第312話 輸血パック泥棒

 「これは人間......なのじゃ?」


 不気味に光る培養カプセルの中には様々な人間が眠っていて、そのどれにも身体に管が刺さっていて赤い血が流れていってる。


 ルカは気絶しているアオイを姫様抱っこで抱き抱えながら歩いてゆく......


 「............なるほどのぉ」


 そして管を辿っていくと自動で血が輸血パックに入って運ばれていた。


 「吸血鬼......昔の奴らは知能などそこら辺の魔物レベルしかなかったじゃろうに、この数千年で目覚ましい進化を果たしておるのじゃ、歳はとるものじゃの......まぁ、ワシもほとんど眠っておったのじゃが......」


 幸いにも吸血鬼や魔物の気配がないのでルカはアオイを隅に置き、考える。


「さて、どうするかなのじゃ」


 ルカは現在上半身が裸だ、これは無理矢理羽を出したので制服がそれに耐えきれず弾けてしまった、つまりポケットにいれていた魔皮紙はあの場に置いてきたのだ。


 「ふむ、ミクラルに戻るにもあの転移魔法陣しかないのじゃ......それか自力でここを出て見つけるか......」


 しかし、ルカは先ほど全速力で飛んでいたが飛んでも飛んでも出ることが出来なかった。

 それほどまでにここが広すぎるのだ、そして出たとしてもどの方向にミクラルがあるのかも解らない。


 「せめてあやつらに連絡さえとれれば......」


 「ん、ん......」


 気絶しているアオイが目を覚ました。


 「起きたのじゃ?」


 「う、うん、おはよう......どういう状況?」


 アオイは起きて周りの雰囲気に困惑しながらも状況を聞く。


 「騙されたのじゃ」


 「誰に?」


 「クラスの連中になのじゃ」


 「え!?」


 「順に話していくのじゃ、時間ならたっぷりあるからのじゃ」


 「うん......」


 「違和感を覚えたのは、《なんでも箱》であの女と買い物に行った次の日のじゃ、あの女パーティーメンバー全員から血の臭いがしだしたのじゃ」


 「......」


 アオイは黙って話を聞く。


 「しかし、あやつらも冒険者、血の臭いなぞすることもあるだろうと思っていたのじゃが」


 「体育祭の時、文化祭の時、そして文化祭の次の日には全員から血の臭いがしだした」


 「そ、その、血の臭いがしたらダメなの?」


 「............実際はさっきの奴らとここを見て確信に変わったのじゃ」


 「つまり?」


 「奴らの正体は吸血鬼と呼ばれる種族なのじゃ」

  

 「!!!!!」


 「知っているのじゃ?」


 「す、少し」


 「流石異世界から来た【勇者】なのじゃ」


 「え!?どうしてそれを!?」


 「時が来たら話すのじゃ、一つ言えるのはワシはお主の味方なのじゃ」

 

 「わ、解った......これからどうしよ?」


 「そうじゃの、とりあえず」


 その時、ルカの入ってきた扉が開いた。


 「隠れるのじゃ!」

 

 「わかった!」


 コツ、コツ、コツと扉から入ってきた人物は流れてる輸血パックをとってバッグに詰めていく......まるで泥棒をしてるみたいだ。

 そしてその吸血鬼を影から見てルカとアオイは驚いた。



 「「(すひまる)!?」」


 そう、いそいそと輸血パックを盗っているのは、肌の色が違うが紛れもなく、すひまるだった!






 

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