第270話 『報告』
「おやすみ~」
「おやすみなのじゃ」
『器』と夜の挨拶を交わし。
ルカは『器』が寝たのを確認して
「......」
布団に潜り【気配遮断ローブ】を布団の中で被り出る。
このローブはどうやらグリードの最重要機密装備でルカは何かあったときのために『女神』から渡されていた。
これでルカは神の使徒から見られることはないが、念には念を込めて秘密の裏口から出る。
この裏口はドアなどは付いてなく壁に魔法陣も無いのだが魔力を流すと通り抜けれるようになっており音をたてずに外に出れるのだ。
「さて、と、ワシが最後かもしれないのじゃ」
月明かりの中、白い着物の上にローブを被って歩く......この時間でも当然歩いている人も居るがその人たちはルカに気付くことはない。
そのまま歩いていくと酔っ払った二人の男性が前から歩いてくる。
「うぃ~飲み過ぎたぁ~」
「いや~飲んだ飲んだ~」
ルカはその二人にぶつからないように気を付けながら歩く。
「お前最近はぶりがいいなぁモヤっさん~」
「うぃ?そうなのよ!これがよ!今話題の《うまかっちん》!あっこの【唐揚げ】の肉を仕入れてるのは俺なのよ!」
「うぇー!お前まじか」
「アバレーに行く商人なんて少ないだろ?俺はそれを狙ってたのよ~!そしたらこの通りよ!おーあーたりー」
「モヤっさん」と呼ばれた人間はかなり上機嫌だ。
「良かったじゃねーかー!このあともおごれー!」
「いいぜいいぜ!そういや1つ気になることがあるんだよなぁ」
「なんだよー?」
「俺が前に売ってたやつが海賊でよー、ちょっと金額ちょろまかしたら捕まっちまったんだ」
「お前それやべーハハハ」
「あんときゃ冗談ぬきで命終わるかとおもったぜ......だがよ!」
「なんだなんだー?」
「そんとき救ってくれたのが真っ黒い鎧の騎士でさー......」
そこまで会話が聞こえてそれからは声が遠くなってゆく。
「騒がしい奴らなのじゃ、人間は......」
ルカは目的地の公園の噴水に到着する。
「......」
そして噴水の一部分に魔力を流すと噴水の水が鏡のようになる。
そして......
とぷんっ
と音がするとその場にルカの姿は居なくなっており、いつもの噴水に戻っていた......
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふむ、来ましたか」
「少し遅れたのじゃ」
ここはどこか解らない場所。
解るのは石タイルの床と壁、そして大きなクリスタルの机に装飾されたイス。
そしてそのイスには七人、先に座っている。
ルカは自分の席に着くと提示報告が開始される。
「では、『女神』様に一番側近であるルカ様からお願いします」
シルクハットを被った人間はルカを指名し、ルカは「のじゃ」といい報告をする。
「『女神』様のメッセージをそのまま読むのじゃ」
ルカも含め、みなに緊張が走る。
「『やっほー♪みんな元気ー?私?すっごい元気よ☆こっちは順調すぎて退屈くらいキャハハ☆神の使徒も何してるか気付いてないみたいだしバカだよねぇ、ホント気付かないバカばっかり!キャハハハハ♪ところでみんなは大丈夫かなー?まさか失敗してないよね?早くみんなの顔見てみたいなぁ、じゃあね、チュッ♪』......なのじゃ」
一見ふざけていると見れるがそこに居るもので笑うものは居なかった。
そして一人は。
「うおおおぉ!流石我らの『女神』様ですぞ!完璧すぎるですぞ!あぁ!『女神』様!」
と興奮している。
それを横目に話は進んでいく。
「では、ムラサメさんの方は?」
「我の方も順調ですぞ、校内に先に潜入し誰にもバレないように『女神』様のサポート、そしてアバレーでは代表騎士として着々と事を進めておりますですぞ」
「それは良いですね、それでは......みゃさんの方は?」
指名されてまだ小さい見た目の白く長い髪の少女は報告する。
「リュ、リュウトパーティーは魔王攻略を続けております......今のところ『女神』様に対しての敵対意思は、ぁりません......」
「あなたのパーティーは私の商団をかぎまわり時には攻撃してきています、それでも良くその口が聞けるな小娘......」
シルクハットの男はその少女に対して怒りを抑えれない。
みゃはその返事に黙っているのが油をそそいでしまった。
「なんとか言ってみろよ!出来損ないの元魔王が!」
「......っ」
しかし、それを静止させたのは意外な人物だった。
「みゃは良くやっている」
「あ!?どうして庇うんですか?エスさん」
漆黒の騎士、『エス』は以前よりも禍々しいオーラが増している。
現在の状態のこの中ではトップクラスの強さだろう。
エスはそちらの二人を見ずに淡々と答える。
「少なくとも、みゃが此方側に来てから俺とリュウトが戦うことが少なくなった、みゃがザコの拠点に出来るだけ導いてるからな......その分俺も仕事ができる」
しかし、その言葉を聞いてまた反応する女性が一人。
「あら、それだと私たちが雑魚みたいな呼び方ねぇ」
その女性はナイフを取り出しくるくると回して声は落ち着いているが静かな怒りを感じる。
「そう言っている、集団でかかってきても俺一人に壊滅されそうになる弱い奴を弱いといって何が悪い、エンジュ」
エンジュはたまらず持っていたナイフをエスに向かって殺意を込めて投げる......がエスはそれを二本指で掴み止める。
「......俺達の攻撃は禁止されてるはずだが?」
「あらぁ?《弱い奴》から受けた攻撃を《攻撃》と認識してくれるのかしらねぇ?」
「フッ......確かにそうだな」
「チッ、忘れちゃ困るねぇ、あんたは『女神』の力で強いんだそれがなければ......」
「なら諦めろ、それがあるかぎりお前らは俺に勝てない」
「ちっ......」
そこまで聞き、冷静になったシルクハットの奴隷商の主は話を進める。
「わかりました......エスさんもみゃもエンジュさんも引き続き役目を果たしてください、では次に【勇者】ヒロユキパーティーについて、『ユキナ』さんどうですか?」
端のほうでずっと黙っている二人のうち一人の幼女。
黄緑色の髪のショートで髪と同じ色の目の小学生くらいの子、『ユキナ』はゆっくりと答える。
「ヒロユキ、順調、リュウト、同じ、魔王攻略中」
「ふむ、なら問題はないんですね?」
「肯定、しかし、ユキ、注意必要、私、疑われてる」
「ユキ......ふむ、引き続き警戒を」
「御意」
「なぁおい?やっとみんな話は終わったかよ?」
そして最後の一人が口を開く。
その男は頭をかきながら眠そうにあくびをして
「くだらねぇ......終わったなら俺は帰るぞ」
「
それを聞き『トミー』は少しイラつきながら答える。
「あーおい?俺は《六英雄》なんてそっちが呼んでるだけでただ強そうな奴をかたっぱしから殺してるだけだ、今の【勇者】なんぞ相手になんねぇ......俺が戦いてーのは完全な力を引き出した【勇者】だ......ちょっくら魔王でも一ぴき殺そうかと思ったがまだ『女神』様が駄目だと言うから暇でしかたねーんだよ」
「あなたに対しては『女神』様から直接の命令が来てるはず、それはどうなのですか?」
「あー?おいおいおいおい?俺が『女神』様の命令をしないわけないだろ?お前らとは違うんだ」
「『女神』様に忠実なのはお前ではなく我ですぞ?『女神』様が選んだ人間だから多めに見てる発言ですぞが、これだけは言っておくですぞ」
「おいおい?あー?おい?」
「ですぞ」
「落ち着くのじゃ、現在、『女神』様は『器』から出れない、こんな所でワシらが失敗すると」
『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
『女神』
■■■が■■により■切られ■■■■により■■時■■により■られ■■■■に舞い降りた■
『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
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