第316話 食料調達係

 「こ、ここが人間界......」


 《食料調達係》になって私は初めて人間の国に行きました。

 普通なら行くこともない国。


 新鮮な人間がそこらかしこを歩いていて初めはヨダレが止まりませんでした。


 「ど、どうしよ......」


 でも困ったことに私は来てから何をしたらいいのか聞いてません。

 そして何より......


 「あ、暑い......気持ち悪い」


 日の光と言うのはどうも苦手です......当たってるだけで溶けてしまいそうな......


 「おねえさん、大丈夫かい?」


 フラフラとしていたら男の人が声をかけてきました。


 「は、はい......」


 「熱中症か?俺の家が近いからよっていきな?」


 私は断る理由もないのでその男の人についていきました。

 そして、家には入ると、なぜか鍵をかけられ。


 「おい、お前ら、こいつどう思うよ?」


 家の奥から男の仲間と思われる人達が三人人間に変身した私をジロジロとみてきます。


 「おーいいじゃん、ムチムチの身体でいかにもって感じどこで手にいれたんだ?」


 なんの話をしているのでしょうか?私は理解できません。


 「いいだろ?そこら辺で一人でフラフラになってたから声かけたらついてきやがったハッハッハ」


 「あ、あの......」


 「あ?」


 「ど、どう言うことですか?」


 「あー、お前ら、どう言うことか?だってよ、解らせようぜ」


 男の人達は私の服を強引に脱がそうと引っ張られましたビリッと嫌な音がしました......後から知ったのですが、この男達は私と交尾したかったのでしょう。

 ですが、そんなことより私は


 「服を、破らないで!」


 人間に変身して初めて買った服。

 【スコーピオル】で貧乏な私がやっとの思いで買った大切な大切な大切な大切な大切な服を破いた。


 「な、なんだこいつ!」


 私達吸血鬼が人間に変身した際になれる姿。

 【オルビアル】紫の肌になり黒い羽をだして先端に針のついた尻尾の姿。


 「す、少しだけ眠っててください」


 「ひ、ひぃ!」


 「ぎゃっ!」


 「ばけもの!ぐわ!」


 弱い......なんて弱い生き物なんでしょう、人間は。

 軽く毒を身体にいれるだけですぐ寝てくれる。


 最後は私の服を破いた張本人でした。


 「お、お前は何者なんだ!」


 「あなたが知る必要ありません......食料」


 最後のその男を軽く刺して眠らせました。


 「私の......服......」


 破れてしまって上半身裸になってしまいました、悲しかったです......

 

 しばらくその場でボーッとしていると、どこからか魔皮紙が飛んできました、その魔皮紙はモニターになり。

 女の人が映っていました。


 {ふーん、もう仕事してるの?やるじゃない}


 「あ、あなたは?」


 {私はあなたの上司よ、あなただけじゃなく他にも部下は居るわ}


 「は、はい」


 {《食料調達係》としてこれから頑張りなさいよ?リストを送るわ}


 「リスト、ですか?」


 {そ、貴方たちの仕事はリストに載ってる年齢、身体つき、性別の食料をこちらに送ることよ、送り方は後で説明するわ}


 「は、はい......」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「それで私はリストにそって人間を襲ってました......そして、次のリストは若く肉体が引き締まった人間だったので......その......あのスクールに入学してました......」


 「............うん、君が仕方なく仕事で人間を襲っているのは解った、でも人間として僕は君に同情は出来ないよ」

 

 「は、はい......」


 「それで、どうして僕らは食料じゃなくて殺されそうになってるの?」


 「それは......」

 

 そこまで言ってすひまるは止まる。

 それは話のを止まったのではなく動きも何もかも。

 

 「あ、あれ?すひまるさん?ルカ?どうなって......ルカ?」


 アオイはルカの方を見るがルカも止まっていた。

 


 ......まるで、【世界の時が止まっている】様に。


 「え!?どうなってるの!?」


 アオイは焦る。

 明らかにおかしい。

 そして。




 【何か】が近付いてくるのを感じた。




 そう、感じたのだ。

 まるで運命、元々【身体】がそれに感じるように出来ている様に......



 アオイは危機を感じセミマルの居るふすまに隠れる。

 セミマルもやはり止まっていて周りは静寂に包まれる。


 風も、物音も何も音がしない。


 しかし、【何か】は近づき


 



 ガチャッとこの部屋の扉を開けた。








 そして静寂の中でひとこと。












 「ふむ、ここに『女神』が居ると思ったが居るのは部下だけか」









 

 

 


 



 

 

 


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