第157話 獣人でさえも魅了する!

 「はぁ………はぁ…………」


 ため息しかでない、あそこでやめとけば……やめとけば……

 

 「そ、その、アカネちゃん?こんなときもあるって」


 外に出て夜風に当たってる私をほくほくした顔で姫ちゃんは心配してくれる。

 姫ちゃんは相当プラスになったみたいだ。


 「私、才能ないんですかね……」


 「え、えと……ほら!途中までは勝ちまくってたじゃない!私より!」


 「途中までは……ね」


 そう、途中まではめちゃくちゃ勝っていたのだ、最初の5万は2倍になり。

 そこから色んなものに手を出してみたら勝ちに勝ち続けた、ルールもわからないカードを使ったやつに関しては良くわからないまま勝ってたのだ。


 しかし、なぜか、まったく勝てなくなった……そして気がつくと当初よりお金が無くなっていた。


 熱くなってギルドカードのお金を全て使ってもいい覚悟でしていたら姫ちゃんが止めてくれたのだ、そして現在に至ります……


 「私はもう少しだけしようと思うけどアカネちゃんはどうする?」


 「私はここで少し頭を冷やしながら待ってます、ひめちゃん行ってきていいよ?」


 「わかった!」


 そういって、ひめちゃんはまた扉を開けて賑やかな中に入っていった……




 扉がしまった私の周りは静かに私を慰めてくれた……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 《姫》


 アカネを外に待機させ、ひめは1人で賑やかなカジノの中を見ていく。


 実際に姫もカジノは初めてで少ないお金ながら勝っていっている、もっとも、このギルドカードは姫の物では無いのだが……


 「次が最後にしよ、アカネちゃんにあんまり待たせちゃ悪いから、えーっと」


 周りを見渡すと時間帯も変わったのか、さっきとディーラーが入れ替わってるのが多く、ほとんどが人間になっていた。


 そして、その中でもより一層、目を引く人物が1人。


 その人物の髪は1本1本サラサラと……いや、キラキラと輝きながら振られる黄金の髪。


 何一つ汚いところはなく白い肌。


 そして、全てを許し全てを飲み込み、見られた者は一瞬で恋に落ちそうなその青い瞳……


 「……綺麗……」


 姫は気がつけばその人物に見入っていた。


 人間にここまで見惚れるのは初めてだ。


 「最後は、あの人の所でしよう……」


 姫はその人を近くで見たいが為に席についた。


 「お客様はこれで全員ですね?それでは始めます」


 その声を聴いた瞬間に落ち着く……そしてもっと聴いていたいと思う透き通った高い声。


 「ほら、はやく始めろよ」


 隣には立派な角をはやした強面の獣人が座っていて、その存在に今気付き後悔した。

 その獣人については噂を聞いている、ここら辺をナワバリにしている《熊さん組》の一員で普段から問題を起こすので有名だ。


 「では、賭け金をどうぞ」


 机に座っているのは獣人5人……その全員が上限いっぱいの5万を賭ける。


 この美しい女性の前ではそれが当たり前と思う様になっているのだ。


 「ルールは簡単です、今から僕がこのコインを弾きますので表か、裏を予想して当ててください」


 そう言って1枚のコインを取り出して綺麗な指の先で摘んで表と裏をみんなに見せたと同時に賭けた人の目の前に“表”“裏”と出てきた。


 「…………」


 姫も含め全員が選んだ。


 「では、行きます」


 彼女がコインを弾く姿はくどい様だが……美しかった____





 ____30分後





 「…………」


 姫は気が付いたら負け続け、席から離れて美女を見ていた。

 

 よく見ると席の移り変わりが早い気がする、それはきっと彼女の容姿を見すぎていて勝負などどうでもよくなってしまうからだろう……ギャンブルをしているのに勝つ気が無い者にはギャンブルの神様はかたせてくれないのだろう。




 …………そう思っていた。


 

 



 「ふざけんなてめぇ!」


 「っ!?」


 1人の獣人、先程姫の隣に座っていた問題児がいきなり美女の机を蹴飛ばしたのだ!


 「な、なんですか!」


 「何ですかじゃねぇ!人間がぁ!」


 

 ………………それからの出来事はこの国ならではの人間の奴隷と獣人の差別。


 

 彼女がイカサマをしたのかは姫には解らない。


 ただ1つ言えるのは____









 彼女は美しく、目立ちすぎる。












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る