第170話 『アオイを早く』
《グリード城》
城の中では各騎士達や専属のギルドの人間があわただしく作業をしている。
それと言うのも世界にグリードの王が変わった事を発表したのが原因である。
……そして、女王も忙しい人の一人。
「はぁ……ものすごく忙しい……」
サクラ女王は栗色の髪の毛を手入れをしながら自分の写っている鏡に向かって独り言を言う……少しトロッとした目の下には睡眠不足で大きなクマが出来ていた。
『__』
「そうね、全部あなたのおかげだわ」
女王はまるで誰かに話しているように見えるが、その部屋には誰もいない____いったいどう言う事だ?
『____』
「ふーん、そんなことになってるのね、解ったわ……それにしてもなんでそんなに怒ってるの?」
『__』
「わかるわよ、私はあなたでもあるから」
『__』
「?、つまり新しいのがってこと?」
『__』
「なるほど、そっちの方はキールに頼んでるわ、彼も優秀なこの国の騎士、きっとすぐに探し出してくれる」
『__』
「ええ、私の身体もあと数年で消滅する……それまでに全てを終わらせるわ……」
このタイミングでドアからノックが聞こえてきた。
女王は自分のひどい顔を整えた後に訪問者を部屋に入れた。
「失礼します、女王様」
姿勢をきっちりして入ってきた女性は《タソガレ》……不在中のキールの代わりに騎士たちをまとめている副隊長だ。
「何かしら?」
「はい、先ほどアバレーの方に住んでいる《ミロク》という者から城に直接連絡があり、どうやら仕送りの資金の方を増やしてほしいと申してきたのですが……この方は一体?」
「彼は元グリード最強と言われていた冒険者パーティーのリーダーよ、前々から城とは繋がりがあったの」
「そうですか、しかし、なぜアバレーに?」
「彼はアバレー王国に友達がいましてね、残りの余生をその友達の側で暮らしたいと何年か前に言ってきたのよ、城も彼には恩があるから何とかしようとしたのだけど……あの国は人間嫌いが多いから中々難しくてね、私とアバレーの女王と話をして極秘で住んでるのよ、キールから聞いてない?」
「……はい……」
「アナタとキールの事は深く詮索しないけど仕事の引き継ぎくらいはちゃんとしておきなさい?」
「申し訳ありません……では彼の件どうしましょうか?」
「うーん、あげたい所だけど現在の仕送り資金で問題ないはずよ、今はどこにもお金を使うから残念だけどもう少し我慢するように言っといて」
「わかりました、失礼します」
ふたたび部屋には女王一人だけになる。
『女王の仕事なんてどうでもいい、はやく……はやく……アオイをここへ連れてこい!』
その声を聞くものは女王自身しかいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます