第213話 キールとリュウト!
「待たせたわね、こっちも話が終わったわ」
アンナは自分の部屋からヘロヘロになったキールに肩を貸しながら出てきた。
「アンナっ、本当に話だけっ?」
「何よ、疑うの?」
「そう言うわけじゃないけどっ」
ヘロヘロの腰の抜けたキールをみやはジト目で見る。
「だ、大丈夫だ……この方はナニモシテナイ」
「それで、どうするの?キール様からも話は聞いたわ……【山亀】が来るんでしょ?逃げる?」
「うーんっ……」
みやはアカネをチラッと見る。
「……」
それもそうだ、アンナはまだ【山亀】が来るという事しか知らない。
つまり、アカネの友達の事は聞いていないのだ。
「……」
だが、アカネは何も言わない……みやに全てを任せたのだろう。
「私たちはっ____」
みやが決断をする時、割って入る様に少年が口を開く。
「【山亀】を討伐に行く……だろ?」
「リュウトっ!?」
「リュウトさん!」
「リュウトあんた!大丈夫なの?」
意識を取り戻したリュウトがソファに座り直す。
「おかげさまで、なんとか、な、それよりアカネ……本当に無事でよかった」
「リュウトさん!」
アカネはリュウトに抱きつく。
「おいおい、まだ頭フラフラするんだからあんまり振動を____」
「そんなの関係ありません!」
「まったく…………フッ……寂しい思いをさせてすまないな、今度たっぷり埋め合わせをしてやるから」
そういって、リュウトは少しアカネの頭を撫でた後、ソファから立ち上がりキールの前に立つ。
「お久しぶりです、キールさん」
「勇者リュウト様、お久しぶりです」
リュウトはキールの前で頭をさげる。
「アカネを……本当にありがとうございます」
「…………」
キール達が本気を出しても倒せなかったクリスタルドラゴンを一撃で粉砕した少年が今、自分より弱い人に頭を下げた。
神話やおとぎ話でしか聞いたことのない本当の【勇者】という称号を持った男が____
「俺が不甲斐ないばかりにあなたに迷惑をかけた、この恩は忘れません」
「(同じだ……この男も……私達と……)」
少なからずキールはリュウト達【勇者】に嫌悪感があった。
……心のどこかではリュウト達はこの世界に元々居た自分達を見下していると……
しかし、目の前の少年は頭を下げている
キールは昔の冒険者時代の自分を思い出す。
仲間と共に背中を預けあったあの頃を…………
「(フッ……今のこの状況をアイツらにもみせてやりたかったな……)」
「頭をあげてください、勇者リュウト様……いや、リュウト……私が居なくてもアカネ君はきっとたどり着いた事だろう」
「ありがとうございます!」
「良いパーティーだ、私もかつてのパーティーメンバーと一緒に旅をしたくなったよ」
「キールさんもパーティーを?」
「あぁ……それと私のことはキールでいいし、敬語もいらない」
「代表騎士に対してそれは……」
「君は【代表騎士】よりすごい称号を持っている【勇者】なんだぞ?しっかりしろ」
「は、はい!じゃ、じゃあ……ゴホン……改めてお願いがある」
「なんだ?」
「山亀討伐するまで俺達と一緒に行動してほしい」
「……」
「……」
2人の間に沈黙が走る____そして
「あぁ、私は今回【勇者リュウト】のパーティーに1人の剣士として加わろう」
交渉成立しリュウトパーティーに【キール】が加入した。
その日はリュウトの疲労回復と共にこれからの行動を計画して終わった。
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【山亀】が世界樹ウッドに到達するまで後6日。
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