第275話 予期せぬ『魅了』
時刻は少し遡る。
モルノスクールから遠く離れた誰もいない空き家の屋根からクロエとルコサは今日もアオイを監視していた。
しかし......
「......なぁ、ルコさんよ」
クロエはあまりにも何も変わらない日常でイライラを抑えきれなかった、なので口調もすこし強くなるが......
「んー?なにー?」
昔は良くパーティーを組んでいた仲だ。
クロエの怒りなど慣れてるかのようにルコサは寝転んでる状態でダルそうに答える。
「俺達は何してるんだよ?いい加減話せや、殺すぞ、これじゃぁただのストーカーじゃねーか」
ルコサは頭をかきながらそのままの態勢で心底ダルそうに答える。
「何もないことは良いことでしょ?」
「ちげーよ、何もないなら無いでこの仕事は終わらねーのかって話してんだ」
「うーーーーん......」
「まぁ、ルコさんに言っても意味ないわな、【神】からは何もないのかよ?」
「前にも言ったはず何かあるときは必ず俺が知ってる状態になる、俺が悩んでる時点で何もないのは確定してるんだよ」
「くそ!」
クロエが苛立っている中、空き家の下から二人が屋根に飛んできた。
女の制服姿の一人は長い黒髪を揺らして屋根に着地すると、片手で髪を払い整えクロエに話しかける。
「相変わらず怒ってるさね?そんなに怒りすぎると将来肌のしわが戻らなくなるさね」
「あ?怒ってねーよ!んなこと言うテメーは俺より年下じゃねーかどうみても!ルダさんよぉ!てかなんでアオイと同じ制服着てんだよ!」
クロエは小型犬のように吠えて威嚇するがルダには逆効果......むしろ「年下」というワードをルダは噛みしめるように聞き、両腕を自分の前で組み顔を赤らめながら。
「あぁ......あぁ!クロエには私が【年下】に見えるさね!?」
「あ、ぁあ?それがなんだよ」
「クククククッ......」
「な、なんなんだよ」
ルダはこれ以上の快感はないと言わんばかりに体が震えているのをクロエは気持ち悪く見ている。
それを事情を知ってるルコサと、気持ち悪がるクロエをめずらしいと見てるオリバルがルコサに話しかける。
「ルコサ、クロエが気持ち悪がるのって何年ぶりだっけ......」
「あー......確か学校で会った頃だから11年前とか?」
「そんなにか、久しぶりだな......」
「あの頃が懐かしいよ」
そんなことを話してるとクロエがルダを無視してルコサとオリバルを振り向き怒鳴る。
「お前らこいつなんとかしろ!」
「はいはーい」
「いや、俺はあんまりルダ知らないし......」
「ちっ、使えねー......交代か?」
「交代だ、今度は俺が見る......」
「はいよ、あー......やっっと暇な時間から解放される、えーっと」
クロエはルダ達が来て解除していた【千里眼】の魔法で再びアオイを見ると......
「今、『対象』はみんなの前で変なポーズを......」
それを聞き、真っ先に叫んだのはルコサ。
「!。まずい!みんな全力で町を離れるぞ!」
「「「?」」」
三人は訳がわからなかったが流石一流の冒険者だ。
日頃めったに真剣に焦らないルコサのその言葉を緊急事態と察知してそれぞれすぐに動き出す。
ルコサは叫んだ後に上に一度飛んで【転移魔法】消えながら外を目指し。
ルダは制服が破れるのも気にせずに背中から昆虫の翼を生やして上半身下着姿で一直線に猛スピードで飛んでいく。
そして、クロエとオリバルは【獣人化】し、家から家へと跳び移りながらルダ達に負けないくらい早いスピードで町の外へ出ようとする。
「チッ!なんなんだよ!」
そして、ついにその時が来た。
「『魅了』」
どこから声が聞こえたわけでもない、だが【神の使徒】である彼等には聞こえていた、そして
「なんだありゃぁあ!!!」
クロエがただならぬ気配を感じて振り向くと学校の方からドーム上にピンクの『何か』が広がってきてる。
それはクロエ達よりもはやいスピードでどんどん町を呑み込んでいく......
「くそ!オリバ!全速力だ!」
「あぁ......!」
オリバルも先程よりスピードをあげる、全力疾走だ。
ようやく外が見えた頃にはすぐそこまで来ている!
「くそ!間に合え!!!」
「うおおぉ......!」
クロエとオリバルが
結界はクロエ達を通したがピンクの『何か』は通さなかったのが救いだった。
「はぁはぁ......」
二人とも息があがっているが警戒は解かない、町の結界から一歩出れば魔物達の縄張りだ。
二人のもとへ、ルコサとルダもやってきた。
「おい!何が起こったんだよ!」
「......」
クロエはルコサの胸ぐらを掴んで訴える。
ルコサも真剣にクロエを見つめる。
「ちっ!」
クロエは離しもう一度町を見る......町はもうピンク一色で何もクロエ達には見えない。
「これは『魅了』......」
「!?」
「これがあの『魅了』......?」
オリバルは聞き返す......それもそうだ、本来『魅了』と言うのは自分のフェロモンをコントロールし、狙った相手に合うフェロモンを構成、そして恋愛感情を刺激する魔法。
しかし、目の前の魔法は明らかに違っていた。
「説明......出来るさね?ルコサ」
いつ服を着たのか、また制服姿になっているルダもルコサに問い詰める。
そしてルコサはゆっくりと結界を見ながら......
「『女神』の作り出した魔法、『魅了』......僕たちの知っている【魅了】はその本物の『魅了』の劣化番......『あいつ』の『魅了』は今まで不完全だった......はず」
「不完全さね?」
「あぁ、今までの『魅了』は確かに規格外で予想もつかないことを起こしてきたがこれは違う」
「腑に落ちないね、じゃぁこれはなんだい?」
ルダはピンクで何も見えない町を指す。
「あぁ、これは完全な『魅了』だ......この中では『女神』中心に世界が広がっている」
「!?」
「そう、『女神』の『魅了』は【『この世界に干渉して操作する』】」
「それじゃぁまるで【神】じゃないさね!?」
「最初から言ってるじゃないか、『女神』だって......君らは相手してるのは魔王でも最強の【勇者】でも国でもなんでもない!【『神』】なんだよ!」
ルコサは説明しながら怒りを抑えきれなくなる。
「何と戦うつもりだった?最強の魔物か?最強の誰かか?何を見ているつもりだった?世界で一番美しい女か?それとも【勇者】の成長記録か!!!違う違う違う違う違う!お前らが見てるのは戦うのは正真正銘の『神』だ!!!」
ルコサの言葉をクロエ、ルダ、オリバルは無言で聞いて反論もしない......否。
反論もできないのだ、みんな『女神』を舐めていた。
「じ、じゃぁ、どうして殺さなかったんだよ......【『アオイ』】を......」
当然の疑問だ。
それならば最初にアオイを殺せばいい、だが。
「言ったよね......アオイは【神の子】でもある、殺せる時が来ないと絶対に殺せない」
「どうしたらいいんだよ!なんで監視してたんだよ!」
クロエは焦る、目の前で起きてるのは『異常』で人生で目にしたことない出来事だ。
ルコサは冷静を取り戻し考え始める。
「待って、たぶんだけど、この『魅了』は『女神』にとっても予想外......だってそうだろ?使うならもっと強いのを使うはず!それこそ【結界】なんて効かないくらいの......監視......そうか!」
ルコサは町の結界に近づきそして入ろうとする。
「お、おい!何してんだ!」
「ルコサ......!」
「なにするさね!」
ルコサはみんなを向きいつものようにダルそうに答える。
そう......いつもの様に......
「あー......たぶんこれからの指示はクロエに来ると思う、俺は中で『世界』に干渉する......死んだらごめんな?」
「おい!待て!」
クロエの咄嗟にルコサを戻そうと差し出した手は届かず。
ルコサは町へ引き返して行った......
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