第311話 【巨大都市スコーピオル】

 「な、なに!どうなってんのおぉおお!?」


 「くっ!しつこいのじゃ!」


 月明かりもない暗闇の中アオイは必死に落とされないように上半身裸でクリスタルの翼を羽ばたかせてるルカにしがみついていた。


 そこは【巨大都市スコーピオル】、吸血鬼と王の操る魔物の住む大都市である。

 ここには多くのビルが摩天楼の様になっている。


 「のじゃ!?」


 ルカの後ろには何千、何万の魔物と吸血鬼が追ってきて吸血鬼からは魔法が放たれている。


 「目、目がまわるぅ!」


 それをルカは戦闘機の様な動きで攻撃を避けている。

 アオイはまだ目がなれていないので真っ暗な中、風を裂く音と、ぐるぐると回る感覚に酔いそうになっているが遥か上空を飛んでいる事が解っているので頑張っていた。


 「まさか、転移ポータルを奴ら弄ってたのじゃ!油断したのじゃ!」


 ルカが高く高く真上に飛ぶ。

 そしてある程度軍団と距離を離し


 「【クリスタルアロー】なのじゃ!」


 ルカの羽から大量の先の尖ったクリスタルが何百発も発射され下にいる兵士や魔物に刺さり落ちていく。

 だが、多勢に無勢、10分の1もまだ削れていない!


 「くっ!」


 「うわぁぁぁあ!!」


 そのままルカは攻撃を避けながら急降下!

 急降下途中のバットドラゴン二匹を羽で切り裂き真っ二つにしながら都市の中を低空飛行する。


 「なんて広いのじゃ!ミクラル王国の何個も町を集めてもここの広さに到底及ばないのじゃ!」


 「も、もう、限界が」


 「アオイ!しっかりするのじゃ!今お主に死なれると困るのじゃ!」


 アオイも限界を迎え始めしがみつく力が弱くなってゆくのをルカが両手で抱き抱える。


 「はぁはぁ......」


 ルカも次第に疲れ始めスピードが落ちてくるが軍団は未だに追ってきている。


 「踏ん張る......のじゃ!【クリスタルグレネード】!」


 最後の力を振り絞りルカは自身の魔力を詰めこんだ玉をビル二つに投げると玉が弾け巨大なクリスタルが出現しビルを崩していった。


 暗闇の中で砂煙が舞い上がりそのどさくさ紛れルカは近くの建物に逃げ込む。



 「はぁ......はぁ......なんとか逃げ切れたのじゃ」


 アオイは白目で泡をふきながら気絶している。

 

 「どこか休める場所と服を......のじゃ」


 ルカは上半身裸でアオイをお姫様抱っこしながら建物の奥へ入る。


 そして、


 「な、なんなのじゃ!?ここは!」






 その建物は吸血鬼達の【食料倉庫】

 大量の人間が培養カプセルの中で眠り、そして、血を抜かれていた。









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