第185話 龍牙道場!


 真っ白〜ほーんと真っ白……でも目が痛くない。


 例えるならのぼせた時真っ白になるじゃん?あれの頭がクラクラならないバージョン。


 「……」


 あ、あれ?


 目の前の視界が回復していくと同じような個室。


 「えとこれってこのドア開けていいのかな?」


 ガチャガチャ……


 ドアを開けようとするが閉まっている。


 「ま、まぁ来るよね、人が」


 …………


 ……


 …


 あれ?こない?


 「このまんま誰も来ないなんて事……」


 …………


 ……


 …


 ないよね?ほんとにないよね!?



 そう言っても閉鎖空間に閉じ込められたと思うと焦りが出てくる。


 「ヤバい、閉所恐怖症になりそう」


 とりあえず気付いてもらわないと!


 「すいませーん」


 シーン……


 「すいませーん!」


 大きな声を出すともう慣れて来たはずなのに高い声がよく聞こえて他人の声かと思ってしまう。


 何も反応はない……


 「入ってますよー!!」


 ガンッガンッ!と叩いてるといきなり扉が開いた!


 あ!やべ!


 結構力いっぱい叩いていたのでそのまま止まらずやばいと思ったけど、俺の拳はしわくちゃな手によって止められた。


 「ご、ごめんなさい!」


 「何をそんなに焦っていたのだ?」


 その手の人物は頭がツルッぱげでまぶたが重くなって糸目になっている黒い柔道着を着た人だった。


 だが、その頭に目がいかないほどの驚きが俺を襲う。


 「浮いてる!?」


 そう、目の前のツルツルのおじいさんは座禅を組んだまま宙に浮いてるのだ。


 ふぇぇ、なんで!?アイヤー忍者なんでえぇ……………いや、待てよ?


 「魔法……ですか?」


 「ホッホッこれは魔法じゃないぞ?」


 「うぇえええ!?」


 どういう原理!?


 「フム、今回の入門者は喜怒哀楽が激しいのぅ」


 「あはは……ごめんなさい」


 「ついて来い」


 20メートルくらいの長い廊下の上をスイーっと移動しているのを後ろからついて行く。


 「あ、あの」


 「質問は後にせい」


 「はい……」


 扉をあけ、小部屋に入ると少し甘い匂いが俺の鼻をくすぐった。


 何だろう、はちみつに……近いけど遠い匂い。


 どっちだって思うかもだけどその匂いなんだから仕方ない!


 「お主、身体は何ともないか?」


 「はい」


 「ほぅ……これはこれは……合格じゃ、これを」


 そういってどこから取り出したのかいつの間にか持っていた魔皮紙を受けとる。

 

 え?な、なに?なんか知らんが合格した。


 「この魔皮紙は特別製で、魔力を通すと獣人に変化出来る」


 「ほぇー」


 「もちろん、この魔皮紙は国も把握していない代物じゃ、絶対に他言無用じゃぞ」


 「っ__」


 他言無用と言った瞬間に喉奥がキュッと閉まる感覚がした。

 魔法……なのか!?どちらにしろ言ったら殺される!


 「わ、わかりました、イエスマイロード」


 「分かればよろしい」


 糸目が少し垂れ下がると俺は金縛りの様な呪縛から解放された。


 「今のって__」


 「まずはそれを使え」

 

 「は、はい」


 魔皮紙に魔力を込めると魔皮紙は俺の胸に引っ付きみるみると身体に染み込んでいった。


 ちなみに不快感とかはない、例えるならアルコール消毒されたみたいにスースーする感覚があっただけだ。


 「うぅ?」


 周りの音が細かく聞こえる様になっていき視野が広がっていく。


 「うむ、ちゃんと【獣人化】出来た様じ__!?」  


 そう言われて頭を触ると耳の感触が!


 「耳!おお!すごい本当に獣人になってる!」


 ちなみに人間の耳の部分はなくなってる。


 となると後は尻尾!って


 「何じゃこりゃ!?」


 自分のお尻を見ると二本の尻尾が!?


 しかも!


 これって!?


 「ね、猫?」


 オウマイガット!


 何てこったい……猫耳……ま、まさか二次元やコスプレイヤーでよく見ていた猫耳を己が装備することになるとは……誰得だよおぉ!


 「何かの間違いか……これを尻尾に使うんじゃ」


 おじいさんはもう一枚魔皮紙を取り出して渡してくる。


 俺は言われた通りに尻尾に貼____


 「うにゃん!?」


 何だこれ!尻尾触ると体が変にゾクッとする!てか!

 うわぁぁあ!年甲斐もなく変な声だしちゃったよチキショウ!はずかし!


 「ホッホッホ、尻尾は獣人にとって性感帯じゃ、デリケートなので気をつける様にの?」


 「は、はい」


 そう言うのは先に言って欲しい……今度は注意しながら魔皮紙を使うと2本の尻尾が1つになった。


 「ようこそ“龍牙道場”へ、この後は弟子に案内させるからそこにある女性用のを着てここで待機しておけ」


 “女性用”って面と向かって言われるとまだピンと来ないな。

 まぁ、下着は女性用つけてるけど……


 「は、はい!よろしくお願いします!」


 気合いを入れ直して挨拶をするとおじいちゃん____いや、“師匠”はウムと頷きスイーッと部屋から出ていった。


 「えーっと、女性用ってのは……これか」


 うーむ。

 このスパッツみたいな記事で出来てるやつを先に着るのかな?

 んで、これを着て……


 「てか、なんだこれ、柔道着というか柔道ドレスというか、花魁さんが戦闘する時に着てそうな……なんか、エロい」


 ファンタジーの世界ってこう言う服多すぎない?まぁ文化なんだろうけど……あ、なんかリボンがある。


 「髪も結ぶか、走ってる時とか鬱陶しかったし」


 髪が長い女の人は大変だよなぁ。


 「って、他人事じゃないんだけどね、これ、どうやって結ぶんだろ」


 えーっと、適当に結んどけ!てりゃ!

 

 「それにしても……強くなるのにまずは一歩かな……」


 衣装あわせで見るためなのか全身鏡の前に立って自分を見る。


 ほんと、弱ったそうな身体だよなぁ。


 いや、前の身体が強そうと言われればそうでもないけど、華奢な身体だ……



 ……………



 ……


 

 モデルみたいな体型だな……


 

 え、映画とかだとこんな感じでポーズ取るかな?

 


 








 「…………」



 「おーい、新い____何してんだ?」


 「ふ、ふへぁ!?」


 






 ポーズをしてる所を後ろから金髪でショートの女の獣人に見られていた……

















 はずかし!










 


 

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