第153話 友達 ひめちゃん!
「もしかして……アカネちゃん?」
目の前の獣人はロングの私と同じ赤い髪の色、私と同じ耳、少しふっくらしたほっぺ!
それに私の名前を呼んだ!間違いない、ひめちゃんだ!
「なんだぁ?このねーちゃんの友達かなんかか?」
「お、かわいーじゃん」
「こんな真っ昼間っからナンパですか?暇なんですね」
「あ?」
つい癖で少し挑発的になってしまう、この癖は自分を守るために身に付いたものだ、昔の私は誰かにすがり、守られてばかりだった……そして、妹ちゃんを守る為に強くなった。
「本当はこう言う事をするために強くなった訳じゃないですけど、仕方ありませんね」
自分でも解るくらい心も身体も今の私は強い!……まぁ胸は妹ちゃんにかなり負けてるけど……
「いい度胸じゃんねーちゃん、良い身体と耳もしてるし、尻尾の方もおがむとするかな!」
「アカネちゃん逃げて!」
そういって血の気の高い1人が私に拳をにぎり殴ってこようとする、ごめんね、ひめちゃん心配してくれてるのだろうけど、私にはこの攻撃は遅すぎて
「な!?」
「あくびが出ますね」
「な!?こいつ!」
「それに__」
「なっ!」
私は軽く拳を掴む。
「この程度の攻撃では魔物ですら倒せません__よ!」
「ぐぁ!」
魔物ですら気絶する一撃を顔面に叩き込むと、私を攻撃してきていた獣人は吹っ飛んで気絶した。
「おい!大丈夫か!」
「てめー!」
「これで見逃してあげますからその人を連れて立ち去ってください」
「く、くそ!おぼえてろ!」
そう言うと残り2人の獣人は気絶した仲間を背負って逃げていった。
「す、すごい」
「フフッ、それより久しぶり!ひめちゃん!」
「うん!」
2人で手を取り合って周る、嬉しい!こんな奇跡あるんだ!
「ここに居るとまたあんな連中が来ます、少し場所を変えましょ」
「あ、わかったよアカネちゃん!それだったら……あそことかどう?」
ひめちゃんが指さした先は《にゃんにゃん珈琲》と書かれた小さな喫茶店だった。
「喫茶店ですか、行きましょ」
「ほんと!やったー!」
中に入り、お互いに見合う様に席に座る、お昼ご飯の時間は過ぎているのでお客も少ない。
「にゃー、天気もいいし昼寝したいね」
「ふふっ、私も同じこと考えてました」
「それにしても本当にさっきはありがとう!あの人たちしつこくて、逃げてたらその……襲われそうになっちゃって……」
「私はそんなお礼を言われる様な事してませんよ、私に危害を加えようとしたので自己防衛です、それよりビックリしました!今日私はこの国に来たんですけどまさか、ひめちゃんに会えるなんて!」
「そう!私もアカネちゃんに会うとは思わなかった!しかも友達と喫茶店なんて初めて!」
「あれ?初めてなんですか?」
「う、うん、その……色々あって」
「色々?」
「アカネちゃんこそ、どうしたの?お母さんたちからは農業ごと引っ越したって行ってたけど、挨拶くらいはしてほしかったかな?」
その言い方にすこしムッとしたけど、よくよく考えるとひめちゃん達からしたら無理もない……私が売られたのは売った本人しかしらない、その本人も死んでいるのだから情報が漏れる事は無かったのだろう。
あの忌まわしき奴隷刻印も、みやさんのおかげで消えている。
「え、えと、私……」
「うん?」
言うか迷った……でもここに居るひめちゃんは唯一私の事を知っている人……
むしろ、この人には言っておくべきだ。
「ひめちゃん、私、奴隷だったの」
「……え?」
それから私は唯一の友達に今までの事を“全て”話した。
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