第246話 【武器召喚】



 俺は唱える。

 頭の中にある魔法の言葉を。











 「【武器召喚】」





 魔法を唱えると一本の髪の毛のような細い糸が手の上に現れる。

 エスはそれを見て不思議そうにしている。


 「……それは?」


 「うん、これが僕の武器だ」


 「……」


 この糸、確かに客観的に見ると何のへんてつもない糸だろう、だけど俺にはその武器の使い方が何故か解っていた。


 まるで昔から知っていたみたいに。


 俺はもうひとつの魔法を唱える。


 「【目撃縛】」


 その呪文を唱えると手から糸は消え、山亀の四方八方から空を埋め尽くす程の光る糸が山亀に絡まっていく。


 「!!!!!!!」


 山亀は自分の甲羅から伸ばしていた触手を次はその糸に絡ませたり、その場から動こうとして抵抗するがそれすらも光る糸が飲み込み絡み付き____


 「亀ならひっくり返してしまえばいいよね」


 そのまま、手を動かして糸を操り山亀の巨体を持ち上げひっくり返した!


 「な!?」


 「リン……いや、エス」

 

 山亀は恐らく生まれて初めて仰向けになったのだろう、手足をバタバタさせてもがいている。


 俺はゆっくりとエスの方を向き、糸で矢を作った。


 「準備はいい?」


 「っ!?……あぁ、最高のをくれてやる」


 「頼むよ、僕の騎士」


 臭い台詞だけど今この場にピッタリな台詞だ。


 「フッ……」


 エスは矢を受け取った後、その場で魔法陣を展開させ飛んだ

……高く、高く高く__



 __そして俺から見てエスが小さな豆粒くらいになった時、上から一本の矢が山亀に向かって放たれ、その大きな大きな腹甲に小さな矢が1本刺さった。





 次の瞬間__





 山亀の腹甲から爆発が起こった!


 その爆発は止まる事なく連鎖していき、何度も何度も何度も何度も雨が降っている空に爆音を響かせる。





 『これで終わりよ、おデブちゃん♪』





 山亀の腹甲は爆発と共に砕け周囲に内臓ごと一緒に飛び散り、そして爆音が終わる頃には山亀は動かなくなっていた。


 







 『山亀』討伐……完了。






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