第187話 改めて自分が女性である!


 圧倒的な組み手を見物して目を輝かせた後、クロエ先輩はストレス解消した様にスッキリした顔になり、俺の案内を再開していた。


 すごかった!ほんと凄かったよ!ボギャブラリーがないせいでそれしか言えないけど見てて異世界にきたんだなぁって再確認したね!うん!


 「それで、さっきのドアの位置は覚えたか?」


 「あ、は、はい」


 概ね説明すると、あの体育館みたいなのが中心と考えてそこから色んなところに派生していってる。


 今は“女性寮”と書いてあったドアを通って来た。


 「ここがお前の部屋だ、ベッドとトイレ、シャワーと後は鏡だが、なんか他に居るもんがあったら言え、女性代表の俺が買って来てやる、一応男性の代表はオリバルって言う奴だ覚えとけ」


 「はい!ごっつあんです!」


 「?、後は基本自由だ、最初はどこから手をつけていいか分からないと思うから部屋で待機しとけ、俺か他の誰かが呼びに来る」


 「わかりました!」


 「あと、これは個人的な意見だが、お前は男に襲ってくださいと言わんばかりの身体と匂いがするからなんかあったら俺に言えよ?ま、俺はもう少しで免許皆伝だからその時までだけどな」


 自慢げに胸をはって言ってくるが免許皆伝なんて今までアニメとかテレビでしか聞いた事ないのでどれくらいすごいか感覚がわからない。


 「あ!肝心な事書いてなかったな、お前の名前」


 「あ、ほんとですねハハ、僕の名前はアオイって言います」


 「よろしくなアオイ、じゃぁな」


 そう言った後、クロエ先輩は部屋から出ていった。

 

 扉に鍵がついていないのはこの寮がアットホームな感じなのだろう、田舎のおじいちゃんおばあちゃんみたいな……まぁ盗むもんなんて俺の部屋にはないんだがな!


 「……」


 鏡で自分を見る。


 「慣れるもんだな……」


 鏡の奥にいるのは【自分】

 この世界の俺の顔だ、異世界に来た当初は鏡にうつっている自分を自分と思えなくて目を逸らしてたが今は堂々と見れるまで慣れてしまった。


 ネコミミと尻尾は違和感バリバリだけど……


 「俺が女……ねぇ」


 元の世界の俺からしたらとんでもない事だよな。

 それこそ大人になって段々和らいできたときに異世界に来たけど女性恐怖症真っ只中のあの日の俺がなったら自殺してると思う。


 克服できた訳じゃない、だから俺には女友達など居なかった。


 「昔は店員が女ってだけで嫌悪感がすごかったっけ」


 ベッドに横になり天井を見る。


 「あの不快感、嫌悪感……どこにいったんだろ……」

 

 『何か』を忘れてしまってる気がする。


 「なんだっけな」


 その『何か』を思い出せない、うーーーん、大事な事を忘れている……いや、うーーん。


 「ま、いっか」


 過去の事より未来の事!今からの事を考えよう。


 俺はここで強くなる!


 それから____それから……ユキちゃんを迎えに行って大人しくゆっくり暮らしながら何かしよう。

 

 「だー!なんか異世界に来たのに考えることが元の世界とあんまり変わらねぇ!暮らすには何か職につかなきゃダメだろうしくそー!」


 

 

 うん、考えるのをやめよう、今は今できる事を頑張ってしよう……



 そうして俺は目を閉じ、部屋に誰か入ってくるのを待った。





 

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