第292話 子供達に笑顔を与えたい

 《モグリ邸》



 「《モルノスクール文化祭》ー?」


 現在、モグリは《ナルノ町》の新しい町長になり多忙でほとんど《モグリ邸》にはいない、代わりに今はウマヅラがモグリ邸での最高責任者である。


 時刻はお昼過ぎで子供達はお昼寝タイム、他の先生達もお休み時間でそれぞれの部屋に戻っている。


 昔、モグリが使っていた寝室はウマヅラとその妻ドーロの部屋になっていてウマヅラは一枚の魔皮紙を出す。

 

 「そうだ、現在このモグリ様の築いたこのモグリ邸には、獣人、人間関係なく二倍近く子供達が増えた......なのでそろそろ我々も一つの孤児院としてギルドに申請を出そうかと思ってな」


 ドーロは黒く染めた髪をいじりながら問う。


 「それとこの文化祭に何の関係がー?」


 「うむ、ギルドの人に話したところ、一年のイベントスケジュールなどを教えてほしいと言われてな、我々は元は奴隷......そういう事をしてこなかったのでいい機会だ、色々と考えていこうと思う」


 「なるほどねー、モグリ様はなんてー?」


 「モグリ様は相変わらず寛大なお方だ、全て此方に任せてくれるらしい」


 「流石モグリ様ねー」


 「うむ、さらにこの話を聞き、モグリ様のお知り合いのお子さんが居るみたいでその人に文化祭を案内してもらう手筈をしてくれた!あぁ!なんて素晴らしいお方なのだモグリ様!」


 「あなたー、グリが起きちゃうでしょー」


 ドーロはすぐ隣で寝ている自分の子供の事を気にする......一応防音の結界を張っているので聞こえないはずだが起こしてしまうと中々寝ないのだ。


 「あぁ、すまない、グリ......モグリ様の名前を一部を受け継いだのだ......立派な子になるだろう」


 「そうねー......ところで、そうなると子供達を外に出すのよねー?」


 「うむ......」


 「んー......あの子達、髪を染めさせてくれるかしらー......」


 「ミイとユキか?」


 ミイとユキ......この二人の髪の色は共通して金髪だ。

 もちろんドーロも金髪だったが現在は黒く染めている。


 ここ《ナルノ町》では3、4年前に女神の事件が起こった。

 当の本人を知っているモグリ邸の先生達は複雑な気持ちだがアオイの容姿を真似る人達が急上昇。


 美に迷いのないミクラル王国の人達は魔法整形や変身魔法であの手このてでアオイの真似をした。

 アオイの容姿はミクラルの人にとっては【神の作り出した容姿】だったのだ。


 だが、それを真似た事により【神の逆鱗】に触れてしまい新種のモンスターをこの町に産み落とした。



 そのモンスターの名は『ブルゼ』......今では虫の王のモンスターとしてギルドで登録されている。


 『ブルゼ』は次々とアオイ容姿を真似た者を無惨に殺しまくり《ナルノ町》は壊滅状態になったのだ......その日から《ナルノ町》では金髪、青い目をする人を見かけるとあの日のトラウマを思いだす人が大量に発生。

 しまいには「金髪の髪の人は女神だ!」と言い出す人も居る始末。


 その現象を止めるため国は《ナルノ町》での金髪と青い目を禁止。

 金髪の人は他の色に染め。

 青い目の人はカラーコンタクトを使うか魔法で目の色を変える様にした。



 だが。



 「あの子達、金髪を変えたがらないのよねー......」


 ミイの方は「アオイ先生みたいになりたい!」と言って染めるのを拒否し。

 ユキの方は「おかぁさんと同じがいいです!」と言って染めるのを拒否する。


 「アオイ先生ねー......」


 「理由が理由だから無理矢理は出来ないな......モルノ町につくまで二人にはフード付きのローブをつけてもらおう、幸いにもあの事件を言葉に出して言う人はほとんどいないのでただの伝説になりつつあるしな」


 「そうねー」


 「では決まりだな、此方から手配しておく、子供達を安全に......遊ばせ......学ばせるぞ」


 「遊ばせるでいいのよー」




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る