第232話 完璧な美しさは全て惑わせる!


 「な、なにこれ」


 意識を失ったリュウト(仮)を引きずりながら洞窟を出ると外はやばいことになってた……


 なんかめっちゃ嵐みたいに雨降ってるし、なんかめっちゃデカイ光の弾飛んできてそれが見えない壁に弾かれてるけど……たまに地面にその光の弾が来たと思うと爆発音と土を巻き上げる。



 正直。目が点になりました。

 何これ、戦争でもしてんの?




 「た、助けに来たんだよね?リュウト君って」


 今横で気絶してるリュウトを見る。


 「……」




 一か八か起こして見るか……?


 「でも、あの状態になってたら……」


 いやいやいや、まじでやばい雰囲気だったし!


 「それに……牙?生えてる」


 顔を近づけて良く見ると犬歯がでかくなって口から出てるのでちょんちょんと触る。

 


 「どうしよ……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 《アバレー女王専用司令室》


 「ふむ、やりよるな、人間」


 女王は自分の部屋からユキ達の活躍をその目で見て感心している。


 「今回ばかりは人間を信じて正解じゃった様じゃの」


 {女王様!緊急事態が発生しました}  


 魔通信が反応し指令室からの緊急連絡が入る。


 「なんじゃ、この状況も緊急事態なのにまだ緊急事態か?」


 {お母様、姫です、すぐに来てください}


 「ふむ......」


 女王は一旦指令室に戻ると獣人のほとんどが手を止めそのモニターに注目していた。


 「お母様……あれが例の」


 「?………!」


 モニターで拡大されている画面には女王達と同じ種族の耳とそして二本の尻尾。

 

 だが、そんなもの達よりも……


 「美しい……」


 「ええ……」


 この世にこんな完璧な獣人が存在していいのか。


 スコールに濡れていて空も雨雲で薄暗いのにも関わらず、その者事態が太陽、もしくは月の様に輝いてると錯覚を起こしてしまう。


 「ご報告……します、山亀に攻撃を行っていたところ、何やら洞窟から出てきた人影が見えたので拡大すると……」


 山亀の弱点はないかと、くまなく探していたアバレーの獣人騎士達はアオイを見逃さなかった。


 否、見逃せなかったのだ、それはオスとしての本能か一瞬視界に入っただけで捉えてしまう。


 さらには____


 「ハァハァ……」


 「おい!そんな場合じゃないだろ何してる!」


 獣のオスは単純だ、目の前に極上のメスが居れば反応してしまう。


 「ど、どうしましょう」


 「人間どもからは……何も聞いておらん、この状況を考えてみるのじゃ」

 

 「?」


 「山亀の中にあのような獣人が居ることは異常ではないかの?」


 「た、確かにそうですが……」


 「つまり、あれは山亀が我らを惑わす為に見せている幻覚かも知れぬ」


 女王の言葉に騎士達は納得した。


 いや、納得する程なのだ、目の前のモニターに居る獣人はそれほどに容姿が完璧で自分達の本能に呼び掛けてくる。

 

 逆に割り切って仕舞えばこの世にそんな完璧な容姿の獣人が居るはずがない。


 つまり____


 「そうか……我々は妖術にかかっているのか」


 「そうだよな、あんなメスが居るはずない」


 「あぶねぇ、思わずヨダレが垂れちまったぜ」


 「そうじゃ、あれは我らを惑わす存在……【零式対山亀砲】は準備できておるか?」


 「はい!いつでも」


 姫は気付いている、あれが幻でもなんでも無いことを、そして、今から女王がやろうとしてることも。









 「我らの目を奪う、あの幻覚に向けて発射じゃ」







 アオイに向けて、【零式対山亀砲】が発射された。




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