第323話 【久しぶりの女神ちゃんだよ♪』

 「どうなっている!」


 吸血鬼の魔王【アビ】は通信魔皮紙で部下に怒鳴る。


 {も、申し訳ございません!我が都市の軍隊全てを送り込んだのですが【謎の糸』に拘束され動けなくなっております!}


 「糸くらい切ればいいだろう!」


 {現在、あらゆる方法で切ろうとしておりますが......}


 「もう良い!」


 アビは苛立ち通信魔皮紙を斬り飛ばす!

 こんなハズではなかった、相手は所詮一人......いくら『女神』と言えど数万の兵相手で終わりだと思っていた。


 「そう怒るな、なのじゃ」


 「あぁ?」


 「今ここに来ようとしてるのはお主の探していた『女神』じゃぞ?」


 「............」  


 アビはルカに黙って近づく。


 「ほぅ、ワシとまた飲むつもりなのじゃ?」


 「......」

 

 「なら次は酒を持ってくるのじゃ、あんなガラス玉では腹をわって話せないと思わないか?のじゃ」


 ルカはイスを傾けてカップの取手に指をいれてくるくる回しながら話す。


 「それにワシを」


 「貴様は黙ってろ!」


 アビはルカの時間を止め、そして......


 「ククク、そうか......何を焦っている......こいつは元々人質だ、こいつを使えばいい」


 アビがそう呟いた時......

 アビの後ろから決して大きくないのに透き通って綺麗な声が部屋に響き渡った。


 「天下の魔王様がそんな男らしくない事をするんじゃねぇよ」


 「!?」


 アビが振り向くと耳と尻尾をはやした金髪の綺麗な綺麗な美人が大きな胸を少し押し潰すのも構わず腕を組んで仁王立ちしていた。


 「初めまして、魔王様......いや、あの時押し入れに隠れてたから実際は初めてじゃないけどな?」

 

 「『女神』!?いつからそこに!」


 「さっき来たんだ」


 アビはすかさず魔眼を発動させ【世界の時】を停止した。


 「......」


 「フ、フフ......ハハハハハハ!何を俺はさっきから焦っている、こうすればすべて解決じゃないか」


 アビは笑い勝利を確信する。


 当たり前だ、どんなに身体を鍛えてもどんなに魔法を習得してもどんなにチート級の武器を持っていても【時間が止まっているなら関係ない】


 だが、それは


 【笑い方きっしょーい♪』


 「な、なに!?」


 ......同じ次元に居る奴等の話だ。


 「き、貴様!なぜ動ける」


 アオイはまるで弱いものをこれから楽しく残酷に残虐にいたぶるのを楽しみにしてる子供のような笑みでアビを見ている......その瞳孔は淡いピンクのハートマークが光っていた。


 【なぜ動ける?キャハッさっきから言ってるじゃない、女神でもある私よ?......同じ次元に居ると思ってる時点であなたのまーけ♪』


 「くっ!」


 【でも、いい魔眼ねぇ、同じ次元に居る【糸】はこれで封じられてるから出せない見た~い、えーん♪』


 「くそがぁぁあ!」


 この世界の『悪』が目の前に居る......そしてその『悪』の余裕の表情はハッタリでも無いことは理解できている......


 アビは身体中の全魔力を解放!

 猛毒の尻尾を六本、背中からコウモリの翼を四本だし、そして口は全ての歯が牙になり【オルビアル化】する。


 【きも......あなたの相手してあげても良いけど、今回は私の出番はこれだけよ~♪』


 チュッとウィンクして投げキッスをする【女神アオイ』はまだ聞こえていない相手に話しかけた。













 【私に見せて......【勇者】として覚醒したあなたの力を♪』











 










 


 


 


 


 

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