第315話 状況整理。すひまる過去
「まず、どこから話したらいいんだろ......」
「まずは答え合わせからじゃ、すひまる......お主は何者でなぜあのスクールに居たのじゃ」
真っ暗い部屋でちゃぶ台にみんな座って話す。
お茶と明かりがあれば完璧だな。
「は、はい......ルカさんはご存じの通り私は吸血鬼です」
「吸血鬼って血を吸うあの?」
「良く知ってますね、私達吸血鬼は人間にバレないように潜伏してます」
「どうして?」
「そ、その......」
「おそらく、人間に化けて化けた相手を食料として誘拐してたのじゃろう」
「え!?」
「はい......ごめんなさい......私達吸血鬼は新鮮な血を飲むとその生き物のDNAをコピー出来るんです......それで」
「............続けて」
「で、でも、私のこの身体はそう言うのじゃなくて......昔、一人あの工場から脱出出来た冒険者が居たんですけど血をほとんど抜かれてる上に長年カプセルに入っていたので力なく倒れてたんです......そこを幼体の私が通りかかりこの人間は「私を匿ってくれるなら私の血を飲んでいい」と言われました......」
あの工場の人達はやっぱり殺されてる訳じゃないのか、それだけでもいい情報になりそうだ。
「そして私はこの身体を手にいれてこの家まで運びました......彼女の身体は日に日に回復して、その日が来ました、人間界に帰るにはこの都市を出て世界を歩き回って探すか、都市の中心にある【魔王城】の転移魔法陣でミクラルに行くか......」
..................え?
「ま、待って!【魔王城】!?魔王はまだ封印されてるんじゃ......」
「え、私達の魔王様【アビ】様は大昔からこの都市を納めてますよ?」
「え!?え!?」
ま、まって!それだと話が!
今までの話が全部おかしなことになるんだけど!?
ど!どういうこと!?
「それは後でワシから話すのじゃ、すひまる、続けるのじゃ」
「は、はい......彼女は前者を選びました......」
「うん......」
「そして、数日が経ちました......」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おねーちゃんすごい!人間の身体人間の身体!」
「ふふ、セミマルもすぐになれるよ」
「ほんとー?セミマルがんばる!」
私はこの身体を手に入れてすごく幸せでした。
本来、私達下級吸血鬼は【幼体】のままで生きていき、魔物の血を飲んで生活をしていくのが普通。
中級になると、新鮮な魔物の血を飲んで魔物に変身できるようになります。
そして......上級だと、新鮮な人間の血を分けて頂き、人間に変身出来るんです。
本来手の届くはずのない身体......嬉しい。
しかし......幸せは長く続きませんでした。
「ほう、貴様。下級の癖に人間に変身できるのか?」
「!?」
私はいきなり聞こえた声に振り向くとそこには【アビ】様が座ってこちらを睨み付けていました......
いつから?
どこから?
なぜ私達のような下級吸血鬼に!?
「ア、アビ様......」
私は咄嗟に元の姿に戻りましたが
「俺の前で真実が隠せると思うな」
ゴトッと空中からいきなり出てきた【何か】が床に落ちる音がしてそれをみると......
「ひ......!」
それは変身したときの私の首でした......
「おねーちゃん?」
「見ちゃだめ!」
私はまた人間の姿になって弟に見せないように抱き抱えました。
「先日、《食料庫》から逃げ出した人間が居ると聞いてな、興味が沸いたので探してみたのだ、生意気にもそいつは他の人間を助け出そうとしていたので捕まえ、私の魔法で洗いざらい吐いてもらった」
こ、殺される。
私のしたことがすべてバレました。
「あ、あ......」
「そう怯えるな、貴様にチャンスをやろう」
「チャ......チャンスですか」
アビ様は瞳に紋章を出すと一瞬で目の前にあった首がなくなりました。
弟のセミマルもアビ様の魔力にあてられて恐いのか黙ってます。
「貴様は運がいい、ちょうどミクラルに送っていた食料調達係が一気に消えてしまってな、お前を今日から《食料調達係》に任命する、働き次第では今回の件、許してやらんこともない」
私には断ることも出来ません。
私はその日から食料調達係になりました......
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