第286話 《物運び》

 {午後の部、最初は一年ビジネス科より提案された《物運び》!一年はグランドの所定の位置についてください}


 「えーっと、みんな居るかな?」


 グランドにはそれぞれ三ヶ所に円が書かれていて、その上にそれぞれの科であつまっている。

 俺はクラス代表なので点呼を取って報告しなければいけないのだが......


 「うむ......ござる達がまだいないのじゃ」


 「あれ?《アルティメット》のパーティーの人達みんな?」


 「の、ようじゃの?」


 時刻は12時55分、確かに残り時間はあるけど13時開始だからそろそろ来てくれないと困るんだけど......



 「お、来たみたいなのじゃ」


 ルカが指差すところを見るとパーティー全員が走ってきていた。


 「お、みんな来たね」


 「すまないでござる、日ざしが強くて遅れたでござる」


 「ん?日?」


 「そんな事よりアオイちゃん、みんな来たから報告しなくていいの?」


 女リーダーの人が俺の前に出て言ってくれる。


 「あ、そうだった、えーっと」


 俺は渡されていた魔皮紙に魔力を通す。

 これで此方が全員集まった事が伝わったはずだ。


 {では全員集まったようなので《物運び》を開始します!}


 どうやら俺たちが一番最後だったみたいだ。


 そして、各科の前に転送魔皮紙が置かれその中から《物》が出てくる。


 「うわぁ......なんじゃこりゃ」


 転送されてきたのはシンプルに黒い球体や柱。

 三角形やトゲトゲなモヤットボールみたいなのが現れた。


 {さぁ!みなさんの前に現れたのは大小形様々な黒い物体!これは高度な土魔法で作られた《物》です!ちなみに今回はエメラルド冒険者のルコサ先生協力の元!作っていただきました!}


 あのいつも頭痛がして保健室に行く先生が作ったのか。


 {ルールは簡単!この魔法で作られた《物》をクラス全員で協力し500メートル先の体育館に敷かれた魔皮紙の上に置いて早く全て無くした科の勝利です!尚、生徒達は一人一つの魔皮紙しか使ってはいけません。}


 この日まで《物》については公開されなかったがこれなら作戦通りいけそうだ!





 {それでは、よーい......はじめ!}





 各科一斉に動き出す。

 ちなみに科によって人数が違い、《アドベンチャー科》は不人気らしく他の科と比べて二倍以上に人数差が多い。


 

 「みんな!行くよ!」


 「「「おおー!」」」


 「筋肉よ活性化せよおおぉマッスル!」


 マッスルはそう言いながらかっこよく緑のアームの装備を付ける。

 装備には特殊加工されていて魔力を流すと筋肉のツボを刺激して強化される仕組みだ。

 マッスルパーティーはみんなそれをはめて次々と大きくて重たそうなものを運んでいく。


 「さぁ!僕らもすぐに......」


 {おーっと!ビジネス科速い速い!みるみると荷物がなくなっております!}


 「え!?」


 その放送を聞いてビジネス科を見るとまだ数分しか立っていないのにそれぞれ一人一人荷物を持ち体育館に向かっていてもう半分ほど無くなっていた。


 「はやっ!」


 {流石未来に商いを考えている者達、一人一人が効率良く運ぶために計量を魔法で行い、それぞれ分担している!そして重いものも数が居ればなんのその!全員で風の集団魔法を使いみる見ると、なくなっていくぞー!}


 流石これを提案した科だ、維持でも負けない様にかなり準備してきて居たのだろう、そして集団での風魔法......なるほど、もしもこの荷物が崩れやすかったとしても風を操り浮かせてるので傷も付きにくい。


 引っ越しの時に便利そうだ!(感想


 「ってそんなんじゃなかった!僕らも早くしないと!みんな!」


 {おおーっと!アドベンチャー科も動き出したぞ!一人一人が何やら線路を作ってますね?}


 「急ごう!これを作れば後は楽だから!」


 そう、俺達の作戦は《ザ・トロッコフィーバー!》......ちなみに名前は俺が勝手にそう呼んでる。

 ここから体育館の魔皮紙までは一直線で約500メートル、そこまで予め作っておいた線路を転送魔皮紙で取り寄せみんなで組み立てて最後はトロッコを使いフィーバー!って戦法だ。


 線路事態はどこに運んでもいいように曲がったのとか色々作っており、みんなで放課後他の科にバレない所で組み上げを練習していたので早くできるはず!


 むしろこの線路さえ早く出来れば後は楽に運べるのだ。



 ちなみに線路の形は例えるなら元の世界の子供の頃に遊んだプラレールの線路の形をイメージしたもの。



 {アドベンチャー科も良い連携!将来【冒険者】になる者達はパーティーでの連携は命に関わる!さぁどんどん線路が体育館まで出来ていくぞー!}


 「みんな頑張るよー!」


 「ルカさん!?そこはそれじゃない方がいい気が......」


 おっと、トラブル発生か?

 声の方を見るとルカが曲がった線路を繋げぐにゃぐにゃに作っていた。


 「この方がきっと面白いのじゃ!」


 っうおい!子供か!

 と言うか!


 「ルカ!なんでここに居るの!?」


 ルカは力があるのでマッスル達と同じで荷物をアーム装備をはめて運ぶはず。


 「こっちの方が楽しそうなのじゃ」


 「うーん......でもほら!今は遊びじゃないから、ね?お願い」


 「むぅ、仕方ないのじゃ......」


 あ、言えば素直に聞いてくれるんだ。

 ルカはボーリングの玉くらいの大きさの荷物を片手で拾い上げて体育館へ行った。


 「さ!みんな!がんばろ!」





 それから10分。



 「完成!」



 ようやく俺たちは体育館までの線路を完成させた!


 {さぁ!作業も終盤です!アドベンチャー科が現在半分程のこっておりますが、もうビジネス科もマジック科もほとんど荷物が残っておりません!ここから逆転できるか!アドベンチャー科!}



 見ると二つの科はほとんど荷物がなくなっており、俺たちアドベンチャー科を差し置いて接戦だった。


 「よし!マッスルさんたち!」


 俺は少し大きな転送魔皮紙を敷き魔力を流してトロッコを出す。


 トロッコの形はシンプルで大きな鉄かごに車輪をつけたトロッコだ。

 ちなみに、アーム装備を買う時の商店街の防具屋のおじさんに相談したら「使ってないのがあるので貸す」と快く言ってくれたのだがどうみても新品なのだが......

 

 「「「まっそぅ!」」」

 

 マッスルパーティーは全員でトロッコをかかえあげて線路に置いてくれる。


 「よし!みんな!つめこめえぇ!」


 

 {はやい!アドベンチャー科速いぞ!トロッコに荷物を乗せ魔力をトロッコに流すことで線路をトロッコが走る走る!そして体育館から帰ってくるまで約一分!これはあるぞ逆転あるぞ!}



 みんなで荷物を運び、トロッコを回す!


 実況が言ってる通りにどんどん此方の荷物はなくなっていく。

 

 {アドベンチャー科!追い返してきてるがしかしここでビジネス科あとひとつだぁぁ!}


 「くっ!あと少しなのに!」


 見るとビジネス科の所にはあんなにあった荷物が無くなっていて最後はボーリングの玉くらいの大きさの荷物だった。

 此方のみんなも休みなしで運んでいるので疲れてきてる。



 「最後までみんな諦めないで!」


 

 {さぁ!マジック科も最後のひとつ!}



 くっ!マジック科まで!


 {しかしここでトラブル発生だ!それもそのはず!実はルコサ先生意外といじわる!ニヤニヤしながら作ったその玉の重さはなんと一万キロ!10トン!いやー!ほんとにどうやって作ったんでしょうね!流石エメラルド冒険者です!まさに企画外!}


 ......ん?


 アリスト科ではその玉を全員で風魔法を使い運ぼうとするが重すぎて一メートル進んでは地面に落として休憩しまた一メートル進んでは地面に落として必死に運んでいる。


 マジック科ではなんとか軽くしようとその玉に魔皮紙をくっつけまくっているが効果がなさそうだ......



 いや......えーっと......



 {おーっと!ここでアドベンチャー科最後の玉に......あれ?}





 俺は。

 '全て荷物を運び終えたのを知らせる魔皮紙に魔力を通した'





 {なんとなんとなんと!これは番狂わせだぁぁあ!アドベンチャー科!荷物を全て運び終えました!一位はアドベンチャー科です!}





 「「「「おおおおおおおぉおおお!」」」」



 歓声が沸き起こる。




 {なんと!ここまで最初遅かったのは玉を運んでいたからか!?正直みんな線路を組んでるだけとおもって見ていなかったぁぁ!}




 「や、やったね!みんな!」


 みんな疲れてその場に座り込み喜ぶ。

 そして


 「俺たちのマッスルの勝利だ!しかし、本当にすごいな!このアームと俺たちのマッスル!まったくそんなもの運んだの気付かなかったぜ!」


 「う、うんソウダネー」



 俺は見ていた。

 その10トンある玉......ルカが片手で持っていっていたのを......










 あの人何者なの......











 





 


 

 


 

 

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る