第269話 お買い物
「えーっと......依頼はっと」
授業が終わり放課後、俺は《なんでも箱》を自分の席に持ってきてチェックしようとしていた。
「どんなのが来てるのか気になるのじゃ」
ルカも前の席から此方を覗きこんでる。
普通なら奴隷を取られてるからこう言うの反対するかと思ったけど......どうやらルカは学校事態が珍しいのか色々と興味津々に楽しんでる。
「んとね、あれ?」
《なんでも箱》の蓋をあけてひっくり返したが一枚しか入っていなかった......
いや、確かにいっぱい入ってると困るけど......こんなもんなのかな?
「なんじゃ、一枚なのじゃ?」
「うん、内容はね」
内容が書かれてる魔皮紙を開くと時間と場所が書かれているだけだ。
「なんだろ?え?これもしかして果たし状!?」
「なんと!ついにワシ達にも来たのじゃ!」
「なんで嬉しそうなの......でも警戒しとかないと......」
取り敢えず「ワシに任せておけば問題ないのじゃ!」と言うルカを連れてそのまま指定の場所へ向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「こんにちは!アオイちゃん!」
「あ、あなたは!」
指定された場所は学校の坂を降りた市場にある《ミクラルバーギャー》の店の前......というかこの店もと居た世界の○クドナ○ドじゃね?
そして俺を呼んだのはクラスの女性パーティー......確か、《ストロングウーマン》のリーダーの人だ。
「あなたがこの魔皮紙を?」
「お主なのじゃ?」
「あ!ルカさんも来てくれたんだ!嬉しい!そうよ、私があれを入れたのよ」
「えと、どういったご用件で?」
ごくり、と唾を飲む。
ここでいきなり頭突きをかまされたら俺は対処できなくてダメージをくらってしまうだろう......下手したら頭蓋骨損傷の脳出血で死ぬ。
「用件は簡単よ、一緒にお買い物!みんなでしましょ♪」
「「へ?」」
頭突きされると思って構えてたので気のぬけた声が二人とも出る。
「......?」
「あ、えーっとなんでもないよ!うん!何でもないよね!ルカ!」
「そそそそそうなのじゃ!」
「なんで二人ともアタフタしてるの......フフ」
これはこれで良かったのかな?
取り敢えずルカに貰ってた攻撃魔法の入った魔皮紙は使うことなさそうだ......
「それにしても、お買い物ですか?」
「うん!前に言わなかったっけ?」
そう言えば言われた気がするような、無いような?
でもどうしてお買い物?うーん......あ!なるほど!荷物持ちか!
「わかりました!お買い物いきましょう」
「うん、じゃぁ最初はここで少しお話ししましょ?ルカさんもいい?」
「ふむ、まぁ良いのじゃ、この店に来たこともないのじゃ」
ルカがそう言うと女性リーダーの人がものすごい驚いていた。
「えぇ!?ルカさん無いの!?」
「のじゃ?いかにも」
「この店......ミクラルのどこに行ってもあるんだけどなぁ......」
本当にあの店なんだな。
三人でドアの前に立つと上のセンサーが反応してドアが開く。
自動ドアだがもちろん使ってるのは電気ではなく魔力なのだろう、店に入るとカウンターがすぐ前にあり「いらっしゃいませー」と店員さんが言う。
「うわぁ......似てる」
「どうしたのじゃ?」
「どうしたのよ?」
ほとんど元の世界のあのMのお店だ。
少し違うのは名前が色々違うのとポテトやナゲットがない。
「あ、いや!気にしないで?」
二人が唖然としてる俺を覗いてくるのであわてて訂正する。
「そ?じゃぁ先に注文して私は席とっとくねー」
そういって女パーティーのリーダーはカウンターにいく。
さて、と
「ルカ......お願いがあるんだけど」
「ほれ、これなのじゃろ?」
ポンッとルカは俺にギルドカードを渡してくれる。
察しが良くて助かるよ......
「僕のギルドカード、今度作りにいこ?」
「そうじゃの、これでは色々と不便なのじゃ」
二人でカウンターにいくと店員は笑顔で待ってくれている。
えーっとメニューはっと......
《ハンビャーギャー》、《ターズビャーギャー》、《ちりやきビャーギャー》......舌噛みそうだな。
「どれがいんだろ?ルカ何か食べたいものは?」
「ワシはあれに行くのじゃ!」
ルカの指差した先には《限定!10段重ねビャーギャー!》と書かれた場所だった。
「え!?あれいくの?大丈夫?確かに色々具が入ってるけど食べにくいよ?結局ハンビャーガー10個買った方がやすいってことになるよ!?」
「む、ワシはあれがいいのじゃ!あれにするのじゃ」
ルカは頑なに「あれがいいのじゃ!」と言うので取り敢えずそれを頼む......絶対食べにくいと思うけどなぁ......
「僕は取り敢えず《ハンビャーガー》で......飲み物は《キーラ》二つ」
絶対これハンバーガーとコーラだよな?
こんな名前して違ったらおこだよ?
「ありがとうございました、この札を持って席に居てください」
店員から番号が書かれた札を渡されて先に取ってくれてた席に「ありがとうございます」とお礼を言いつつ座ると五分もたたないうちに机が光だし下から頼んだ品が出てきた。
【転送魔法】を使ったんだな。
そして依頼主の女性はルカの頼んだ物を見て目を丸くする。
「ル、ルカさんすごいそれ食べるの?」
ルカの前には「それ、なんで倒れないの」っと言えるくらいのハンバーガータワーが出てきてた。
......どう食べるんだろ......
「平気なのじゃ!」
ルカは置いてあったフォークを手にイスから立って上段に突き刺して食べてた。
「うむ、美味なのじゃ!」
「そ、そか良かった♪」
その食べ方なら一個ずつのほうが良さそうだけど......
まぁいいか、口にケチャップ付けて味にご満足のルカを見ると微笑ましい。
今度家庭系のハンバーガー......もといハンビャーガー作ってあげるかな?
「じゃぁ僕もいただきます」
手を合わせて「いただきます」をすると依頼主は不思議そうに見てる。
「アオイちゃんっていつも食べるときそうするよね?礼儀正しい」
「そんなことないよー、礼儀正しいというか......命の大切さを知ったというか......」
本当に感謝しながら食べないとって思う事件がね......
「あむ......うまぃ」
一口食べるとパンと肉と野菜が一気に食せる......噛むと野菜のシャキシャキ感、そして味付けされたひき肉、さらにそのひき肉の肉汁を一滴も逃さないと言わんばかりにパンに染み込んでいてそのフワッと広がる味も美味しい。
めちゃんこ久しぶりのハンビャーガーの味は最高にうまかった。
幸せ。
依頼主は俺を見て
「それといつも食べるとき幸せそうに食べるし、何よりアオイちゃんってHだよねフフ」
「ハハ、Hなの?また冗談を」
ハハハ、また冗談がうまいな。
冗談......だよね?
「冗談じゃないわよー?なんというか舌で唇のキチャップを舐める仕草とか食べたときの幸せそうな顔とか」
いや!これはたぶんJKの日常的会話の冗談だ!聞かなかった事にしよう!
「ハハハ、えと、今日は何買うの?」
取り敢えず話をそらすがハンビャーガーは美味しいので食べる。
......今度こっそりいっぱいたべよ。
ちなみにルカは10段ハンビャーガーを幸せそうに食べてて話どころじゃないみたいだ。
「うーん、そうねぇ、新しい服とか買いに行きたいし」
「わかった!」
それぞれ食べ終わった後、店を出て近くにあった服屋、《モルモル》に入る。
ここは《ノーレック》と違って色んな服が置いてある......ただ問題が。
「女性専門店......」
「のじゃ......」
隣のルカはなぜ俺と同じ反応をするのか解らないが、ここには女性用の服しかおいてない場所だった。
「?、何か問題あるの?」
「あ!いや!ないよ!ね?ルカ」
「そ、そうなのじゃ!」
別に俺が買うわけでもないし確かに問題は無いのだが......男である俺が女性専門店の服屋に入るのは抵抗があるなぁ。
「これとか似合いそうじゃない?」
速攻で依頼主は服を何着か持ってきた。
「じゃない?」って聞かれても彼女も居たことない俺が解るわけないでしょ......取り敢えず。
「うん!すごく似合うと思うよ!」
そう答えておく。
「じゃぁ少し後で試着しよっと♪次はアオイちゃん達のね」
「うん!............ん?」
ん?なんて?
「アオイちゃんってスタイルもいいし、胸も大きいしなんでも似合いそう!だからこそ、私が着れないようなのがいいわね......えーっと」
「......」
ちちちちちちちょっと待て!
え?俺着るの?女の服を?
いやいやいやいやいやいや!今まで与えられた服......
要は仕事服なのだがそれしか着てこなかったからノーカウントとして自分から進んで女の服を買って着るとか無いから!?
だって考えてみてよ!
俺が女子の服を着て鏡見て「かわいい~」とか言ったらただの変態だからね!?
「ぼぼぼぼ僕は大丈夫かな......」
「えーっと、あれとかどう?」
あれ?聞いてます?
そして依頼主の指差す先は......
「う......あれは」
白い露出の高いチャイナドレスだった......
そう言えば、仕事服以外に着た服があったな......忘れていた......
店員さんがこちらに気付いて話しかけてくる。
「いらっしゃいませーお探しの服はどちらでしょうか?」
依頼主が少し興奮ぎみに答える。
「取り敢えずあの服をこの子に試着を......」
白いチャイナドレスを指差して聞くと店員さんが申し訳なさそうに
「あー......あれは特注品でして今復旧中の《ナルノ町》にある《ゴールド》と言う所が出した服なのですがあいにく今は生産されてなくてあの一着しか......」
なんと!好機!
「そ、それは仕方ないよね!残念だったなぁ」
取り敢えず心のなかでホッとしてると後ろから誰か来て。
「ちょっと待て!」
「......へ?」
「失礼、私はこの店の店長をしている者です、あなた......」
「ぼ、僕?」
店長が舐めるように俺を見てきて目がカッとなり。
「素晴らしいいいぃ!!!あの《チャイナドレス》を試着をあなたなら許します」
えええええええええええええええええええええええええ!?
「やったね!アオイちゃん!本当に似合うと思うよ!」
「ふ、ふぇぇい。や、ヤッター......」
なんでやぁぁああ!!
その試着を皮切りに俺とルカ「なんでワシまで!?」は店長と依頼主の着せかえ人形と化した......・・・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、日もくれて帰り道。
俺は荷物番かと思っていたが買ったものは【転送魔皮紙】で送ってたので俺は特にすることがなかった。
しいて言うなら服を脱いだり着たりして疲れた......
「今日はありがとう!二人とも来てくれて助かったわ」
依頼主は本当に満足そうに言ってくれる。
「どういたしまして?かな?僕何もしてないんだけど?」
「ワシもじゃ」
その二人の言葉を聞いて「そんなことないよ」っと依頼主は少し真面目な顔になり。
「アオイちゃんもルカさんもさ......私たちには高嶺の花みたいなものでね......クラスみんなたぶんアオイちゃんとかと話したいって思ってるのよ、だけどクラスを出ると二人ともすごい人が寄ってくるでしょ?」
「......寄って......来るね......」
高嶺の花はちょっと良くわからなかったけど......
学校を出るとめちゃくちゃ声をかけられるのだ。
いつもは笑顔で対応したりやんわりと断ったりしてる。
それこそ今日だって魔皮紙を買いに行くときとか声をかけられていたんだけど依頼主が睨み付けて遠ざけさせていた。
「だからクラスの中だけでもアオイちゃんたちを休ませようってみんなで決めてるの」
「そんな、良いのに......」
「ふふ、優しいわね......でもみんなもアオイちゃん達と話したりしたいからこんな感じに《なんでも箱》を使わせて貰ってるわ」
なるほど、つまり、《なんでも箱》を使ってお誘いをしてるのか?
「普通に言ってくれればいいのに?」
「それだとクラスのみんなからお誘い来ちゃうでしょ?だからちょうど良いのよ《なんでも箱》は」
「そうなのかなぁ......」
「そうなのじゃ?」
「はぁ......それと二人ともガードが緩すぎるわよ、今日だってスカートの中覗いてくる人達かなり居たのに気付いてなかったでしょ?」
「え?居たの?」
「ワシは気付いておったのじゃ」
いや、俺はともかくルカ気づいてたなら見られちゃダメだろ......俺はいいよ別に。
男のパンティー覗き見てざまぁ!ってなるだけだから。
身体は女だけど。
「そう言うのも友達として教えに来たのよ?これから気を付けなさいよ?」
「う、うん、気を付ける」
「よろしい♪じゃぁ、今日はありがとね?良かったら私達、《ストロングウーマン》をよろしく♪」
そういって手をふって人混みに消えていった......
「............近付きがたい存在か......」
昔、俺が学校に居たときの陽キャラ達もそんな感じだったな......
「のじゃ?」
「......いや、なんでもないよ、じゃぁ僕たちも帰ろ!」
「そうするのじゃ」
こんな感じで初の《なんでも箱》の依頼は終わった。
そして帰って取り敢えずハンバーグを作って食べた。
何気ない日常?なのかな?
少し癖はあるけど俺は今すごい幸せな異世界生活をしてます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【結界】
神級魔法。
勇者が使っていた魔法ではないか?と一説にあるが出所は不明。
現在はギルドが管理しており、ギルドの一部の人間しか真実を知らない。
しかし、その用途は様々で主に町や村に魔物が入って来ない様に使われている。
ギルドが管理しているが一般的にも魔皮紙が売られており。
冒険者が寝るときなどのために買うことが多い。
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本日の《なんでも箱》一件
お買い物
完了。
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