第284話 徒競走
徒競走、この競技はシンプルだ。
みんなで一斉に走って己の足の速さを競う。
「よーい」パァンの合図とともにスタートダッシュからのみな、ゴールを目指して一直線に走る。
信じるのは己の足のみ!
......の、はずだったが。
{《アドベンチャー科》現在ビリです、ここからどう巻き返すのか!}
「はぁはぁ......どうして発動しないんだよおお!」
空をゆっくり飛ぶじゅうたんから見下ろす人たち。
テントから見る生徒達。
そこら辺に居る出店の人達。
俺は相変わらずデカイ胸を揺らしながらみんなの注目の的になっていた......悪い意味で!
少し先には何かの魔法を使ってスイスイと走ってく生徒やそのまま足の裏に魔法陣を展開しながら進む生徒。
と言うのも。
「朝は普通に発動してたのにぃ」
自分の靴のインソールに仕込んである【魔皮紙】は魔力を流した状態で衝撃を与えると風の魔法が発動し歩幅をかなり伸ばす。
登校時に使ってたものだ。
......だが、何故か今は反応しない。
{《アドベンチャー科》アオイさん頑張ってください}
気が付くと他の生徒はゴールしていた......
現在グランドを走ってるのは俺だけ......
{頑張ってください}
うるせー!頑張ってんだよ!くそ。
なんか知らんが涙が出る。
くそ、くそ、くそ!
この状況って徒競走で足がめっちゃ遅い人が他の早い人と組まされて一人取り残されて注目を浴びるアレじゃねーか!
まさか自分がここに来てその人になるとは思わなかった。
{アオイさん、頑張ってください}
この放送がめっちゃ心にささる。
俺は顔を真っ赤にしながら再び準備されていたゴールテープを切る......くそぅ。
自分の科のテントに戻ると先に走り終わったみんなが励ましてくれるのがまた泣きそうになってしまう。
{アドベンチャー科速い速い!独走だぁ!}
俺とは違い次の《ストロングウーマン》の女リーダーは俺とは違いどんどん走って他の科と差をつけている。
「いけーー!」
「アオイさんのぶんをみんなでとりかえすぞー!」
グサッと刺さる言葉ありがとうございます!ごめんよ!
それぞれの科に得点がある。
勝利した方が多く得点が貰えるのだ。
{アドベンチャー科、頑張ってください}
「あれ?」
女リーダーの人が走って次の走者、すひまるちゃんも調子が悪いようだ。
俺と同じで魔法を使えずに走っている。
「おい!しっかりはしれー!」
「魔法使え!」
俺の時とは違い野次が飛んでいる......
{アドベンチャー科、頑張ってください}
「なにしてんだー!」
「はやくしろー!」
........................
すひまるちゃんは涙をこらえてゴールし、しばらく帰ってこなかった......
この時から俺の中の何か忘れていた感情が少しよみがえり始めた。
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