第333話 大人の魅力

 みんなが寝静まった深夜。

 廊下をコソコソと動く小さな影が二つ......


 「この部屋です」


 「え......ここって」


 その部屋は食堂だった。

 ミイのトラウマがよぎる、ここにはアレがあると......ユキの言ってるのがアレじゃないことを祈っていたがユキは厨房へ迷わずに行き。


 「フッフッフ、ごはんつくる所でおてつだいしてたらたまたま見つけたです!」


 そういって床の、一番壁際の箇所をめくると地中トンネルがあった。

 動線上にないのでバレないのだろう。

 

 「............」


 「どうしました?ミイちゃん?」


 「あ......い、いや......すごーい!何これ!」


 「ふふん!そうですよそうですよ!この穴はなんと外まで通じてるのです!」


 「う、うん......」


 「フードローブも持ってきましたです!ささ行きますです!」


 誰も知らなかった地中トンネル......

 かつて『小型ブルゼ』がそこから侵入してネールを襲ったのと、ミイがエンジュに脅されて教えてしまった秘密のトンネル。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ここにあるはずなんですが......」


 ユキ達はフードを被って人目を避けながら暗闇を歩くこと30分、もう瓦礫も撤去されて今は広い空き地になった所に来ていた。


 「なにもないね?」

  

 空き地には本当に何もない、ただ魔法の文字で{売地}と書かれた看板があるだけだ。


 「とりあえず絵に書いてあるところまでいきます」


 「えー、もうかえろうよー」


 「なにいってるんですかここまで来たらあとすこですです」


 ユキは地図を見ながら空き地に入っていくのでミイはついてゆく。


 「ここみたいです!うーん......すこっぷ持ってきた方がよかったですね......」


 「手でほるの?」


 「しかたないですから」


 「うえぇ、バッチぃよ?」


 「いいんです!」


 二人で掘っていくとすぐに小ぶりの豪華な高そうな箱が出てきた。


 「「!?」」


 「どどどどどどうするです!?なななにかででででてきました!」


 「おおおお落ち着いてユキちゃん、まずは深呼吸深呼吸......」


 「スーハーハーハーハー......うっ」


 「ユキちゃん!?はくのばかりじゃだめだよ!?」


 小さな箱であわてふためく二人......実は二人とも何もないと思ってたのだ。

 ユキですら少ししたら帰ろうと思っていた。


 実際に中は何もないかもしれない。


 だが、宝の地図で出てきたものは子供の二人にとってすごくワクワクする出来事だった。


 「あ、あけるですよ」


 「う、うん」


 カチャッと小さな箱を開けると魔皮紙が二枚だけ入っていた。


 「宝石とかじゃなかったです......」


 「そうだね......」


 二人とも一枚ずつ魔皮紙を手に取る。

 しかし、その魔皮紙は宝石よりももっと価値のあるもの。


 「とりあえず一緒に使ってみません?」


 「うん!いいよ」


 子供は好奇心旺盛だ、後先考えずに二人は一緒に魔力を通した、すると魔皮紙が二人の手に溶けていき......


 「お、おおおおぉ......ひゃ!?」


 「ゆ、ゆきちゃん!?あ......やん......」


 二人の身体は大人に成長した。


 「ふ、おふくが......です」


 「どうしよ......破れちゃった......」


 現在二人の服は破れ、子供用のフードローブを被ってるので裸に防災頭巾のようになってる。


 「と、とりあえず戻りますです」


 「う、うん」


 二人は溶けた箇所に魔力を再び流すと元の子供の姿に戻ってローブで身体を隠すが


 「あ、あれ?魔皮紙がでないです......」

  

 「ほんとだ......ど、どうしよ」


 魔皮紙は完全にユキたちの中に溶け込んでしまった。

 

 「手、手を洗えばなんとかなるですよ!」


 「そ、そうだね、帰っていっぱいあらえば」


 その時だった。


 「君達!そこで何をしてる!」


 ミクラルの見回り騎士がユキたちに気付いて近寄ってくる。


 「ま、まずいです!にげるです!捕まると先生たちからものすごくしかられるですー!」


 「う、うん!」


 裸足で一生懸命二人ともトテトテと走るが


 「こらっ!」


 「やー!」


 子供と大人の走る速度だ簡単にミイが捕まってしまった。


 「ミイちゃん!」


 「ユキちゃん!私はいいから!」


 「そ、そんな!ミイちゃん!」


 騎士は困った顔をして暴れるミイを見る。


 「何を言ってるんだ......君達を無事に家まで届け......」


 「ゴ,ゴホン、き、騎士サーん」


 「ん?な、なんだね!君は!いつから!」


 騎士が色っぽい声に反応すると目の前には金髪で裸で貧乳だがスタイル抜群の大人の美女が居た。

 大事なところはちゃんとローブをスカートのように巻いて隠して胸は手で隠してる。



 ユキのとっさの判断力......悪知恵だ。


 「ふ、服を着なさい!」


 騎士は慣れてないのか目を閉じて言う。


 「そんなことよりぃです......その子を離してあげてぇです」


 ユキは精一杯なんとなくこんなんだろうなーっと思いながら色っぽい声を出して騎士を誘惑する。


 「き、君とこの子はどういう関係......」


 そして、騎士が目を閉じてるのを良いことにここにも悪知恵を働かせた少女が一人。


 「きしさんも、ぼ、僕と一緒におさおさおさんぽするぅ~?」


 「え......なぁぁぁあ!!!?」


 騎士が持ってる手が段々上の方になって違和感を感じて閉じてる目を少し開けると、

 長身でスタイルよく形のいい胸をした美女が居た。


 「な、なんだ......夢を見てるのか......」


 もはや騎士はパニック状態、そして目の前の裸の突然現れた美女二人に目が釘付けだ。

 そして手応えを感じたユキはここぞとばかりに畳み掛ける。


 「そう、ゆめです、そう言うことにしといてくれなーいです......だから騎士さんはなにもみなかったです」


 「ぼくたちは夢の精霊だよ~まわれーみぎー」



 「あぁ......そうだな......いいもの見せて貰ったし......そうするよ......子供じゃなければ......もんだいないしな」




 ユキの提案に騎士はのった......

 この処理しきれない状況から一刻も早く脱出したかったのだろう、フラフラと立ち去っていった。






 「やったです!うまくいったです!」


 「すごいね!うまくいった!」


 二人は子供に戻って喜び会う。


 「とにかくもう帰るです!」


 「う、うん、帰っておふくとかも着なきゃ」


 二人はローブを羽織ってきた道を帰る......


 「そう言えば、なんで「ぼく」なんです?」


 「ん?だって大人の女性だもん♪」





 ユキとミイは【歳取り】の魔法を覚えた。



 ユキ達が来たのは《ブールダ邸跡地》

 ブールダはルコサに会う前も若さの研究をしていたが奇跡的に出来たのはその逆の魔皮紙だった・・・・・・

 




 



 


 

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