第288話 トラブル発生

 「ごめんなさい!」

 

 「っ!」


 透明な板にヒビが入っていき......そして......


 すごい音を立ててすひまるさんの所の板は割れ、水が漏れだした。


 「みんな!塞いで!」


 あわててみんな泳いで行くが遅い。


 水の流れも大きくなり、その流れでいくつかの板も魔皮紙の外へ流された。


 {おおーっと!アドベンチャー科ここでトラブル発生だ!どうやらプールの壁が壊れた模様!現在の気温は60℃を超えぐんぐんとまだまだあがってきています!耐えきれるのか!?}


 水がなくなった瞬間滝のように汗が出てきて暑さが身体を蝕みだす。



 「ごめんなさい......ごめんなさい」


 すひまるさんがみんなに謝っている所に女リーダーが静かに歩いていき



 パシン。



 え......嘘でしょ......

 女リーダーはすひまるさんの頬を思いっきり叩いた!?


 「あんた本当にいい加減にしなさいよ!」


 「ひ......すいません、ごめんなさいごめんなさい」


 「ごめんなさいじゃないわよ!あんた、何してるかわかってるの?」


 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 ............なんだろう、この光景......


 「許して......ごめんなさい」


 ......必死に謝るすひまるさんの姿を見て、昔の自分を思い出す......女の同級生にいじめられ必死に謝っていた自分を......



 さらに《アルティメット》のリーダーも、すひまるさんに寄ってきて


 「そうでござるよ、本当にやってくれたでござるな」


 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」



 

 ......................................................あの目、やめてほしいな。




 「ごめんなさいじゃないでござるよ?どうするんでござるか!」


 「ひっ、許して」


 「お、おい......それくらいに......」


 「筋肉しか取り柄のないアンタは黙ってなさい!」


 「お、おう」


 暑さでイライラも増して来ているのかだんだん口調も強くなってる......

 

 {現在温度はぐんぐんあがり70℃!みなさんマジック科を見てください!次のステップへ動き出してますよ!おおっと!ここでマジック科一人出ていきました!どうやら魔力が足りなかったひとが居たようです!}


 放送のひとは此方を見せないように誘導してくれている。



 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 「まだ言うか!この下級......」


 「そこまでだ!」


 「!?、アオイちゃん......?」


 俺は気が付くと女リーダーに叫んでいた......



 「事故だよ?わからない?すひまるさんも悪気があってやったわけじゃないんだ、それをウダウダウダウダと......ウダリータか!」


 「ウダ......え?」


 「勝てばいいんだろ?勝てば!」


 暑さで俺も何かイライラしてるのか段々と俺の中の何かが込み上げてくる。

 怒ってるのか?怒ってるよ!


 「で、でもこの状況無理でござるよ!もぅげんか....」


 限界ぃ?


 「それはお前の限界だ!確かに一人じゃ限界だが!俺が何とかする!」


 一人称なんか知ったことか!


 「アオイ......ちゃん?」


 「アオイさん?」


 「みんな、俺から離れるなよ?すひまるさん、後は俺に任せろ」


 「ごめんなさい......」


 俺は怒りを抑えて目を閉じ集中する。

 

 「ぬお、アオイから耳と尻尾が生えてきたのじゃ!?」


 そして......


 「ふぅ......初級奥義【適応】......」


 力を一度抜き自分の魔力を出しアドベンチャー科生徒一人一人を包み込む。

 もちろん、外見ではわからない。


 外見で変わったのは俺にネコミミと二本の尻尾が生えたくらいだ......これ説明どうしよ。


 「身体が......暑くなくなったでござるよ!?」


 「な、何したのアオイちゃん、それにその格好......獣人?」


 先程の俺の中の怒りはいつの間にか消えていて頭はスッキリしてる。


 「うーんとね......ひ、み、つ。あ、ちなみに安心してこの獣人の耳と尻尾はあると集中できるから変身魔法でつけてるだけ」


 「そ、そうなんだ......?」


 ちなみに嘘である。

 この格好は俺が道場の時に修行していた姿でこの姿になると魔力の操作が出来るようになるのだ。


 もっとも、使えるのは初級だけだが......


 師匠がもしも人間にバレそうなら「変身魔法でつけてるだけ」と言えと言われている。

 どうやら他の道場のみんなにもある効果みたいだがそう言うと納得するようにしてくれているらしい。


 「もしもの時のためにつけてて良かったぁ......」


 「どうなっておるのじゃ?これ」


 「ひぅっ!?」


 ルカが思いっきり俺の尻尾を掴んできたぁぁぉあ!

 は、はなせぇえ!


 「ひゃ。ひゃなしてぇ......」


 こしょばゆいというかなんかこう......変な気持ちで魔力操作が雑になる。


 「また暑くなってきたでござるよ!?」


 「ルカぁ......」


 「ほほぅ?離すのじゃ」


 ルカは尻尾を離してくれた。


 「はぁはぁ......」


 急いで魔力操作を戻す......あぶねぇ、久しぶりだから忘れてた。

 ........................ちょっとイきそうだった。


 「また戻ったでござる」


 「これは本当はズルかもしれないけど」


 俺はすひまるさん達の近くに行き、女リーダーの人に目を合わせる。


 「たぶん勝負はこれで勝つ、でもやったことを見過ごす程僕は甘くないよ」


 女リーダーは気まずそうに俺を見ている......きっと暑さでイライラしてしまった衝動的な行動だったのだろう


 「何よ、わ、私もこいつからひっぱたかれればいいの?」


 それを聞いてすひまるさんが顔を青くする......たぶん、そう言うのが苦手な優しい子なんだろう。


 それに、やられたからやられ返されればいいなんてそう言う問題じゃない答えは至って簡単なんだ、いつも............





 そう、こう言う喧嘩はいつも答えは簡単。





 「ううん、違うよ。あなたはこの勝負にみんなと勝ちたかった......すひまるさんも勝ちたい気持ちがあって色々空回りしちゃった......」



 「......」



 「お互いに気持ちは同じ......同じ道を目指してたんだ......ただちょっとだけ道が曲がっちゃったんだよね」


 俺はすひまるさんが泣きそうなので目を合わせ撫でる。

 先生の時の癖だ。


 「すひまるさんが謝ってるんだから、後は道が真っ直ぐなあなたがそれを受け入れるだけだよ」


 「......どうすればいいのよ......」


 「うーん、そうだね、取り敢えずここはお互いに握手でお互いに許して、もうこの話を終わらせよ」


 

 「わかったわ」


 

 そうして、女リーダーは少し府に落ちなさそうだがすひまるさんと握手をした。


 これが大事なのだ、その場で一度二人で終わらせる。

 誰でも出来そうで中々出来ない難しいこと。








 そして、タイムリミットの30分。





 {............なんと!こんな事があるのか!?灼熱の暑さにも耐え!極寒の寒さにも動じず!途中のトラブルもなんのその!1つ言うのであれば途中から水着じゃなくなったのが残念......《我慢比べ》一位!アドベンチャー科です!!!}








 「「「「おおおおおおおおおぉおぉ!」」」」

 


 


 これで最後の競技は《騎馬戦》のみ!

 


 


 


 

 

 


 

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