第186話 GR犬のクロエ先輩!
「あ、えと、これはですね」
鏡の前でポーズしたまま固まってた俺を見てなんとなく察してくれたのだろう。
「まぁいい、俺の名前はクロエだ新入り、師匠から案内を頼まれた、よろしくな」
クロエ先輩って言うのか……よし!覚えたぞ!
先輩も獣人の格好で犬耳、ゴールデンレトリバーの垂れ下がった耳とフサフサの尻尾がある。
髪型は金髪ショートで、女になった俺よりも背が小さい女の人だ。
「よろしくお願いします、クロエ先輩」
俺は何事も無かったかの様に頭を下げる。
いや、うん、ナニモシテナイヨ、オレ、ポーズナンテトッテナイ。
「お、礼儀正しいじゃねーか、よろしくな」
あ、尻尾がフリフリしてる、機嫌がいいんだ。
「さて、とまずは自分の部屋からだな。何か荷物はあるのか?」
「服くらいしか……」
そりゃそうだ、荷物なんて持ってきてない。
あるとすれば今脱いだ服、グリードで1番最初に貰った青い服くらいだ。
「そうか、まぁここじゃ一門なしで来るやつも多いしな、それ持ってついて来い」
「押忍!」
「?、オス?なんだそれ?」
「え?あ、いや何でもないです」
あれ?こう言う感じじゃないのかな?
「?、俺たちの滞在するここ、龍牙道場は知っての通り、弱い奴が本当に強くなりたいと思ったらたどり着く所だ、まずはこのなげ〜廊下だが、ここは魔法で師匠の部屋から見えるようになっている」
「他の所は見えてないんですか?」
「あぁたぶんな……もっとも、俺たちを監視すると言うより外からの侵入者とかを見るためだからな」
「あ、なるほど」
「どこの部屋に行くにもこの廊下があるからそう言う意図があることは覚えとけ」
「はい」
「んで、最初に紹介するのがここ、大広間だ」
そう言ってクロエ先輩はドアを開けると学校の体育館4つくらい大きな部屋があった。
壁にはぎっしりとドアがあり、その内の1つから俺たちが出てきたのだろう。
かなりの数の獣人達がみんなそれぞれ壁のドアに入ったり出てきたり、大広間の中で組み手をしてい…………たのだが、みんな俺を見た瞬間止まって静かになり注目される。
例えるなら全校集会でザワザワしていて前に校長先生が何も言わずに立っているとシーンとなっていくアレ。
「あ……えーっと」
みんなが黙るのに3分かかりました!ってそんな事考えてる場合じゃない!
うぅ、気まずい……なんて言えばいいんだろ。
一人、一番近かった鳥の獣人が此方に近付き声をかけてきた。
「お嬢さん」
「へ?僕?」
明らかに俺なのだが、“お嬢さん”と言われると無意識に反応してしまう。
「はい、麗しいお方、貴方ほど美しく綺麗な獣人は見たことありません」
「は、はぁ……」
「怖がらなくてもいいのですよ、これから先私たちは同じ“強さ”を目指す家族の様なもの、何か分からないことがあれば__」
そのまま鳥の獣人は俺の前で膝をつき手を取られる____ってうおい!このパターンって!
「今後とも宜しくお願いします」
そういって手の甲にキスされた……いや、実際はくちばしの先が手の甲に当たってちょいチクっとしただけだが……
「よ、よろしくお願いします」
引きつった笑顔になる。
するとそのキスを皮切りに周りの獣人達が集団で此方に来る!
「おれも!」「わたしも!」「おらも!」「おいらも!」「わたしも!」
「え!?ちょ!ま!」
その人達が近づいて来た時、“バンッ!”と大きな音が俺の横から響く。
「うへ!?」
見ると俺の隣でクロエ先輩が床を足で思いっきり踏み込んだ後だった。
その音で他の人達が足を止める。
「てめーら……」
まるでゴゴゴゴゴと効果音が入りそうだ。
「俺の時と対応が全然ちげーじゃねえええええかぁぁぁああ!!!てめーら全員ぶち殺す!」
「や、やべ!クロエさんが怒ったぞみんな逃げろ!」
「おせえぇ!逃さねえええ!」
そこからクロエ先輩の百人組み手が始まり、余りに圧倒的な力でねじ伏せていく姿に俺は目が釘付けになっていた。
クロエ先輩……かっけぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます