第321話 すひまるの日記

 《モルノ町》ですひまるが拠点にしていた家に一つの日記が机に置かれていた。

 その日記を【どこからともなく吹いた風がページをめくる】


 《すひまるの日記》


 ・人間は愚かです、私達吸血鬼より弱いのに。


 ・今日もリストにある人間を探して送りました。


 ・今日も......


 ・今日は働きが認められて《スコーピオル》に居る弟と魔通信の許可をもらいました、弟はあちらで元気にしてるそうです、他の吸血鬼にいじめられなければいいけど。


 ・お腹がすきました、ここでは食料は現地調達リストの人間の血を少し飲みました......美味しかったです......本当に。


 ・今日の人間は手強かったです、なんとか昏睡状態にしましたが、ダメージがひどいです血を......


 ..................


 ・今日は久しぶりの日記です、私がフラフラしていると声をかけてきた人間がいました、最初は警戒してましたがその人間は口調は荒いけど弱ってる私を介護してくれました。どうやらモルノスクールの一年生みたいです。学校というのは我々下級吸血鬼も中級吸血鬼もいけません、どうせ将来は魔物なので......学校......いってみたいな。


 ・あれから人間にもいい人と悪い人が居るのが区別できるようになりました、なるべく悪い人でリストにあう人を送ることにしてます。



 ..................


 

 ・リストはほとんど終わってきた時、魔王さまから連絡がありました......どうやら微弱な『女神』の反応が確認されたようです。

 魔王様は小さな魔皮紙を渡してきました、これが赤くなったら『女神』なのだと......私は町中を歩き回りましたが魔皮紙は赤くなりませんでした、ホッとしました。


 ・残りのリストにあう人間にとっておきの場所がありました!なんと学校!明日は入学式!楽しみです。


 ・..............................恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い。

 ど、どうしてどうして『女神』がここに。

 恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い。私は早急に魔王様に連絡しました。

 応援をくれるそうです。


 ......................................................


 ・今日は本当に久しぶりの日記です。アオイさんはいつも私に声をかけてくれます、そして優しく......本当にこの人はあの『女神』なのでしょうか?


 ・今日はアオイさんがクラス代表になりました、みんなのクラスの中心であるアオイさんなら納得です、でもまだ少し苦手です......相変わらずアオイさんは私に話しかけてきます。


 アオイさんが。アオイさんは。アオイさんも。............


 ・今日は私は大失敗しました......《体育際》でこけてしまい、目立ってしまって上司に怒られました......今目立って私達の正体がバレると計画がなくなってしまいます。ですがアオイさんが助けてくれました......アオイさんは私達の事を知りません、だから筋違いで怒ってると思いますですが......「言いたかったら言う、動かないと後で後悔する」なんて、自分本意な考えなんでしょう......ですが、この人は本当に【優しい人間】なんだなって思いました。


 アオイさんアオイさんアオイさんアオイさんアオイさんアオイさん。


 ・いよいよ明日は計画続行です、学校の【転移魔法陣】をいじって魔王城に送り込みアオイさんを殺します.....嫌だ......嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、私の初めての友達が殺されてしまう。

 なんで......なんでこの人は『女神』なの......こんなに優しい人間なのに......許して許して許して許して、アオイさん......「動かないと後悔する」......私はダメな吸血鬼です......動けません......許して許して許して許して許して許して許して許して許してごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。



 これは一人の下級吸血鬼の記録である。

 この吸血鬼は【初めての友達】を作り。

 この吸血鬼も無力な自分を恨んだ。


 だが、神はチャンスを与えた......【生死の選択】を。



 そして彼女はアオイが見えているにも関わらず。



 「わかりません」



 と、答えたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る