してヒヨッ子でも役立たずでもありません!!」


 「お?」


 タソガレはしまった!と思い我にかえって無表情に戻すがミクラル代表騎士は見逃さなかった。


 「おやおや、今の顔、どうも尊敬する人や国の代表騎士がバカにされたから出る顔じゃないね?」


 「いいえ、私はキール様を騎士として尊敬しています。」


 「隠さなくてもいいじゃないか、あんた、あのヒヨッ子に惚れてるね?」


 タソガレは図星をつかれるが必死に動揺を隠す......だが相手はミクラルの代表の騎士だ、日頃魔物の視線やちょっとした動きを見逃さないスペシャリスト。

 ミクラル代表騎士にはバレてしまった。


 「はっはっは、それは悪いことを言ったね」


 「......」


 「確かに自分の惚れてる男を悪く言うやつは本能的に反論したくなる、前のあたしなら解らなかっただろうけど、今のあたしなら解るよ」


 「......」


 「気に入った!あたしも【ある男】に恋しててね、その男は無口だが芯がしっかりしていて強い男だ、ついこの間も休暇中に仕事をしていたら会ってね、その時は運命だと思ったくらいだ、今ごろどこで何をしてるかいつも考えてしまうよ」


 「......」


 タソガレは無視をするが、ミクラル代表......ナオミはご機嫌に話し出す。

 

 「だからあんたとあたしが似てるんだろうね、女を馬鹿にされたくないのと、振り向いてほしい男が居る......その気持ちがわかるかい?アバレーの代表騎士さん」


 アバレーの代表騎士。

 彼はいつも顔を隠すように仮面をつけていて全身をローブで隠して行動している、その姿を見たものはアバレーの中でもいない。

 素性も経歴も何もかもが謎に包まれてる男......だが


 「恋とは......良いものですぞ」


 「ほう?」


 彼も恋をする男だった。


 「私の恋の相手は貴様みたいにゴリゴリの筋肉で男か女かわからない生物でもなく、そこの無表情を慣れてないのに貫こうとしている馬鹿でもなく、完璧な女ですぞ」


 「あぁ?」


 「聞き捨てなりませんね。私が慣れてないとは」


 この言葉に二人はイラっとする。

 やはり二人はどこかで似ているのだろう。


 「表情と言うものは作るものではなくそうなるものですぞ、無表情という表情もしかり......貴様の無表情は作り物、だから我々からして見ればすぐに解るですぞ」


 「......」


 「今も私にそれを言われて表情が少し崩れてるですぞ、何があったか知らないですぞが、表情を読み取られたくないのなら私みたいに仮面をつけるのですぞ」


 「..................考えておきます。」


 タソガレはこれ以上話してもタソガレ自信がボロを出しそうなので話を切り上げた。


 「で、あたしを女か男かわからない生物だって?」


 そして反対的に血管が浮き出るほど怒った表情のナオミが指をならしながらアバレー代表に問いかける。


 「真実を言われて怒るのはみっともないですぞ」


 「あぁ!?」


 「だが。」


 後少しで殴りかかろうとするナオミだが


 「前に会ったときより肌の艶が良くなって、さらに古傷などを魔法治療で無くしてるのを見れるですぞ、恋とはその人物を変えるもの、貴様が誰に恋をしたかは知らんが振り向いてもらう努力をしているのは私は認めるですぞ」


 「そ、そうかい......」


 ナオミはそう言われて怒りを沈める......

 この三人、偶然とはいえ恋する三人がここに揃ってしまったのだ。


 「......」


 「......」


 「......」


 三人ともまた無言になるがそれぞれ心の中で何を考えてるのやら......




 そのまま、時間は過ぎていき......



 


 「おや?」



 遠くからまだ見えないが、何かを感じ取ったナオミは武器を構える。


 

 「誰か来たようだね」


 「あれは......人間?」


 ナオミが武器を構えた方向を見ると白い小さな点が近付いてきて徐々に輪郭を表した。

 タソガレも武器を構えるが。


 「あいつは......ほう、久し振りだね」


 ナオミは武器をおろす。


 「知り合いですか?」


 「ちょっとしたね」


 その『少女』は白く艶やかな長い髪を揺らして近くに来た。


 「あんた、リュウトのパーティーに居た......『みや』だね?」


 「ぅんっ、久しぶりっ」


 みやはニコッと笑顔で答えると、蛇の紋章を片目に浮かび上がらせ。











 「ちょっと中に用があるからっ、通してもらうねっ」











 




 


 と言った。

 

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