第68話  敗北者!


 「うおおおおおお!!!」


 クロエが竜巻の中に突入し魔法を唱えようとした……が____



 「ど、どうなってんだ?これ」

 

 「痛く……ない?」


 自分の身体に起こった変化に2人とも動きを止める。


 竜巻の中、様々な物が飛んできてクロエやオリバルに接触するが硬いものに当たったかの様に弾かれて通りすぎるのだ。


 当たった本人はまったく感じないほどに……


 「クロ!オリバ!」


 「キーさん!これはどういう事だ!」


 「ルコサ風に言うと、神の導きだ」


 「はぁ?」


 「そんな事より!」


 キールは緊急用の通信魔皮紙を取り出す。


 {各員!冒険者達!今すぐ逃げろ!全力で逃げろ!こいつは____飛ぶぞ!!!}


 どんな時にも冷静に判断して指示を出さなければ悪い存在の代表騎士が詳しく言わずに願う様に通信をしている。


 ここにいる冒険者はほとんどが階級の高い者が多い、それゆえに代表騎士までなっている存在がここまで焦るのに危機感を察知し__



 「「「「【限界突破】」」」」

 「「「「【限界突破】!」」」」

 「「「「【限界突破】ぁ!」」」」


 “逃げる事”に【限界突破】を使用し始めた!



 「クロ!オリバ!俺達はクリスタルドラゴンに掴まるぞ!」




 必死になりクリスタルドラゴンに掴まった瞬間、クリスタルドラゴンはついにその巨体で飛んだ。



 「うおおおおお!!!」



 「ーーーーーーーーーー!?!?」



 だが何百枚も重ねている結界を突破できずに勢いよく頭がぶつかり結界に大きなヒビを入れ地面に墜落した。



 「ーーーーーー!?!?!!!!」



 墜落時に凄まじい土砂を巻き上げ、森だったあたり一面土まみれに変わった。



 先ほどのキールの通信で逃げれていればいいが……もしかしたら土砂の中に生き埋め、さらに悪ければクリスタルドラゴンの下敷きになっているだろう。




 「ーーーーーーーーーーー」



 そしてクリスタルドラゴンは体勢を立て直して空を見上げ結界のヒビを見つめる、まるでそこを攻撃すると次は耐えないと解ってるかのように__

 

 「もしかして、キーさん、こいつ......」


 「あぁ、クロも感じるか……こいつは知能がある!」

 

 クリスタルドラゴンが結界のヒビに向かって口を開く。

 

 「!?」






 次の瞬間__巨大な白いレーザーが結界に向かって放たれた!





 「なんだこりゃぁぁあ!」


 「くそ!」



 攻撃は結界を貫通して上空へと一本の白い線を作り出し次第に細くなって消えていく……


 攻撃に耐えられずバラバラとガラスの破片の様に散りながら消えていく結界をここに居る者全てが見ることしかできなかった……

 

 







 「討伐は……失敗だ……」






 今度はクリスタルドラゴンは誰にも邪魔されずにその巨体で空高くへと飛んでいってしまった……




 






 {キール様}


 全力を出したのにクリスタルドラゴンに結局敵とさえ認識されなかった……


 「…………状況は」


 {見ての通り、壊滅状態です、遠距離魔法を使っていた者たちも飛んできた岩など重傷、さらには生き埋めになった__}


 「__至急、救助活動に移れ……我々の……敗北だ」


 {……了解しました}


 そうして通信が切れる……

 

 「……」


 「……」


 別にクリスタルドラゴンを過信していた訳ではない。


 ただ今日集まってきたのはこの国のほぼ最高戦力の人たちだ。

 冒険者の中でも上位クラスの者達……



 


 先程までの騒がしい音も無くなり、ただただ風の音を聞きながら遠くのクリスタルドラゴンを見ていると____








 ____クリスタルドラゴンの真下から一筋の光がその巨体を貫いたのだ!










 「な、なんだと!?」


 あり得ない!

 自分の武器でも鱗を剥がすことしかできなかったんだぞ!?


 「キーさん!オリバ!なにボサッとしてる!早くいくぞ!」

 

 「あ、あぁ!」


 

 あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!!!


 何だ!?何が起こったんだ!?


 自分の走る速度が上がっていく。

 ボロボロになり疲れているはずなのにパニック状態になっているのだ。


 

 あのクリスタルドラゴンを1発で落とすほどの威力の魔法なんてあるのか!?





 そして……クリスタルドラゴンの墜落地点へ到着すると____




 「あ、あれは!」


















 「さぁ、バッドエンドは見飽きたんだよ。ハッピーエンドと行こうぜ!」







 __そこに居たのは銀騎士……【勇者リュウト】だった。







 


 


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