第322話 【勇者アオイ』
アオイはすひまるの家をゆっくりと歩きながら外へでる。
周りは暗く目をこらさないと良く見えない。
「暗くて鬱陶しいんだよ......!」
アオイが空に片手を上げると遥か上空に巨大な魔法陣が展開されそこから大量の【糸』が出てきて絡み合い、球体になると光を放ち出し巨大都市を明るくする。
「これで良く見える。」
前方の魔王城から数千......いや、数万と言う魔物や吸血鬼が飛んで来ている。
しかし、アオイは魔王城へゆっくりと一歩、一歩と歩みを進める。
そして一言
「【目撃縛】」
その瞬間遥か遠くで飛んでいる魔物や吸血鬼達たちは空中で停止する。
【目撃縛】は対象を確認するとどこからともなく糸が出てきて相手を拘束する技。
今ごろ彼等は空中から出た糸でその場で絡み付いて逃げれなくなっているだろう。
そして
「死ね!『女神』!」
近くの建物に隠れていた吸血鬼達が一斉にアオイに襲いかかるが彼等の魔法、飛ばしたナイフなどはアオイに届くことはなかった。
魔法を放とうとしたものはその魔法陣を【糸』が書き換え不発に。
ナイフを投げた者はそのナイフがまるで生きてるかの様に空中で旋回しその者のナイフホルダーに帰っていく。
そして、アオイに見られたものは次々と糸で拘束され動けなくなる。
「ば、化け物......」
「......」
一人の【オルビアル化】して縛られてる吸血鬼が呟いた一言に反応してアオイはそちらを向いて歩いて近づく。
「な、なんだ!」
「化け物?俺が化け物に見えるか?」
「っ!」
その口調は明らかに【怒り』が籠っている。
そして
「【私』から見たらそっちの方が......よっぽど化け物だよね♪」
【アオイ』はその者に笑顔を見せる。
その笑顔は何もかもを『魅了』する素敵で美しい笑顔......しかし、今その笑顔は
「ひ、ひぃいいいぃ」
心の底から【恐怖』を相手に植え付け、笑顔を見た吸血鬼はその【恐怖』に脳が過大なダメージを受け耐えられなくなり気絶した。
......まるで、気絶している間に殺されるのを待つように。
「............」
「止まりなさい、アオイ」
アオイは聞きなれたその声に振り向く。
そこには一年間共に過ごしたクラスメイト達の姿があった。
「みんな......」
そしてクラスメイト達は全員【オルビアル化】し武器を構え、アオイに向けた。
「悪く思わないでね、これが私達の仕事なの」
アオイはまた【絶望』しそして、【怒り』が沸き上がる。
「おいおい、俺たちの友情はそんなもんなのかよ?」
「あんたこそ、友情って言うわりには「俺」なんて一人称で話し方も違うじゃない、お互いに隠してただけの話よ」
「ハッ、言えてるよ......ほんと......言えてるよ!くそ!」
【アオイ』はそう叫んで耳と二本の尻尾をはやして【獣人化】して構える。
「俺は今最高に怒ってる。全員まとめてかかってこい、【武器】は使わないでやるよ。」
「言われなくても!行くわよ!あんた達!」
「「「「おおおおお!」」」」
《ストロングウーマン》
《ファイアーヒューマンドロップ》
《アルティメット》
《マッフルファイターズ》
途中から入れ代わっていたとしてもアオイと同じ教室同じ行事を笑顔で過ごした者達だ。
それなのに、どうして?どうしてそんなに簡単に人を殺せるんだとアオイは思い、【怒る』。
「はぁぁあ!!!」
まず接近して来たのは《マッフルファイターズ》のリーダー以外の三人。
「相変わらず、すごい筋肉だ、ほれぼれする!......龍牙道場流、中級奥義【流し】!」
アオイはマッフルファイターズの一人の拳をギリギリで避けそのまま手首を掴み引っ張る。
「うお......」
バランスの崩れたマッスルの一人は地面に顔から倒れ、すかさず次に二人がアオイの顔面とお腹に同時に攻撃しようとしたが
「なんだと!?」
「ば、ばか!」
アオイは一瞬で小さく足を慣らしてその場から上にジャンプしてマッスル二人の視界から消える。
対象が無くなった拳はお互いの仲間のマッスルの身体に直撃し、体勢が崩れる。
「上級奥義!【魂抜き】!」
着地した瞬間、思いっきり体勢を低くして隙が出来た二人のアゴを強く下から手のひらで衝撃を与えそのまま流れるように先程まで倒れていたマッスルのアゴにも同じことをする。
彼等三人はそのままバタッと倒れ、気絶した。
「【ファイアーボール】!」
「【アイスボール】!」
「【エレキボール】!」
「次はお前達か!《ファイアーヒューマンドロップ》!」
アオイの三方向から魔法が飛んでくるがこれをアオイはまた空中に飛んで回避......だがそこを
「そう何度も飛んでいたら読まれるでござるよ!」
「「「【ウォータースラッシュ】!」」」
飛んでるアオイに三本の水の刃が飛んでいく。
飛んでいるのでアオイは回避行動が取れないと思ったのだろう。
「ここは魔法の世界だ!俺に通用すると思うなよ!初級奥義【空歩】!」
アオイはさらにそこからもう一度飛ぶ!
二段ジャンプという奴だ、【空歩】は自分の魔力を足裏に集中させてその場に土台を一瞬作りそれでジャンプする奥義。
【ウォータースラッシュ】も対象を失い空を斬って近くのビルに当たり少し破壊する。
そして
「超級奥義!【地割れ】!」
アオイは空から着地様に渾身の魔力を込めた拳を地面に叩きつけ地面を揺らし地震を起こす。
そして体勢を崩したところを
「ぐっ」
「がっ!」
「な!?」
「ござ!」
「ござ!」
「ござ!」
まるで川の流れの様に動き、【魂抜き】をして六人気絶させた。
「さぁ、残りはリーダー達と《ストロングウーマン》だけだ、どうする?」
「くっ!行け!」
《ストロングウーマン》は全員で五人、リーダー以外の四人が仕掛けてきた。
「う......なんだ、この感情......」
アオイに近寄る四人の女。
そして距離が近くなるとアオイを襲うこの感情。
それは......『女神』により食べられていた感情。
「思い出した......俺は女性が......だいっきらい何だよ!」
最後の四人の女は尻尾で波状攻撃してくる。
それをアオイは後ろに下がりながら良く見て......
「上級奥義【白刃取り】!」
四本の尻尾が同時に来るタイミングを見切りその白く細い指に先を挟む。
「「「「っ!」」」」
「自分らの攻撃で眠れ!」
そのまま尻尾をそれぞれの身体に刺すとそのまま、昏睡状態になった。
普段の吸血鬼なら自分の毒でやられないだろう、しかし、今の【アオイ』が指で挟んだ際に魔力を注入し、毒の構成が変わったのだ。
そして......アオイは残りのリーダー達四人を見る。
「残るはお前らだ、一年間一緒に過ごした仲だ、「許して」と「ごめんなさい」と言えば俺はお前らを見逃す......俺は謝れば許す主義なのでな」
リーダー達四人はお互いに顔を見合わせて......
「......」
黙ってみんな頭を下げた。
「そう......なら行かせてもらう」
そのまま、アオイが通りすぎようとしたとき。
「今よ!」
四人が一斉にアオイに飛びかかろうとしたが。
「......【目撃縛】」
どこからともなく魔法陣が展開され糸が四人を拘束する。
「確かに、お前らは俺に「謝ってない」もんな」
「あ、あんた......武器は使わないんじゃなかったの?」
拘束されて悔しそうに女リーダーの吸血鬼はアオイを睨み付ける。
「不意打ちはお互い様だろ、自分は良くて他人はダメとか子供かよ......」
アオイは振り返り魔王城にまた歩き出す。
「ま、待ちなさい!あんたは一体何者なの!」
その質問にアオイはそちらを振り向かずに言った。
「A secret makes a woman woman...」
「?」
何を言ったのか女リーダーは理解できない。
それもそうだ何故ならその言葉はアオイが元の世界のアニメで言ってたセリフ......アオイは「一度言ってみたかった」から言っただけなのだ。
そのままアオイはクラスメイト達を背に【糸』を出しすと輪っかになり、中には魔法陣が浮かびあがっている......【転移魔法陣】だ。
「さぁ、【私』に会いたいんだろ?魔王......ご対面だ」
その中に入り消えていった。
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